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2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
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「・・・氷河よ。これが問題の物だ」
と、冷ややかな顔をした男が言った。
彼の手にあるのは露をおびた紙パック。コップ一杯で成人の一日のカルシウム摂取量の3分の1を補えるという奇跡の液体で満たされたそれは、しかし縁の部分に過ぎた日の日付を載せていた。
男は弟子の前にそのパックを示す。
「破壊の根本は原子を砕くことにある。だが氷の闘技を身につけるためには砕くのではなく、原子の動きを止めろ。この液体は純粋な溶液ではない故、水分とそれ以外の成分で凝固点に差がある・・・仮に冷凍庫に入れて凍らせた場合は水と白い何かに分離する。だが、このように!」
ピキィィィィィン!
「・・・と一瞬にして絶対零度まで叩き落せば、タンパク質に変調をきたすこともなく永遠にその動きが封じられるのだ。わかったか氷河よ」
「・・・はい」
「ならば」
と、その石のように固まったパックを弟子の手に渡しながら、
「もはや液体ですらなくなり、凍りついたまま死を待つのみのこのブツをどこへなりとも葬って来るがよい。手に入れた時はどんなに健康に良かったとしても、今や人の体を蝕む悪の物質。・・・ただ、一時は他でもないお前の成長を助けたものだ。粉砕処分はせず、せめてこの静かなシベリアの大地で朽ちることなく永久に眠らせてやろう。・・・とはいえポイ捨ては許されないので燃えないゴミに出すように」
「・・・・・・はい」
氷河は神妙に頷いた。もう朽ちているのでは、などといらぬことを言わないのがこの少年の長所であった。
しかし、さすがにこれだけは口にせずにいられなかった。
「カミュ」
「・・・なんだ」
「その・・・次からはぜひ賞味期げ・・・・いえ、何でもありません
「・・・・・・・・・・・・」
氷の聖闘士も敢えて聞き返そうとはしなかった。
ただ黙って目をそらし、広がるシベリアの大地の白さに思いを馳せるのみであった。

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癒しの方向は無理でしたが・・・
何卒お大事に。。。。
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