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2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
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この週末にはキノコに合う洋楽のリストを作っていたんです。

やったことのある方はわかると思いますが、イメージに合う曲を探し始めるとあっという間に時間が経ちます。
いつの間にか膨大な曲を聴いてしまい、調べてしまい、そしていつのまにか頭もおかしくなっています。


そんなこんなで今疑ってるんですが、テイラー・スウィフトの元彼の中にカエンタケもいたっぽくない?


これそうじゃない?
PVが今流行りの臭わせじゃない?
ねえ。
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カエンタケ、オーストラリアで発見された記念!

これまで日本や韓国が主な生息域だと目されていたカエンタケが、このほどなんと豪州ケアンズ近郊で、森に入ってキノコの写真を撮り続ける自称キノコマニアにより発見されました。

発見者レイ・パーマー氏「この辺の森でキノコを撮り続けてる奴他にはいない!まだまだ発見があるはずだ!」

カエンタケの生息域も世界に広がりましたが、キノコに頭をやられた人間も世界中にいるということが証明された気がします。
パーマーさんマジリスペクトです。

キノコ界は結構手つかずなところがあるんですよね。
食用キノコは突っ込んで研究されても、アンタッチャブルかつレアな毒キノコはわざわざ探しに行かないという。普通の人はね。

日本でもカエンタケが毒キノコだと断定されたのは割と最近のこと。
彼がオーストラリアにも日本にもいるということは、きっと見つかってないだけで他の環太平洋域の島々にもいるのではないでしょうか。

フィジーとか

トンガとか

サモアとか

ニュージーランドとか!


カエンタケよ、お前もしかしてラグビーW杯便乗デビューか。
意外とミーハーだったのか実は。


まあそんなわけで、着物をアボリジニアート柄にしてみました。本当のアボリジニアートはもっときちぃぃぃっとしてて精密なんですけどね。あのアートをみると、アボリジニという民族は非常に忍耐強く理論的で哲学的でもあったのだろうと思います。なんもない私が描くからこんなヘロヘロな柄に。
数年前にケアンズに行った際、アボリジニアートのクッションカバーを買ったんです。凄く素敵で気に入ってます。あの時すぐそばにカエンタケはいたのね。
お隣ニュージーランドのマオリ族はタトゥーの文化ですが、アボリジニにはタトゥー文化は無いそうで、すぐ近くなのに不思議ですね。

あと、昆虫食文化。
アボリジニは色んな虫を食べていて、私の愛する世界昆虫食大全でも「オーストラリア」は結構なページ数割かれています。
何と言ってもこの本の著者は虫を食う人間こそが正義だと思っていますから、「アボリジニが実に豊かな昆虫食生活をしていところ物のわからぬ白人が接触してきたせいでまともな食文化が侵害され彼らの健康に大変な害が生じてしまった」と、西欧の酷い侵略を批判するにしても独自すぎる角度から苦言を呈しています。

アボリジニの食用昆虫ベストスリーは、ウィチェティ・グラブ、ミツツボアリ、ボゴングガ

ウィチェティ・グラブは写真で見ると蚕に似ていますね。
生で食べるとクリームのようで、ローストすると焼き豚の皮煎り卵骨髄に似てナッツの風味がするとのこと。
焼くだけでそんな複雑な味に変わるの?どういうことだよ。

ミツツボアリはお腹にたくさん蜜を貯め込む蟻です。これはちょっと、本当にツボみたいになって見た目に蜜が詰まっているのがわかるので、食べたくなる気持ちがわかります。
蟻を食べると言うより、蜜を口に絞って楽しむそうです。たくさん食べた後は水を飲まないと中毒するとのこと。料理やお菓子作りの味付けにも使います。

ボゴングガは、蛾です。時に大発生して都市の生活を妨げる事もあるといいます。
アボリジニはこれをたき火で燻して大量に捕獲し、砂の中で焼きます。この時、ボゴングガを決して焦がしてはいけない、焦がしたら大嵐が起きると信じられているそうです。
焼いた蛾はそのまま食べもするし、器に入れて突いてペースト状にし、燻製にして食べる事もあります。
で、この蛾を食べると、アボリジニは最初はひどく吐いて衰弱します。が、そのうち慣れてたくさん食べて太れるようになると。
こうした記述を読むにつけ、本当この本買って良かったと思いますね。
食って吐いて衰弱するような物は食べるのを避けるはずだと私は安易に考えてしまいますが、そうではない世界が確かにあるのです。
あと、このボゴングガはカラスの好物でもあるそうで、蛾を食べに来たカラスをアボリジニが捕まえて食べたりもするそうです。熊もこの蛾が好きなんですって。食って吐いて衰弱する食べ物なのになぜそんなに愛されているのか。
味は焼き栗に似ているそうです。

その他にも色んな虫を食べてます。
ベストスリーに続いてはバッタ目、シロアリ目、シラミ目、カメムシ目、甲虫目、チョウ目、ハチ目について詳細に語られ、それでもまだ全然語り足りないとばかりにトドメの一覧表が掲載されています。著者はオーストラリア大好きですねこれ。

この昆虫食は、特に豪州内陸部の過酷な環境で植物から満足に栄養を取れなかった人々が生きていくために培った文化とのことです。
そういう背景を知ると、やはり食というのは崇高なものだと思いますね。

話がだいぶ脱線しましたが、そう、カエンタケがそんなオーストラリアで発見されたのです。
昆虫食はここまでまとめられているのにキノコが未だマニア頼みなのは若干悔しいところですが、これを機にオーストラリアのキノコ報が日本にも届くようにならないかなと、私は期待しています。

そろそろキノコドラマも再開しないとですね。
あるところに下山咲(しもやまさき)という場所がございまして・・・

そこではキノコが人間と同じように毎日暮らしておりました。

人間と同じように暮らしておりますと、人間と同じように怪我することもございます。
そんな時にはキノコも医者にかかるのです。

キノコの中にも名医はおります。ヤブ医者もおります。
治れば名医、枯れればヤブでございます。





菌曜連続???ドラマ
キノコな僕ら
第十八話 菌急手術


クモタケによって病院に運び込まれたドクツルタケは、そのまますぐに手術室へ送られました。
菌急手術でございます。
彼の後を追って遅れて到着したキノコ達・・・シロフクロタケ、ツマミタケ、カエンタケは、手術室の前で無為の時間を過ごしました。
シロフクロタケが幼菌のように固く縮こまって言葉も無く祈っているのを、ツマミタケが励まします。

「シロちゃんッ!大丈夫よッ!考えてみれば、アタシたちキノコじゃない!子実体が傷ついたくらいでどうなるものでもないわッ!菌糸が無事ならまた生えればオッケーよッ!そうでしょぅカエンタケちゃん!?」
「・・・とは限らねえぜ」

ここまでの流れをもともこも無くするツマミタケの台詞を、低く否定するカエンタケでございます。

「他菌に刺されるってなぁ、自己崩壊すんのとはワケが違う。子実体だって菌糸の一部さ、どこに影響が出てるかわかったもんじゃねえからな。傷からヒポミケスキンに感染することもあるぜ、記憶菌核がやられたら、生え直したってそいつぁ今までのドクツルタケとは別菌だ」
「ちょっとーぅ!なんでそんなコワイこと言うのよぅッ!!シロちゃんを安心させてあげようとは思わないのッ!!?」
「俺ぁ気休めは言わねえ。大した傷じゃねえなら、クモタケは運びやしねえからな」
「ちょっとちょっとちょっとぉぉぉ!!やめて頂戴ッ!!大丈夫、大丈夫よシロちゃんッ!ここの先生は名医よッ!銀耳先生って言ってねぇ、不老不死のお薬にまでされていた先生なのよッ!そうよねカエンタケちゃんッ!?」
「そうだがガセだぜ。不老不死なんざあるわけねえ」
「ちょっとおおおおおおおう!!!」

銀耳は、またの名をシロキクラゲと申します。
シロキクラゲ属シロキクラゲ科のキノコで、その名の通り、キクラゲの白いやつでございます。
味はキクラゲより淡白でございますが、野生で見つかる事は稀ですので、古くから珍重されて薬としても用いられて参りました。
不老不死とはさすがにいきませんが、今でも肝臓や心臓に薬効があるとされているのです。

「大丈夫ッ!大丈夫なのよ絶対ッ!!そうでしょカエンタケちゃんッ!!?」
「・・・気休めは言わねえって言ってんだろう。なんで俺に振るんだ」
「・・・わた、しの」

シロフクロタケが震えながら言いました。

「わたしの、せいだ。私が、ドクツルタケ待ってたら・・・」
「シロちゃん?」
「私が、ちゃんと昨日、家に帰ってたら、こんなことにならなかったのに・・・」
「シロちゃん!違うわッ!」
「違わない!本当は私が刺されてたはずなんだ!私が・・・私のせいでドクツルタケ・・・っ!私が刺されていれば良かったっ!!」
「いいわけねえだろう、馬鹿タケが」

と、カエンタケ。

「命張って守った女には言われたくねえ台詞だ。ドクツルタケの傘に泥塗る気かぃ白いの。取り消しな」
「ううっ、ひっく、うっく・・・」
「泣くのは早ぇだろ。楽観も悲観もする必要はねえ。静かに待とうや」
「そうッ!そうよッ!!いい事言ったわカエンタケちゃんッ!!静かに待ちましょうッ!!希望を捨てちゃダメよシロちゃんッッ!!!待てばキノコの日和ありってコトワザでも言うじゃないッ!?静かに待つのよぅ今は!!」
「お前ぇがうるせえんだよ。黙れ」

長い長い時間が過ぎました。
それは確かに長い時間だったのですが、待つ方にとってはさらに百年にも感じられるほどの長さでした。
長い長い長い長い時間の果てに・・・

ついに、手術室の扉が開きました。

「・・・。終わったぞい」
「先生ぇぇえええええええええんッ!!!!どうだったのどうだったのどうだったのドクツルちゃんはぁぁぁああああッッ!!!!!」

現れた白く透き通るしわくちゃのキノコ、銀耳。
・・・に、いきなり迫り狂って行ったツマミタケを、カエンタケが蹴り飛ばして黙らせました。
足が無いように見えるキノコも、必要な時には、蹴れます。

「さっきっからギャンギャンうるさいのがおると思っていたが、ツマミタケか。ここは病院じゃぞ。松の皮ひっぱがすような声で叫ぶなら出ていってくれんか」

銀耳の顔は皺が多すぎて表情がわかりかねましたが、だいぶ迷惑していたようでした。
カエンタケが代わりに謝りました。

「すまねえな爺さん。この通り黙らせた。ドクツルはどうなった?」
「カエンタケか。黙らすついでに摘んで捨てて来てくれんか。ツマミタケはグレバの臭いがどうもかなわん」
「冗談言えるってことは、まあ大事にはならなかったってことで良さそうだな。白いの、安心しな。ドクツルタケは助かったぜ」
「ほん・・・と?」
「本当も何も無いわな。傷も浅いし菌糸も傷ついとらん。ヒポケミスキンも陰性じゃ。なんも無いのに杉の欠片取るのだけがやたら手間かかりおったわ。あんな患者は二度とごめんじゃまったく・・・」
「いやあああん先生ぇぇぇぇぇええええんッッ!!!愛してるわよぉぉぉぉ!!!」
「よさんかーっ!!抱きつくな気色の悪いっ!!カエンタケ、だから早くこいつをつまんで捨ててくれと!」
「ハッハッ、すまねえ銀爺、騒ぎ過ぎたな」
「患者は騒ぐもんじゃ!慣れとる!それよりこの阿呆を・・・」
「・・・・ドクツルタケ」
「んん?」
「ドクツルタケーっ!」
「こ、こりゃっ!そっちは手術室じゃ、入るなーっ!!」

けれどもシロフクロタケは聞いてはおりませんでした。
彼女はそのままドアを押しあけ、手術台の上のドクツルタケに駆け寄りました。

「ドクツルタケ!ドクツルタケぇっ」
「・・・・・・」
「ドクツルタケ?ドク・・・!先生ぇ、ドクツルタケが起きてないようっ!」
「当たり前じゃーっ!まだ麻酔がかかっとるんじゃ!こんな手術直後の患者に何させる気じゃ、出ていけっ!」
「うっ、うっ」
「銀爺、大目に見てやってくれ。こいつぁあれだ、ドクツルの嫁だ」
「なに?そうなのか、お前さん?」
「うっ、ううん?違う」
「・・・空気読めよお前ぇ」
「もうよい!嫁でもなんでも、とにかくここからは出ていってもらうぞ!神聖な手術室じゃ!患者は病室に運ぶから、騒ぎたければそっちで騒げ!」

ドクツルタケは助かったのでした。
運ばれて行く彼に寄生菌のように付き添いながら、シロフクロタケは今は安心のために泣いておりました。

「ドクツルちゃん・・・シロちゃん・・・良かった、良かったわねッ!ぐすっ。ひっ、ひぐしっ!!」
「やれやれだ。まったく」

まことキノコというものは、キノコ騒がせなものでございます・・・
あるところに下山咲(しもやまさき)という場所がございまして・・・

人間の生きる傍ら、キノコ達がにぎやかに生きておりました。

が。

今、死にかけております。








菌曜連続に戻ったドラマ
キノコな僕ら
第十七話 菌急車


狂騒の後に落ちた静けさは、菌糸の先まで凍るような、冷たく張り詰めたものでした。

白いキノコが一本、立っております。
その下に、もう一本白いキノコが、倒れております。

「・・・シロ」

と、ドクツルタケが言いました。
土の上から、必死にかすれた声を絞り出すようにして。

「お前、けが・・・ないか?」
「・・・ドクツルタケ?」

シロフクロタケは呆然と立ったまま彼を見下ろしていました。
何が起きたのか、すぐにはわからなかったのです。
彼女を我に返らせたのは、目の前から上がった甲高い悲鳴でありました。

「あ、あ、あああああああ!!」

スギヒラタケです。

「ああああああ!!!ああああああああーーっ!!!」

彼女は鋭い杉の枝を握りしめたまま、絶望的に叫んでいるのでした。
シロフクロタケはそれを見て、またもう一度ドクツルタケに目をやりました。
シロツメクサの花の下、ほのかに薄紅の差していた傘が、そこで一気に青ざめたのでした。

「ドクツルタケっ!やだ・・・やだよっ!!」

スギヒラタケが振りかぶったあの一瞬に、ドクツルタケはシロフクロタケの前へと飛び込んだのです。杉の枝は彼の傘をかすめ、真っ白の柄に突き刺さりました。
深く、深く。

「なんで、ドクツルタケ、なんでっ!!」
「・・・だって・・・お前が、危なかったから・・・」
「!杉の葉がまだ刺さって・・・!痛い!?痛いよねドクツルタケ、抜く!?」
「いや、ちょ・・・痛い!お前、ちょっと、あんま触るなっ・・・うっ」
「ドクツルタケっ!?ねえスギヒラタケ、お医者様呼んで!?スギヒラタケっ!」
「あああああああ!!」
「スギヒラタケぇっ!」
「シロちゃんっ!!!!」
「!ママぁっ!!」

新たに駆けこんで来たツマミタケママの姿を見るや、ついにシロフクロタケは泣きだしました。
ツマミタケはその場のただならぬ様子に、雷でも走ったかのごとく托枝を尖らせ、誰よりも轟きわたる悲鳴をあげました。
傷に障ったのでしょう、ドクツルタケが心なしかよりぐったりしたようです。

「どういうコトなのッ!!!なんなのッ!!何があったのぉぉぉぉぉぅ!!?」
「ママ、ママ、ドクツルタケが死んじゃうようっ!」
「ドクツルちゃんっ!?!?ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!大怪我じゃないのっ!!死んじゃう!?死んじゃうのッ!?嘘よダメよそんなの絶対ダメよぉッ!!菌急車よッ!!菌急車を呼ぶのよッ!!」
「き、菌急車?ど、どうやって、よぶのっ?」
「どっか近くで電話貸してもらうのよッ!!ここから一番近いおうちはどこッ!!?」
「おうち・・・ちかく・・・あ、カエンタケっ!」
「カエンタケちゃん!?ベニちゃんちねっ!?アタシ行ってくるわ!!シロちゃん、ドクツルちゃんを頼んだわよぉぉぉーッ!!」
「う、うんっ」
「すぐ戻ってくるわーーーーーッ!!!」



・・・その頃。ベニナギナタタケではなくカエンタケの家では、良く眠れもしなかったという顔をした主が居間に出て来たところでした。
ベニナギナタタケはとっくに起きて支度をして、慎ましく座っておりました。

「・・・早ぇなベニ」
「!・・・おはようございます」
「眠れたかい」
「は、はい・・・」
「やめな。嘘が下手だお前ぇは」
「・・・・。あ、あの、お食事ができております。どうぞ、座って」
「ん?ああ・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・やめだ。俺ぁどっか余所で食ってくる」
「えっ?あ、あの、待ってカエンタケ!待って下さ・・・!」

「カエンタケちゃああああああああああああああん!!!!!大変よぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「・・・余所行くのもやめだ。俺ぁもう一回寝る。つうかなんで俺まで気色悪い呼び方してやがるんだオイ・・・」
「カエンタケちゃんッッ!!いたわねッッ!!」
「いねえよ」
「大変なのよッ!!激ヤバなのよぅッ!!あらっ!?何なのアンタたちッ!?なんでベニちゃんにご飯作らせてるのカエンタケちゃんッ!?もしかしてもう夫婦なのッッ!?」
「喰い殺されてぇか腐れキノコ。これぁベニが好きでやってんだ」
「あ、あの、私は置いていただいている身ですから、お食事の支度くらいはせめて・・・」
「お掃除はッ!?」
「えっ?あ、お掃除もいたしますけれど・・・」
「お洗濯はッ!?」
「お洗濯も、いたします」
「結婚はッ!?」
「けっこん・・・・結婚!?そ、それは、いたしてませんっ!」
「んまぁーーーーーーーッッッ!!!最低だわッ!!乙女の純情をなんだと思ってるのカエンタケちゃんッッ!!!」
「おいうるせえの。十数える間に失せろ。その汚ぇ托枝、叩き潰されたくなかったらな。一、二ィ、三・・・」
「ちょ、ちょっと、違うのよッ!!それどころじゃないのよッ!!本当に大変なのよドクツルちゃんがッッ!!」
「六、あいつらの茶番見ンのはもうごめんだ。七、八・・・」
「茶番じゃないわッ!刺されたのよぅッ!!」
「九・・・・・なんだと?」
「あっちで倒れてるのよッッ!なんかよくわからないけど色々あって、たぶんスギヒラタケにやられたのよぅ!!アタシがここに来たのは菌急車を呼んでもらうためなのよ、わかるッッ!?」
「わかるわけねぇだろそれをさっさと言え!!!おいベニ、ここに呼んどきな。俺ぁドクツルを連れてくる」
「は、はいっ!」
「場所どこだうるせえの!」
「あっちよ!あっちとそっちの間のあっちよ!」
「クソっ、全然要領得ねぇ・・・!」


というわけで、カエンタケは家を飛び出しました。
一方、ドクツルタケはシロフクロタケの膝に傘を抱かれて、痛みに耐えておりました。
彼が痛かったのは傷よりも、

「ドクツルタケ・・・ドクツルタケ、しっかりしてっ」

シロフクロタケの泣き顔でございました。

「シロ・・・ごめん、俺・・・お前泣かせてばっか・・・」
「今、いま菌急車呼んだから・・・すぐに来るよ、ドクツルタケっ」
「・・・シロ。スギヒラタケは・・・?」
「え?」
「スギヒラタケ・・・いるか?」

スギヒラタケはおりました。
とうに叫ぶのをやめて、ただただ震えている小さなキノコが。
彼女はシロフクロタケと目が合うと、必死にかぶりをふりました。

「スギ・・・スギ、わるくないよ・・・っ」
「スギヒラタケ、ドクツルタケが」
「スギはわるくないよっ!シロフクロタケが・・・シロフクロタケがわるいんだもん!スギはわるくない!」
「ねえ聞いてよ。ドクツルタケがスギヒラタケに何か言いた・・・」
「ドクツルタケ、死んじゃうの・・・?」
「!や、やめてよっ」
「死んじゃったらどうしよ・・・どうしよう?スギ、のせいなの?スギわるくないよ?でも、でもドクツルタケ死んじゃったらどうしよう。どうしようっ。どうしたらいいのっ!?」
「やめてよっ!そういうこと言わないでよ、死んじゃうなんて、そんなの、ないよっ!!」
「・・・・シロ・・・スギヒラタケ、逃がせ」
「ドクツルタケ!嘘だよねっ!?死んじゃったりしないよねっ!?」
「しない。しないから・・・・早く、スギヒラタケ・・・このままじゃそいつ、菌察につかまって・・・」
「ドクツルタケぇっ!」
「・・・いや、だから・・・」
「ドクツルタケ、死んじゃうの?死んじゃうんだ?スギのせいなの?ねえシロフクロタケ、ドクツルタケ死んじゃうのっ!?どうすればいいのっ!?死んじゃうんだよね!?死んじゃうんだよねえっ!?」
「やめてってばあっ!!死んじゃうなんて嫌だよっ!!そういうこと言わないで!!言わないでよぉっ!!」
「・・・・・・・・」

スギヒラタケは黙りました。そしてドクツルタケも黙りました。パニックになった少女二人に言っても聞いてもらえないことがよくわかったからでした。

「・・・・シロ」

しかし、しばらくして、またそっと声を出したのです。

「なに?どうしたのドクツルタケ?痛い?」

心配そうにのぞきこむシロフクロタケを、彼は眩しげに見上げました。

「その花・・・」
「これ?ドクツルタケがくれたやつだよ?そうだよね?」
「・・・似合ってる」
「ドクツルタケ?」
「・・・お前・・・今なら、聞いてくれる・・・かな・・・」
「え?なに?ドクツルタケ?」
「俺・・・お前のこと・・・・」

「シロっっちゃあああああああーーーーーーんっっ!!!!」

「!ツマミタケママぁっ!!こっち!こっちだよぉっ!」
「!!カエンタケちゃんッ、あっち、あっちよぉッ!!」
「うるせえな、わかってる!おいドクツルタケ!しっかりしろっ!!くそっ、駄目だ、意識なくしてやがる」
「!?嘘っ!今までずっと起きてたんだよっ!?ドクツルタケ、ドクツルタケ、なんでっ!?やだよなんでぇっ!?」

よほど心を砕かれぐったりするような何かがあったのでしょう。今。

「スギヒラタケ!」

カエンタケが、傍で震えているキノコを見つけました。

「てめえがやったのか。いつまでそんなもん持ち歩いてやがる!寄越せ!」
「!」
「こんな得物振り回しやがって・・・・とっとと失せろ!!。二度とこの辺うろつくんじゃねえ!!」

怒鳴りつけられたスギヒラタケは、ほとんど透き通るほど色を失くして、林の向こうに駆け去って行きました。
カエンタケはとりあげた杉の枝を地面に叩き捨てました。
ツマミタケが不満げに言います。

「ちょっとッ、いいのぅ?あの子、逃がしちゃってッ」
「未練があんならてめえで追いかけな。それよりドクツルタケ運ぶぜ。手ぇ貸せ白いの」
「あ、ありがとう、カエンタケぇっ」
「泣くのは医者に診せてからにしろ。急ぐぞ。もうクモが来てる頃合いだ」
「クモ?」

それがつまり菌急車の俗称であることを、シロフクロタケはカエンタケの家について初めて知ったのでした。

「どうも、カエンタケの旦那」

と軽い挨拶をした淡い灰紫色のキノコは、ぎょっとするような蜘蛛蜘蛛しいクモを家の前に乗りつけて、ベニナギナタタケの出したお茶をすすりながら患者を待っておりました。
ボタンタケ目オフィオコルジケプス科、その名もクモタケ。蜘蛛に寄生し生える昆虫寄生菌でございます。
所謂、「冬虫夏草」の一種と言えば、人間にも通りが良いでしょうか。

「驚きましたよ、あんたが俺を呼ぶなんて。てっきり無茶のしすぎでどうにかなっちまったのかと思いましたが、見る限りはぴんぴんしてるじゃないですか。イタズラは困ります」
「お前ぇの目には俺しか入らねえのかい。患者はこいつに決まってるだろ、さっさと連れてってくれ」

カエンタケがドクツルタケを托枝の先で示すと、クモタケは長く丸い頭を揺らして分生子を舞わせ、いぶかしそうに見やりました。

「生きてます?」
「あたりめえだ。死んでるならお前は呼ばねえ」
「どういう筋の患者で?」
「事故で怪我して意識がねえ。治せるか」
「診立て間違えて後で恨まれても困るんで、そういうのは先生に任せる事にしてます。が、そうですね、俺が診る限りでは、事故の怪我じゃあなさそうですね」
「診立てねえのは正解だな。お前ぇはヤブだ。余計な事はいい。治るかどうかだ」
「運は良いんじゃないですか、丁度いい蜘蛛がいたんですから。ほらこいつ。寄生が浅けりゃここにつくのにまだ時間食ってますし、これ以上寄生が進んでたら、まあ、先生のとこに着く前に蜘蛛が死ぬんでね。やっぱり時間食いますよ」

クモタケに寄生されたトタテグモは、土に掘った巣の中に潜り込んで死ぬのでございます。増殖した菌糸が死骸を真っ白に覆うと、そこからにょきにょきとキノコが生え、伸びてゆきます。
なぜ、トタテグモが死ぬ前にキノコに都合のよいところへと行くのか、その謎はまだ解明されておりません。人間には。
もちろんキノコにとっては、キノコが操ってそうさせていることなど常識なのでございますが。

「じゃ、乗っけて下さい。そこの、蜘蛛の頭の上でいいです。大丈夫ですよ、脳までバッチリ寄生キメてるんで、噛みついたりしませんから」
「・・・縁起悪ぃなあ相変わらず」

カエンタケはぼやきながらドクツルタケを蜘蛛の菌急車に乗せました。

「はい出発しまーす」

まこと、実に色々なキノコがいるものでございます・・・
あるところに下山咲(しもやまさき)という場所がございまして・・・

人が何かを望むように、キノコも何かを望みます。
人とキノコ、そこにさしたる違いはございません。
中には、決して叶わぬ望みを抱くキノコもございます。


あきらめる、べきでしょうか。
あきらめない、べきでしょうか。

どちらでも苦しくて、どこにも行き場が無い時に、キノコの心が変わるのです。

想いが、突然変異を起こすのです。





菌曜連続に逆方向で近づきつつあるドラマ
キノコな僕ら
第十六話 スギヒラタケ狂詩曲


「おはよう、シロフクロタケ」

スギヒラタケがもう一度言いました。
シロフクロタケは慌てて挨拶を返しました。

「おはよう、スギヒラタケ・・・だったね?」
「うん。ありがとう、覚えててくれて」

スギヒラタケは嬉しそうに笑いました。その手に、大きく鋭い杉の枝を握りしめて。
シロフクロタケは先ほどから、その異様な持ち物に目を奪われていたのでした。

「あの、スギヒラタケ。それ、どうしたの?」
「これ?これは、スギの大事な物だよ。スギは女の子だから、お散歩する時はこういうのが無いと不安なの。そうでしょう?」
「そう、なんだ」
「スギねえ、シロフクロタケのことずっと気になってたの。気になって気になって・・・昨日初めて見た時から気になってたの。それで、会いたいなあって思ってお散歩してたのよ。ねえ、すごいよね?会えたよ。ちゃんと」
「そ、そうだね。すごい偶然・・・あ、昨日はごめんね。ドクツルタケと話してるところ、私が邪魔しちゃったよね?」
「!ううん、いいの。スギ、それは全然気にしてないよ」

ふわふわと、可愛いキノコはまた笑いました。

「シロフクロタケはどこに行くの?お散歩?」
「私はカエンタケのところに行くんだ。昨日あの後ちょっと色々あって、すごくお世話になったから、お礼をしに」
「ふうん?カエンタケって、猛毒のキノコだねえ。・・・シロフクロタケは偉いね。毒キノコとも仲良くしてくれるんだねえ」
「そんな、そんな差別・・・しないよ」
「しない?」
「うん。食キノコだとか毒キノコだとか、そんなことで差別しないって、決めたんだ。菌種差別は絶対いけないってわかったから」
「そうなんだ。へぇ。じゃ・・・ドクツルタケとも、仲直りした?」
「!あれは私が悪かったんだもん。仲直りどころじゃないよ」
「どうして?ドクツルタケがあなたを毒にしようとしたんだよ?」
「それは、そもそも私のせいだったんだ。私が、ドクツルタケに酷い事を言ったから・・・」

シロフクロタケはなぜか心が焦るのを感じました。
小さく傘をかしげてこちらを見ているスギヒラタケに、何をどう説明しても伝わらないような、不思議な気持ちがしたのです。

「つまり、ドクツルタケを怒らせたのが私だから、謝らなくちゃいけないのも私なんだ。・・・もう謝ったかもしれない。たくさん謝ったような気がする・・・たぶん、ドクツルタケも許してくれてるんじゃないかなって思うんだけど。これもくれたし。でももちろん、後でもう一回ちゃんと謝るよ」

何気なく傘に手をやると、ふっさりしたシロツメクサの花が頷くように揺れました。
スギヒラタケが、じっとそれを見ていました。

「・・・きれいなお花ね」
「うん。本当にきれいなんだ。私が飾るなんて変なんだけど、ツマミタケママが無理矢理」
「それ、ドクツルタケがくれたの?」
「うん」
「・・・・いいな。シロフクロタケ、似合ってるよ。すごく似合ってるよ。いいなあ。スギはお花もらった事、なかった」
「スギヒラタケこそ似合いそうだよね、こういうの」
「・・・・ありがとう。でも、スギにはドクツルタケは、くれなかったから」
「いや、ドクツルタケってそもそもキノコに花をあげたりするタイプじゃないし。これも何でくれたのかよくわからないけど、もしかしたらツマミタケママが何か言ったのかな?あ、でもスギヒラタケはドクツルタケのことよく知ってるんだよね?昨日、すごく仲良さそうに見えた」
「スギはドクツルタケが好きなの。昔から」
「そうなんだ。昔から仲良いんだね」
「うん。・・・カエンタケの家、あっちかな。歩こうよシロフクロタケ。一緒に歩きながら、お話しよう?」

なぜ、シロフクロタケは頷いてしまったのか、後になってもそれはよくわかりませんでした。
ただ、ひたとこちらを見て訴えるようにそう誘ったスギヒラタケが、ひどく寂しげに見えたのです。
なんとなく、放っておけない気がしましたし、シロフクロタケは他菌を放っておけない性格でありました。
そこで、うん、と言ったのです。

「スギのおうちはねえ、昔はドクツルタケのおうちの近くだったの」

歩きながら、スギヒラタケは夢を見るように語りました。

「だけどねえ、ドクツルタケがお引越ししちゃったの。いなくなっちゃったの。スギ、寂しくて毎日泣いてた。そのうち、スギがおうちにしていた樹がすっかり腐って崩れちゃって、スギもそこを離れるしかなくなったの。そうしたら、スギはたくさんの人間に食べられるようになった」
「スギヒラタケも食キノコだったんだね。私もだよ。って、もう知ってるんだよね。スギヒラタケはどんな料理になるのが好きだった?私はやっぱりキノコ鍋・・・」
「スギはいや!!」
「!」
「人間に採られるのなんていや!いや!いや!」
「そ、そうなんだ。ごめん・・・」
「違うところへ行ってわかったの。それまでスギのところに人間が来なかったのは、そこがテングタケの土地だったからなのよ」
「テングタケ、ってあの毒キノコの名門の?」
「そう。ドクツルタケのおうちがテングタケ家なのよ。あれえ?知らなかったの?ドクツルタケはテングタケ科の中でも一番強い毒キノコだよ?」
「し、知らなかった・・・考えた事もなかった。そっか、ドクツルタケってテングタケ科・・・エリートじゃん。意外!」
「そうなの。ドクツルタケはすごいのよ。うふふふ・・・だけど、おうちのえらいキノコと喧嘩して出て行ったの。スギはずっとドクツルタケを探してた。ずっと。ずぅっと。ここにいるってようやくわかったときは本当に嬉しかった。すぐにここへ来て・・・来て・・・昨日まで、会わなかった。だって、ドクツルタケに会いに来て欲しいでしょう?スギがいるってわかったら、ドクツルタケはきっと会いに来てくれるはずでしょう?スギに会いたいって思っててくれたはずなんだよ。絶対に・・・だからね、スギ、待ってたんだよ」

パサッ!
行く先に枝垂れていた草の葉先を、スギヒラタケは鋭い枝で切り払いました。
わずかに残っていた朝露が飛んで、シロフクロタケの頬をかすりました。

「ねえ?待ってる間に、スギはいっぱい噂を聞いたの。ドクツルタケがこっちの方で生えてるって言う事も、シロフクロタケと仲が良いって言う事も、知ってたよ?よく誤食されるんだってねえ?」
「あー・・・うん。本当によく間違われるんだ。困るよね」
「ドクツルタケが可哀想だねえ?シロフクロタケと間違って食べられちゃうなんて」
「そ、うだね。言われてみれば、確かに・・・そうかも」
「でもシロフクロタケはいいね?ドクツルタケに似ていたら、人間は採らないねえ?」
「やっぱりそうかな?人間も注意はするよね」
「スギはね、似ているキノコってあんまりなかったの。ヒラタケもトキイロヒラタケも食用だから、だからひとりになったら誰も守ってくれなかった。自分でなんとかするしかなかった。それで、自分で、食べて食べて食べて・・・毒になったよ。毒になったらほっとしたけど、でも」

スギヒラタケの傘がわずかにまた、俯きました。

「でもね、泣けなくなっちゃった。泣くのが怖いの。泣いたらせっかく溜めた毒が外に出ちゃうよ。食べてる時、スギは泣かなかった。それどころじゃなかったから。毒になるのに一番大事なことは泣かないことなんだよ。だからシロフクロタケも泣いちゃだめだよ?泣かなかったら、ちゃんと毒になれるからねえ」
「わ、私は毒にならないよ?」
「なるよ。ドクツルタケがそうするつもりなら、ならなきゃだめだよ」
「違うんだ、あれは・・・あれは私が先にドクツルタケに毒キノコをやめろなんて言っちゃったからなんだ。だからドクツルタケが怒って言い返しただけで・・・いや、言い返したりも別にされてないや。うん?変だね・・・でもドクツルタケは私のこと、もう毒になんてしようとしてないと思うよ」
「・・・・毒キノコ、やめてって、それ、ドクツルタケに言ったの?シロフクロタケが?言ったの?」
「う、うん。ごめん」
「ドクツルタケ、なんて言ってたの?それ聞いた時」
「ええと・・・俺が毒キノコやめたらお前が人間に乱獲されるだろ、って、確かそんな風に言ってた」
「・・・・・そうなんだ」

つぶやいたスギヒラタケが、ぴたりと歩みを止めました。
シロフクロタケもつられて、その後ろに佇みました。
シロツメクサの花がふうわりと揺れて、振り向いたスギヒラタケはシロフクロタケではなく、その花を見ているようでした。
何か言わなければいけない気がして、シロフクロタケは一生懸命言いました。

「ドクツルタケって時々すごく優しいけどさ、でも、何考えてるかわからないところあるから、本気で言ったのかどうかはわからないよね。本音は、単にめんどくさいから嫌だっていうだけかもしれないし!」
「・・・・シロフクロタケはなんにもわかってないんだねえ」
「え?」
「ドクツルタケは、あなたを毒にするためにスギのところに来たんじゃなかった。自分が毒キノコをやめる方法を見つけたいから来たって、毒になる方法がわかるなら毒をやめる方法もわかるかもしれないから来たって、言ってた」
「・・・・え?」
「可哀想だねえドクツルタケ。本当に可哀想。シロフクロタケと間違われて人間に採られるのに、シロフクロタケのために傍にいたのに、それなのにシロフクロタケから毒をやめろなんて言われたんだ。ねえ、どうして?どうしてそんなこと言ったの?スギはドクツルタケのこと、毒のままでも好きだった。今でもずっと好きなのに」
「あ・・・・」
「なんであなたが傍にいるの。なんであなたがお花をもらうの。スギが泣いてもドクツルタケは出て行った。スギにはお花をくれたことなんてなかった。そんな事、これまで気にしたこともなかったのに。今はあなたのせいで、とってもとっても気になるんだよ。ねえ、返して?ドクツルタケ返して?返して?返して?」
「返してって、言われても・・・」
「返してよぉっ!!酷い事言ったんでしょ!?だったらいらないってことだよねえっ!?スギはそんなこと絶対言わない!なんでスギじゃなくてあなたなの!?なんであなたが嫌われないの!?スギは嫌いだよ!シロフクロタケなんか大っ嫌い!!返してよ!!ドクツルタケ返してよ!!あなたがいなければ、ドクツルタケはスギのものだったはずなんだよ!?あなたがいなければ!あなたさえいなければ!!いなくなってよシロフクロタケなんか・・・シロフクロタケなんかあっ!!」

スギヒラタケの絶望がひときわ高く響き、白いその両手が杉の枝をふりかぶるのを、シロフクロタケはただ呆然と眺めました。
鋭い刃が上がる様は、まるで夢の中のもどかしい動きのように現実味もなく、ゆっくりと感じられたのです。
しかし。

「!シロっ!!!!」

突然、横手から飛んできた声が彼女を動かしました。

「!ドクツ・・・」

「死んじゃええええぇぇえーっ!!!」

杉の枝が振り下ろされたのは、その瞬間でございました。



まこと、キノコ達はどうなってしまうのでございましょう・・・

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