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2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
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「マッシュルームちゃんは蟹の好みと思います。のりぴー枠で」

という拍手コメントをいただきました。
確かに。そうかもしれない。でもどうなの。合うの二人は。

ということで、検索かけて色々レシピを見てみたんですけどね。
当たり前だけどレシピしか出て来ないよねこのワードはね。

そしたらですね、マッシュルームを入れたカニクリームコロッケの作り方が出て来たんです。


枕営業だと思いませんか皆さん。


カニクリームコロッケにマッシュルームみじん切り、入れる必要ある!?
明らかに無理矢理じゃん。どっちが仕掛けたのよ。マッシュルームが一緒に入ろ♡って言ったの?それとも蟹が要求したの?どっちにしても引くんだけど。男の下心ありありだろ、クリームコロッケの中に一緒に入るってお前。

しかもマッシュルーム的には蟹は踏み台に過ぎないでしょ。蟹と共演したがってると見せかけて本当に狙ってるのは小麦とのコネクションでしょ。
そりゃそうだ、蟹と一緒にいたってどうせ引き立て役にされて終わるもんね。まだ牛と一緒の方がバイプレイヤーの価値を認めてもらえる。蟹ってそういう存在よ。

あと、そもそもカニクリームコロッケに蟹要るか?って私は薄々昔から疑問に思ってました。
マッシュルーム入れるようになったら、面倒だし高いからって蟹はそのうち干される気がしますよ。キノコクリームコロッケで十分美味しいことに世界が気づいてしまう。

騙されるなよ蟹。マッシュルームはお前のためにならない。
男としても高級食材としても、一線引いた付き合いを心がけてほしいと思います。
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あるところに下山咲(しもやまさき)という場所がございまして・・・

人間もキノコも、日々暮らしていく中では時に事件も起こります。
大きなもの、小さなもの、大きいと思いきや小さかったもの、それは色々ございますが、果たしてそうした事件が起きた時に、人は、キノコは、どうするべきなのでしょうか。

同じキノコと言えど、そこには個性があるものでして・・・






菌曜連続では無いドラマ
キノコな僕ら
第十三話 シロと涙とキノコの愛と


・・・少し、時間を戻りましょう。
シロフクロタケが鍋を突いたり泣いたり眠ったりしていた間、下山咲の離れた場所ではまた別のドラマが進行しておりました。

ドクツルタケでございます。

シロフクロタケを追いかけ、そして見失ってしまった彼は、オニフスベと別れた後もずっとシロフクロタケの生えそうな場所を探していたのでした。
草地、畑地、枯葉の積もった森の中の空き地・・・腐植の多い土地をいくら探しても、シロフクロタケの厚みのある傘は見当たりません。
とうとう、彼は菌糸の先をシロの懇意の店にまで向けました。スナック「ツマミ」でございます。

「・・・すみません、こっちにシロフクロタケ来てませんか」

純白なハラタケ型のイケ菌の到来に色めき立ったのはツマミタケママでした。ツチグリを追い出した後ロクに客のいなかった店内に、その歓迎の声はつんざき渡りました。

「んまぁドクツルちゃん!?御無沙汰じゃなぁーい、いつ以来ィ?ちっともお傘見せてくれないから、もう飽きられちゃったかと思ったわよぅ!」
「いや、飽きたっていうか、俺ここ来たのシロに連れられて1回だけ・・・」
「嘘よう!ドクツルちゃんはシロちゃんのお話にいっつも出てくるんだもの、心は私達と一緒にいたも同然よう!」
「・・・すげえ嫌なんだけどそれ。っつうか、シロが俺のことそんなに話してたの?」
「話してたわよ~、ドクツルちゃんが笑わないとか、ドクツルちゃんが口数少ないとか、ドクツルちゃんが話合わないとか、ノロケてたわ~」
「それ絶対ノロケじゃない。俺、そんな風に思われてたんだ・・・」

一体今日一日で何度傷つけばいいのか。ドクツルタケは傷に傷を重ねて最早土に還る寸前の精神状態です。

「・・・シロ、いないんだよな。じゃ」
「待って。シロちゃん?シロちゃんがどうかしたの?」
「・・・・・なんか、いなくなった」

逃げられた、とは辛すぎて言えませんでした。

「!!はっ!もしかして!」

と、ツマミタケママ。

「あの子、スギヒラタケのところに行ったのかもしれないわッ!!」
「・・・それは俺も知ってる。行ってた。それで、そこからダッシュでどっかに消えたんだけど、どこ行ったかがわからない」
「あらそうなのぅ?変ねえ。お店には来てないわねえ。ねえカニちゃん、シロちゃん来てないわよねえ?」

聞かれたお店の女の子(♂)、アカカゴタケ科アカカゴタケ属のカニノツメが、ツインテールな托枝に塗りたくったグレバを振り飛ばさんばかり首を横に振ります。
臭いが店に充満し、ドクツルタケは思わず息を浅くしました。
ツマミタケママは言いました。

「これ、女のカンだけど。シロちゃんは、ベニちゃんのところに行ってる気がするわ」
「ベニナギナタタケ?」

というわけで、ドクツルタケと、なぜかツマミタケにカニノツメまでがコナラの林まで菌糸を延ばしてベニナギナタタケを訊ねたのであります。
しかし、シロフクロタケはいませんでした。
ママの勘は外れました。たぶん、それほど女では無かったからでしょう。

「あ、あの・・・カエンタケは今、出かけておりまして、その」

いきなり得体の知れないキノコ達に押し掛けられたベニナギナタタケは当惑の至りでございました。

「どちらかのお店の方ですか?ツケの御支払いなら、カエンタケが戻りましたらすぐに」
「ちょっと。カエンタケちゃんどういう飲み方してるの。ベニちゃんにこんなこと言わすなんて」
「べ、べにちゃん?あの、私、どこかで貴方とお会いしたことがありましたでしょうか」
「心はね、いつも一緒だったの。シロちゃんのお友茸だから」
「え・・・?」
「ごめん。気にしなくていい。ちょっとシロフクロタケが来てないか聞きに来ただけだから」
「シロフクロタケさん?」

ベニナギナタタケは円らな深紅の瞳をぱちぱちさせました。

「シロフクロタケさんなら、ええ、お昼前ぐらいでしたでしょうか、この少し先でお会いしましたけれど。私が生え直す前のことです」
「いやそんなに前じゃなくて。つい今さっき、どっか行っちゃって見つからないんだ。ここにいたり・・・しないよな?」
「そうですね。うちにはいらっしゃいません」

嘘の気配もないベニナギナタタケは、首をかしげて、ごく常識的な事を言いました。

「もう夜ですし、おうちに帰っておられるのでは?」

そこでなぜかベニナギナタタケも加わって、四本のキノコはシロフクロタケの家まで行ってみたのです。
が、やっぱり彼女はいませんでした。

さあそこからが俄然大変になってまいりまして、四本は手分けをして近所を捜しまわりました。

「!おい、あんた!オニフスベ!!」
「!!!?どどどどドクツルタケっ!?なななななんでごわすっ?」
「シロフクロタケ見なかったか!?どこにもいねえんだよあいつ!」
「シロフクロタケ・・・は、み、みなかっ・・・」
「おい。嘘言ったら寄生するぞ。できなくてもする。本当にシロがいないんだよ。あんた、何か知ってんだろ?なあ」
「ひっ」
「オニフスベさん、お願いです。何かご存知の事があるなら、どうか教えて」
「ベ、ベニナギナタタケさ・・・」
「ちょっとぉぉぉぉぉ!!シロちゃんが大変なのよおおおお!!あんた知ってるなら吐きなさいよこの白はんぺんキノコおおおおお!!ぐずぐずしてるとカニノツメちゃんがあんたをぶっ刺して中にグレバ埋めるわよおおおおおっ!!!」
「ひいいいいいいっ!!ご、ごめんでごわす!言うでごわすーっ!!」

オニフスベは吐きました。シロフクロタケに頼まれてドクツルタケに嘘をついた事を。

「・・・あんたが人間なら、俺、確実に食わせてる。俺を」
「申し訳ないでごわす!申し訳ないでごわすっ!!」
「でももとはと言えばシロが頼んだんだよな・・・くそっ、あいつほんと馬鹿!」
「オニフスベ、あんたも一緒に探すのよッ!どうせ暇なんでしょッ!しぼんでる場合じゃないのよッ!!」
「ひい!」
「みんないい!?手分けして探して、とりあえず一時間後にお店に集合よ!」
「あの、申し訳ないのですが、私、お店を存じ上げてなくて・・・」
「あら。そうだったわね。じゃ、シロちゃんのおうち・・・え?それはオニフスベちゃんが知らないの?そうなの?じゃ、仕方ないわ~もう、ベニちゃんのおうちに集合よ!必ずシロちゃんを見つけ出すのよ~ぅ!!」

なぜか拠点がベニナギナタタケの家・・・もといカエンタケの家になり、ツマミタケママが陣頭指揮を取っておりました。

そうして瞬く間に経った一時間後。

全員が手ぶらで、カエンタケの家に集まることとなったのです。

「シロっちゃああああああん!!!どこにいるの!!?どこに行っちゃったのよぉぉぉぉぉおおお!!」
「だ、団地も公園も街路樹の下まで探したっども、どこにもいなかったでごわす」
「ママ。こんなこと言いたくなかったんだけど・・・もしかしてこれって本当に、誘拐?」

カニノツメが角ばった柄を抱きしめて震えております。筋肉質に見えて意外に脆い、内面は乙女なキノコなのです。
彼女(♂)の言葉を聞いたドクツルタケは、ほとんど青く透き通るほど憔悴しました。

「やばい・・・本気で怖くなってきた」
「お、おいどんのせいでごわす!!おいどんがあの時、嘘なんかつかなければこんなことには!」
「仕方ねえよシロが頼んだんだから・・・でも、なんかあったら一発殴らせろよ」
「こんな時に限ってカエンタケがいないなんて・・・私では何のお役にも立てなくて・・・シロフクロタケさん、どうか無事でいて・・・!」
「アタシのせいよおおおおおおっ!!アタシが!アタシがシロちゃんにあんなこと言ったからよ!!ドクツルちゃんを止めてなんてアタシがあああああああ!!!!
「おい、誰かママを止めろ」
「シロちゃんが誘拐なんて嘘よォォォォっ!あんな可愛い子がっ!!あんな可愛くてピュアでキノコを疑う事を知らない子が誘拐なんてぇぇぇぇ!!!」
「なあ明らかに誘拐されるしかない言葉並べんの今マジでやめて欲しいんだけど」
「キノコ狩りよ!!きっとキノコ狩りにやられたんだわッ!!人間どもがシロちゃんを連れて行ったのよ!!」
「こんな夜中にキノコ狩りする奴いないだろ・・・」
「もうダメ!!菌糸よッ!!アタシ菌糸するわッ!!菌糸よぉぉぉぉぉーーーーーぅッ!!!」
「あんたが菌糸してもシロが見つかるわけじゃねえだろ!静かにしてくれよ頼むからっ!」

菌糸とは、キノコが己を厳しく罰する行為でございます。
人間で例えるのは難しいことですが、強いて言えばそう、指詰めと言ったところでしょうか。
ツマミタケママの覚悟と勢いが伺われる言葉でございます。

しかし、結局ママは菌糸をしないで済みました。
というのもその時、

「・・・こんな時間に何だお前ら、傘揃えやがって」

カエンタケが帰って来たからでございます。

「!カエンタケ!」
「ベニ。うるせえ客には帰ってもらえ・・・って、ドクツルタケがいんのか。丁度いい。お前、こいつ何とかしろや」
「!!シロっ!!」

あんなに探したシロフクロタケが、すやすやと寝息を立てて、カエンタケの背中にしがみついているのでした。
ドクツルタケは咄嗟に駆けよろうとし、

「シロっちゃああああああああん!!!!!」

ツマミタケの勢いに弾き飛ばされました。

「シロちゃん!!無事だったの、無事だったのねえええええっ!!!!」
「てめえ何だ、ツマミタケか。てめえは呼んじゃいねえ・・・」
「シロフクロタケええええっ!良かったでごわす!良かったでごわす!!」
「!お前ぇまでいるのかオニフスベ。二度とここに傘出すなっつったはず・・・」
「カエンタケ、一体、何がどうなってあなたが」
「・・・俺が聞きてえ」
「!?ちょっとお酒ッ!?お酒臭いわッ!アタシのシロちゃんがお酒よッ!!どういうことッ!?まさかあんたが飲ませたんじゃないでしょーねッ!?」
「・・・・・・まあ、俺だけどよ」
「なんてこと・・・!シロフクロタケさん、シロフクロタケさん、大丈夫?」
「お前ら、ちったぁドクツルタケのために隙間開けてやれって」

しかしドクツルタケは最早完全にタイミングを失って、少し離れたところからぽつんと、無事だったシロフクロタケを眺めるばかりでした。
彼はカエンタケと目が合うと、こんな気配りまで見せました。

「カエンタケ。面倒かけたみたいだな。シロ、なんかやらかしただろ」
「・・・話通じそうなのはお前さんだけだねえ」

不遇な毒キノコ達でございました。

「おい、シロ!シロ!シロフクロタケっ!起きろよいい加減!」
「・・・・ん?」

ドクツルタケがシロフクロタケの側まで寄れたのは、収まらぬ騒ぎとちっとも起きない背中の荷物にどうしようもなくなったカエンタケが、しぶしぶこれまでのいきさつを説明し、一同を安心させた頃合いでした。
肩を掴んで揺さぶられ、シロフクロタケはようやくむにゃむにゃと傘を起こして目を開いたのでございます。

「ドクツルタケ・・・?」
「ドクツルタケじゃねえよ!お前、散々みんなに心配かけて何やってんだ!今何時だと思ってんだよ!俺ら今までずっとお前探して走り回ってたんだぞ、キノコなのに!」
「う・・・・」
「ドクツルタケさん、どうかそんなにきつく言わないであげて・・・」
「それがお前は何だ!?知らないキノコの家にホイホイついてって、そいつの家で鍋食ってた!?しかも酒飲んで酔って、カエンタケに迷惑かけながら帰って来た!?ふざけんじゃねえぞ馬鹿っ!」
「ううっ・・・」
「泣きたいのはこっちだ!お前のことなんか心配して大損したっ!!」
「う、うえぇぇぇっ」
「ちょ、ちょっとドクツルちゃん、言いすぎよーぅ」
「そうでごわすそうでごわす、無事だったんだから良しとせんといかんでごわす」
「ドクツルタケさん、知らないキノコと言っても、カラカサタケさんは本当に良いキノコなのです。シロフクロタケさんにもきっとそれがわかったのでしょう。ですから決して危ない事をしたわけでは」
「何言ってんだお前ぇら。甘ぇ。こういうのはしっかり言っとかねえと駄目だ。カラカサだったからいいようなものの、悪ぃキノコに引っかかってたらタダじゃあすまねえぞ」
「カエンタケ!だったらあなたが一言連絡をくれれば良かったではないですか」
「俺はガキのお守じゃねえぞベニ」
「うっ、うえぇっ、ごめんなさい、ごめんなさいっ」
「シロフクロタケさん、いいの。泣かないで?ね?私達、とにかくあなたが無事でいてくれて本当に良かったと思っているのよ。だから・・・」
「謝って済むか馬鹿っ!」
「ドクツルちゃぁ~ん、もういいでしょーぅ?」
「良くねえよ!どうせすぐ忘れんだこいつ!」

周りが落ち着いたせいでしょうか、ドクツルタケは今になって腹立ちがおさまらなくなってきた様子でございます。
シロフクロタケはそんな彼の厳しい言葉に、縮こまって泣きました。

「う、うえぇぇえっ。ドク、ツルタケ、は・・・私のこと、きらい、なん、だ」
「あぁ!?」
「や、ぱり、そうなん、だ・・・毒キノコ、やめろ、て、言ったから」
「なに!?なんだって!?」
「ごめんねぇっ?ごめんね、ドクツルタケぇっ・・・ごめんね、ごめんねぇっ・・・!」
「ちょ・・・なんだよ!しがみつくなよ!何言ってんだよおい!」
「わたし、が、悪かった、から・・・きらい、に、ならないで・・・」
「嫌い?って、今そんな話してねえだろ!お前が馬鹿だっつー話してんだろ!」
「ふぇ・・・!」
「あ、おい!」
「ド、ドクツルタケ、に、きらわれ、ちゃっ・・・うえぇぇぇえっ!ふええぇぇぇんっ!!」
「嫌ってねえよ別に!嫌ってねえって!お前どこまで馬鹿!?嫌いな奴のことこんなに探しまわったりするわけねえだろ!」
「うわああああん!ドク・・・きらい、て・・・うわあああん!」
「言ってねえよ!?一言も言ってねえよ俺はっ!つうか・・・あーもう!俺は好きなんだよ!お前のこと大好きなんだよ!いい加減わかれよ!なあ!」
「うわあああああん!!うわああああああああああんっ!!」
「聞いてる!?お前ちゃんと聞いてた今の!?」
「ドクツルタケにきらわれたよぉっ・・・ごめんねぇっ!?」
「っ・・・聞いてねえし~っ・・・!」
「うわああああああんっ!」

ドクツルタケの猛告白も大泣きするシロフクロタケの耳には全く届かなかったのでした。
がっくりと落ちた彼の肩を、ぽん、とカエンタケが叩きました。

「ドクツル。まあ・・・焦んな。その白いのに惚れた腫れたは早ぇや。友茸から始めてやんな」
「~~っ、あんたに何がわかんだよっ」
「作法ってのがあんだよこういうのは」
「そうよドクツルちゃん。焦らないで。愛もキノコも永遠だから、時間はたっぷりかけていいと思うの、アタシ」
「黙れよ!」

ドクツルタケは、もう十分時間はかけたと思ったのでした。

まこと、キノコには鈍いのもいるものでございます・・・



少し前にエロ画像で登場したふたり。

右:ショウゲンジ。うら若き女虚無僧。
毒の名門テングタケ科に比べると知名度は劣るものの専門家からは「食うべきではない科」として恐れられているフウセンタケ科にあって、しかし彼女自身は毒の無い清らかな食菌であることから、一族の罪滅ぼしのための善行功徳を積む宿命にありとして諸国行脚を命じられた少女。美菌。
青春真っ盛りの自分が何でそんな抹香臭いことをしなければならないのか。一族の罪って言ったって大戦犯のコレラタケとヒメアジロガサは最近フウセンタケ科から抜けたじゃん。
色々言いたい事を抱えたまま旅に出された彼女は、この境遇から救ってくれる白馬の王子様を夢見て、旅路で出会う男達と片っ端から恋に落ちる。
隠れ不良、隠れ外道、隠れ既婚者、隠れサイマー、隠れアル中、隠れヤク中、隠れ詐欺師、隠れ殺人鬼・・・余の中の隠れた悪を見つける天才にして死ぬほど男を見る目が無い女である。
もともと素直に育った美味しいキノコなので、他菌を疑う事を知らないのである。護衛がいなければ彼女のキノコ的貞操が今頃どうなっていたかわからない。

好きなタイプは素敵な年上。嫌いなタイプは汚いオッサン。
乙女心って難しい。


左:ジンガサドクフウセンタケ。ショウゲンジの道中護衛を務める男。
ショウゲンジの所属するフウセンタケ科フウセンタケ属は、フウセンタケ科の中でも毒の無いキノコの属だったのだが、そこに日本で初めて登録されてしまった猛毒菌が彼である。その十年後にドクフウセンタケが発見され登録されたのでオンリーワンでは無くなった。ジンガサドクフウセンタケが先、ドクフウセンタケが後である。ややこしい。
ショウゲンジからは汚いオッサンの権化だと思われている。毛嫌いされているが本菌は全く気にしていない。曰く「可愛い女の子は何やっても可愛い」。そういう事を言うからますますキモがられるのである。
好きな物はエロい女。嫌いな物はショウゲンジの惚れる男たぶん全部。ショウゲンジが惚れるから嫌いなのではなく、彼が嫌いなタイプの男にばかりショウゲンジが惚れる。

ジンガサが日本で発見されたのは最近だが、実はヨーロッパでは昔から知られた毒キノコであり、数カ国を股にかけて活躍してきたマルチリンガルな男である。ショウゲンジは知らない。ただの小汚いオッサンだと思っている。
毒成分はオレラニン。悪名高い除草剤パラコートと類似の構造を持ち、腎臓を破壊する。致命的な症状が食ってから3週間後に出るという周到さで長くバレずに仕事を行ってきた暗殺のプロである。ショウゲンジは知らない。ただの薄汚いオッサンだと思っている。
腰に愛刀を差し戦闘力は極めて高い。が、ショウゲンジの前で闘った事が一度もないため彼女はやはり知らない。ただの根性無し汚いオッサンだと思っている。
彼の戦闘能力は、主に、ショウゲンジのロクでもない恋人達に対して秘密裏に披露されてきたのである。



あまりにも恋人に逃げられる(消えられる)ので、ショウゲンジの乙女心は焦り気味。
このままではそのうちジンガサに嫁ぐことになるのではないかと心から怯えている。

残念ながら、その予感は後に的中する。




十年前、浅い社会人だった私は思わなかったが、今とても思うこと。


カエンタケずるくね!!??


こう、キャラクターを書きわけるにあたって、自分の中の男性ホルモンの駄目な部分を全て彼に注ぎ込んでる気がする。
男としてやらなきゃいけない事は全てやるがその範疇に色恋は入らねえと言わんばかりの、なんつーかこう、トレンディドラマにどうして出て来たお前。

ベニが惚れるのはわかるんだけど・・・
でもこれは惚れてはいけないタイプの男ですよ。うん。


あるところに下山咲(しもやまさき)という場所がございまして・・・

そこでは人間やキノコがそれぞれ平凡に暮らしておりました。
両者の暮らしには似たようなところもあり、違うようなところもあり・・・
しかし朝から夜にかけての一日の時の移り変わりは全く同じでございます。

日の光の下で行動し、夜の闇の中で休み。
時々、日のあるところで語れなかったことを夜の中で語ったりしますのも、人間と同じと言えるのではないでしょうか。

聞いて欲しくて忘れて欲しい、そんな言葉を、夜の闇は包むのです。






菌曜連続の意味を忘れたドラマ
キノコな僕ら
第十二話 送り火の夜


雨上がりの夜は、湿った土の匂いが地面の上に溜まっております。
朝が来て日が差せば、生ぬるい蒸気となってゆらゆらと空へ登ってゆくのでしょうが、ただ闇の深いばかりのこの時間は、そこを行くキノコにとっては沼のようにも思われる濃く重たい匂いです。

カエンタケに背負われてその沼を進むシロフクロタケは、何度か大きく息を吐きました。

「・・・他菌に運んでもらってため息つくたぁ、随分な奴だな」
「!た、ため息じゃないよ。空気が重いから、そのせいだよ」
「・・・・・・」
「!あっ、違うよ!?カエンタケのせいで重いんじゃなくて、雨のせいでってことだよ!?」
「・・・でかい声出さなくても聞こえらぁな。俺の耳がどこについてると思ってんだ」

キノコの耳がどこについてるのかは人間には計り知れぬことです。
シロフクロタケは声を小さくして、恐る恐る聞きました。

「カエンタケ、私の家、知ってる?」
「知るわけねえだろう」
「どうやって帰るの?」
「お前の覚えのあるところまで来たら、お前が歩いて帰るに決まってんだろう」
「・・・・・」

言われて、シロフクロタケは辺りを見回してみましたが、すぐにしゅんとなりました。

「夜だと、木がみんな違って見えるね」
「見えねえな」
「でもカエンタケの家まで行ったらわかると思う」
「俺の家までお前を連れてく気はねえぞ。大体なんで俺の家をお前が知ってやがる」
「だってベニナギナタタケの家だもん。頼まれて回覧板持ってったこととか、あるもん」
「・・・あれは俺の家だ」
「でもベニナギナタタケ、カエンタケと一緒にいたいって、言ってたよ」
「・・・・・・」
「一緒にいれば、人間はどっちのキノコにも警戒するようになって、誤食もしなくなるって」
「・・・それと俺の家と何の関係がある。どうでもいい話だ」
「どうでもよくないよ!」

思わずまた大きな声を出してしまったシロフクロタケでしたが、彼女にはカエンタケの後頭部しか見えませんでしたので、彼が心底耳を塞ぎたそうに顔をしかめたのを知らずに終わりました。
カエンタケは、仮にキノコに鼓膜があった場合にその激震が落ち着くぐらいの時間を、しばらく沈黙しました。それから静かに言いました。

「ベニが何を言ったか知らねえが、俺ぁ昔から自分が毒だってことは知ってたぜ。俺を食った人間が死のうが生きようが、今更騒ぐ話じゃねえ」

シロフクロタケは、目と口を丸くしました。
それらがどこにあるかも人間にはわからないで良い事です。

「え?でも、だって、カエンタケが毒だってわかったのはつい二十年くらい前だって・・・」
「本草図譜にゃあ毒だって書いてあるって聞かなかったか。江戸時代からこの方敬遠されてるキノコなんざ、少なくとも食のはずがねえだろう。手前のことは手前が一番わかってらぁな。確かに毒札貼られたのは最近だが、俺にとっちゃ昔も今も変わりゃしねえよ」
「・・・・変わってない?」
「ああ」
「じゃあ、じゃあなんでベニナギナタタケは・・・」
「あいつは俺に怯えてんのさ」

カエンタケは淡々と、まるで自分には関係の無い事を話すような口調で言いました。
湿った空気の中でもその音だけは乾いて聞こえるようでした。

「俺ぁ人間がキノコ食って死んでも気にも留めねえ菌だ。食うか食わねえかは人間の勝手だろう。キノコがどうにかできるこっちゃねえと、俺は昔から思っていたし、それは何も変わっちゃいねえ。だが俺が毒キノコだとわかったことで、俺のそういう性質がベニの前に晒されたのさ。俺の本性に気づいたって奴だ。それで、怯えてんのさ。まあ無理もねえがな。あいつと暮らしている間は、俺も随分優しいキノコだった」
「カエンタケ・・・」
「ベニが俺と一緒にいたいっつってんのは、妙な責任感じてるせいだろう。俺が毒札貼られたのはあいつとの誤食が原因みてえなもんだからな。気にするなっつってもききゃあしねえ。馬鹿な女さ・・・。だがな、白いの。それやこれやはこっちの問題だ。お前が傘つっこむことじゃねえぜ」
「でも」
「でもじゃあねえ。お前は他菌の心配する前に、手前のカタをつけやがれ。ドクツルタケは今頃、傘青くしてお前を待ってるだろうよ」
「そうかなあ」
「おい。野郎ってのは損だねぇ、女には大概信じてもらえねえ」
「ねえ、カエンタケ?」
「なんだ」
「ベニナギナタタケのこと、好き?」
「・・・そういう青臭ぇ感情は俺の領分じゃねえな」
「?どういうこと?ベニナギナタタケはカエンタケのこと好きだよ、きっと」
「そうかい」
「好きだから、一緒にいたいんだよ。それだけだよ」
「そうかい」
「カエンタケだって好きだよね?嫌いなキノコと一緒にいるはず、ないよね?」
「そうかい」
「カエンタケってば!」
「そうかい。・・・あんまりうるせえと放り出すぞ、白いの」

カエンタケはそれきり、まともに取り合ってくれませんでした。
何を聞いても「そうかい」と面倒そうな返事をするだけで、そのうちその返事すらしなくなってしまいました。
けれど、シロフクロタケを放り出すようなことも、しませんでした。

狂い咲きの花が一輪、遠く小さな灯のように揺れて、ゆっくり進むキノコ達の上を過ぎて行きます。

まこと、キノコの歩みというものは、時にまだるっこしいほど遅いものでございます・・・
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