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2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
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■あの茸は今
カエンとベニの別れ話もスギの事件も何も知らない平和なカラカサ。
シロちゃんは家に帰れたかしら、心配だからカエンタケに聞きに行ってみようかな、そうだせっかくだからベニちゃんにお土産でも買っていこうそうしよう。
何の憂いも無い晴れやかな笑顔で買い物をする彼の頭には、
「女の子→甘いもの→ショートケーキ
というエリンギを割ったようなまっすぐな構図しか無かった。
・・・吉野家と女は同じ世界に存在しないと思っている夢見る男の一人である。



・・・・・

ベニ「・・・そうですか。ドクツルタケさん・・・良かった!」
カラ「こんにちはあ」
ベニ「あ、どなたかいらっしゃったみたい・・・はい、お大事にとお伝え下さい。失礼いたします・・・」

チン。

カラ「カエンタケえ、いるかい?シロちゃんあのあと無事に・・・・あ。」
ベニ「こんにちは。カラカサタケさんでしたか」
カラ「!ベニちゃんごめ・・・!電話中だった!?よね!?」
ベニ「い、いいえ、いいえ。もう終わるところでした。カエンタケからでしたから大丈夫ですよ」
カラ「あれ?カエンタケ留守?どこに行ったの?」
ベニ「今はまだ病院に」
カラ「病院!?」
ベニ「はい・・・」
カラ「な、何があったんだベニちゃん!!カエンタケは昨日はあんなに元気で!!」
ベニ「え?あ、あの、カエンタケは別になんともな・・・・」
カラ「カエンタケはなんともない・・・?じゃあ・・・・シロちゃん!?シロちゃんに何かあったんだねっ!!?」
ベニ「!」
カラ「もしかしてお酒のせいで具合悪くしたんじゃないかい!?俺思ったんだよ昨日、いくらなんでも飲みすぎだって!カエンタケが病院に連れてくなんてそんなよっぽどひどいんじゃないか!?ひどいのかい!?」
ベニ「お、落ち着いて下さい、カラカサタケさん・・・!」
カラ「ベニちゃん話してくれ!一体、俺の知らない間に何があったのか!」
ベニ「は、話します、話しますから落ち着いて・・・・!おねが・・・・!」



ベニ「・・・・・ということがあったのです」
カラ「スギヒラタケにドクツルくんが・・・・なんてことだ・・・」
ベニ「この家に運ばれてきた時には意識がありませんでしたが、ここから病院に運ばれて手術をされて、一命は取り留められたそうです。傷も思ったほど深くなく、菌床をあたたかくして少し湿らせておけばまたお元気に生えられるでしょうとのこと。本当に、不幸中の幸いでございました。ほんとうによかった・・・!」
カラ「そうだね、大事にならなくてほんっっとうに良かったね!シロちゃんもほっとしてるだろうな。いや、心配してるのかな?両方か!とにかくもう大変だったねベニちゃんも!」
ベニ「私は何もできませんでした。カエンタケが・・・カエンタケがいなければどうなっていたことか。ドクツルタケさんを運んだのも、傷口の液止めも、救急茸を呼ばせたのも、全てカエンタケなのです。彼がみんなしてくれたのです。私はただ見ているだけで・・・怖くて動くことすらできずに・・・・」
カラ「普通はそうだよ。カエンタケが怖いもの知らずなんだよ。あいつは昔っから頼りになるキノコだし、かっこつけてるけど何だかんだでキノコの面倒見るの嫌いじゃないし」
ベニ「ええ、ええ」
カラ「俺だってショウジョウバエから助けてもらったし、ベニちゃんだって山から出てきたとこ拾われたし。そういうとこまったく変わってないんだな。きっと変わらないもんなんだろうね、キノコの良いところって」
ベニ「ええ・・・・」
カラ「ああいう奴だからちょっとわかりづらいところもあるけどね。あはは。でもいい奴だよ本当に」
ベニ「・・・・・・・」
カラ「まだ病院かあ。ケーキ3つ買ってきたんだけどどうしよう。あいつ遅くなるって言ってた?ベニちゃん」
ベニ「!あ、いいえ、もうすぐ帰るからと」
カラ「じゃあ待ってようかな。いい?俺ここ居て」
ベニ「もちろんです。すぐにお茶をおいれしますから、どうぞお楽になさってください」

ぽつ。

カラ「ん?」

ぽつ。ぽつ。

カラ「雨だ」
ベニ「!・・・雨・・・・」
カラ「梅雨に入ったからね。よく降るなあ」
ベニ「・・・・・・わたくし」
カラ「ん?」
ベニ「私・・・カエンタケに傘を持っていかなければ」
カラ「あ!俺行ってこようか?」
ベニ「いいえ、いいえ、カラカサタケさんはここに居てください。私が参ります」
カラ「そう?」
ベニ「はい」
カラ「・・・そっか。じゃあひどくならないうちに行ってきたほうがいい。お茶は俺、自分でいれられるからさ」
ベニ「・・・申し訳ありません」
カラ「いいんだよ、そんなの。気をつけて行って来て。カエンタケをよろしく」
ベニ「はい。行ってまいります」

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■シロキクラゲ(白木耳)
通称「銀爺」。(中国名「銀耳(インアイ)」)
中肉中背で白髪、全体的に薄い老人。(中型で白く透き通っていて皺くちゃ)
医者。(漢方薬に用いられる)
二十四時間営業。(通年で発生する)



ピーポーピーポーピーポー

・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・  ・  ・

カエ「・・・・・随分かかりやがるな」
ツマ「かかりすぎよーぅ!手術室に入ってからもう5時間よーぅ!?アタシもう耐えらん無いわよーぅッ!」
カエ「騒ぐんじゃねえ。一番堪えてんのはお前ぇじゃねえだろう」
シロ「・・・・・・・」
ツマ「シロちゃん・・・大丈夫よッ!ここのお医者さんはとっても良いお医者さんなのよッ!」
シロ「・・・・・・・」
ツマ「銀耳先生って言ってねッ、ちょっと昔までは不老不死のお薬にまでされてたキノコなのよッ!そうねカエンタケちゃんッ!?」
カエ「うるせえって」
ツマ「大体ドクツルちゃんがシロちゃん置いていくなんてコトあるわけないわッッ!そうでしょシロちゃんッ!?」
シロ「・・・わた、しの・・・」
ツマ「シロちゃんっ?」
シロ「わたしの、せいだ・・・わたしが・・・ドクツルタケ、待ってたら・・・・」
ツマ「!」
シロ「わたしが、ちゃんと家に帰ってたら・・・・そしたらこんなこと・・・・ならなかったのに・・・・」
ツマ「ち、違うわよッ、シロちゃん!そうじゃないわよッ!」
シロ「ほんとは・・・っ、刺されてたのは私のはずだったんだ・・・・!私だったらよかったんだっ・・・!」
ツマ「シロちゃ・・・!」
シロ「私が刺されてたら良かったんだぁっ!」
カエ「良いわけねえだろう、馬鹿タケが」
ツマ「!カエンタケちゃんッ!?」
シロ「ううっ、ひっく、う、うぇぇっ!」
カエ「取り消しな。命張って守った女にだけは言われたくねえ台詞だ。ドクツルタケの傘に泥塗る気か」
シロ「うっく・・・・ひっく・・・・っ」
ツマ「し、シロちゃんッ、大丈夫よーぅ。ドクツルちゃんは大丈夫よぅ、ねぇっ?」
シロ「・・・・・・う・・・・ふ、っく・・・・・」

カチャ。

銀爺「・・・・・・・・」
ツマ「!!先生ぇぇぇぇぇえええええええッッッ!!!どうなのどうなのドクツルちゃんはどうなったのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅッッ!!!」
銀爺「・・・さっきっから外でギャンギャンうるさいのがおると思ったらお前さんかい。ここは病院じゃぞ。松の皮ひっぱがすような声で騒ぐなら出てってくれ」
ツマ「ドクツルちゃんが先よぉぉぉぉぉぉぉッッ!!どうなったのよぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」
カエ「おい、黙れ・・・・」
銀爺「んん?カエンタケ?これは珍しいのう、何の用じゃ?」
カエ「久方ぶりだな銀爺よ。俺もドクツルタケに用さ、あいつどうなったぃ」
銀爺「そのクソやかましいツマミタケをつまんで捨ててきてくれ。そしたら話してやろう」
カエ「冗談言えるってことは心配するなってことかねぇ。シロフクロタケ、どうやら安心して良さそうだぜ」
シロ「!・・・・・」
ツマ「ほんとなのッッ!!?ほんとにドクツルちゃん助かったのッッ!!?」
銀爺「助かったもなんもあるかい。傷も浅いし菌糸もどっこも傷ついとらん。ヒポミケスキンの感染の心配も無い。なんも無いくせに杉の欠けら取るのだけはやたら手間がかかりおった。あんな急患はもう二度とごめんじゃな」
ツマ「っ!!先生ええええええ!!!!愛してるわよぉぉぉぉぉおぉぉぉうッッ!!!」
銀爺「!!よさんか気色の悪いっっ!!」
カエ「ハッハッ、爺さんすまねえな、大袈裟に騒ぎすぎたか」
銀爺「フン、患者ってのは大概騒ぎ過ぎるもんじゃ。慣れとる!」
カエ「だとよ、シロフクロタケ。良かっ・・・・ん?」
シロ「・・・・・・・・ドクツルタケ・・・・」
カエ「おい」
シロ「ドクツルタケ・・・・!」
銀爺「!?こりゃっ!そっちは手術室じゃっ!入るなーっ!!」
シロ「ドクツルタケっ!!」

・・・・・・・

カエ「聞いちゃいねえようだねぇ・・・」
ツマ「愛だわねぇ・・・・」



シロ「ドクツルタケ!ドクツルタケ!」
ドク「・・・・・・・・・・シロ?」
シロ「!ドクツルタケ・・・・・!よかっ・・・・・よかった・・・・っ!よかったぁっ!」
ドク「・・・・・・・・・・シロ・・・・お前・・・・」
シロ「良かったぁぁ・・・・・う、うっく、ふぇ、えええぇっ」
ドク「・・・・・・・・・泣くな」
シロ「うええええっ、ドクツルタケ・・・・ひっく、うわああああんっ」
ドク「・・・・泣くなっつってんのに・・・・・」
シロ「うわああああん!」
ドク「・・・・・・・バカだな・・・・・・・・・・・・」
シロ「うわああああん!」
ドク「・・・・・・・・・・・シロ」
シロ「う、うっく、ふ、うっく」
ドク「・・・・・シロ、俺・・・・・・・・・」
銀爺「こりゃああっ!!!」
シロ「!っく!」
銀爺「わしの手術室からさっさと出て行けっ!!患者も外に出すからとっとと出て行くんじゃ白いのっっ!!」
シロ「ご、ごめんなさい・・・・!」
ドク「シロ・・・・・・」
シロ「せ、先生っ!銀先生っ!!」
銀爺「なんじゃっ!」
シロ「ありがとうねぇっ!!ううっ、大好きだよ先生ぇーっっ!!!」
銀爺「!!こ、こりゃっ!!抱きつくなーっっ!!」
ドク「・・・・・・・・・・・・・・・・」

ツマ「傘色悪いわぁ、ドクツルちゃん。やっぱり怪我が痛むのねぇ」
カエ「まあ、ゆっくり休めば治るだろうさ。・・・やれやれだ」

カエ「・・・・・早ぇな、ベニナギナタ」
ベニ「!・・・おはようございます」
カエ「眠れたかい」
ベニ「は、はい・・・」
カエ「やめな、嘘が下手だお前ぇは」
ベニ「・・・・・・・。あ、あの、お食事がもう出来ています。どうぞ、座って」
カエ「ん?ああ・・・」
ベニ「・・・・・・・・・・」
カエ「・・・・・・・・・・」
ベニ「・・・・・・・・・・」
カエ「・・・・・・・・やめだ。俺ぁどっか他所で食ってくる」
ベニ「え・・・?ま、待ってカエンタケ!まってくださ・・・・!」

ツマ「カエンタケちゃああああああああんッッ!!!!た、た、大変よぉぉぉぉぉぉぉーーーーぅッッ!!!」

カエ「!またうるせえのが・・・・なんで俺まで気色悪ぃ呼び方してやがる」
ツマ「カエンタケちゃんッ!ちょっとッッ!ちょっと大変なのよッッ!!あらッ!?何なのアンタたちッッ!?なんでベニちゃんにご飯作らせてんのカエンタケちゃんッッ!?もしかしてもう夫婦なのッッ!?」
カエ「蹴り飛ばされてぇのか腐れキノコ。これぁこいつが好きでやってんだ」
ベニ「わ、私は、その、置いていただいている身分ですから・・・・お食事の支度くらいはせめて・・・・」
ツマ「お掃除はッ!?」
ベニ「それもいたします・・・」
ツマ「お洗濯はッッ!?」
ベニ「そ、それもいたします」
ツマ「結婚はッッ!?」
ベニ「け・・・・!!そ、それは、い、いたしませんっ」
ツマ「んまぁーーーッッッ!!最低だわッ!!カエンタケちゃんッッ!!!」
カエ「おいうるせえの。10数える間に失せろ。てめぇのドタマの托枝叩き潰されたくなかったらな。一、ニ、三・・・・」
ツマ「ちょ、ちょっと違うのよッッ!!それどころじゃないのよッッ!!ドクツルちゃんが大変なのよーぅッッ!!」
カエ「六、七、あいつらの茶番見るのはもうごめんだ、八・・・・・」
ツマ「違うのッッ!!刺されたのよッッ!!」
ベニ「!?」
カエ「九・・・・・なんだと?」
ツマ「スギヒラタケがシロちゃんを刺そうとしたのッッ!それで、シロちゃん庇ってドクツルちゃんが刺されちゃったのッッ!!あっちで倒れて動かないのよッッ!!救急茸呼んでちょうだいなのよーぅッッ!!!」
カエ「・・・・・本当か?」
ツマ「本当よーぅッ!」
カエ「なんでそれ早く言わねえ!!ベニ、ここに呼んどきな。俺ぁドクツルタケ連れて来る」
ベニ「は、はい!」
カエ「場所どこだツマミタケ!」
ツマ「あっち、あっちとそっちの間のあっちよーーーーぅッッ!!!」
カエ「くそっ・・・・全然要領得ねぇ・・・・!」



シロ「ドクツルタケ・・・ドクツルタケ、しっかりして、目を開けて・・・・お願いだよぉっ」
ドク「・・・・・・・・・」
シロ「うっ・・・・ううっ・・・・・」
スギ「スギ・・・わるく、わるくないもん・・・・スギは・・・・スギは・・・・・・」
シロ「ドクツルタケ・・・・っ・・・・ドクツルタケぇっ・・・・」
スギ「でも・・・・でも死んじゃったらどうしよ・・・・ドクツルタケ死んじゃったらどうしよ・・・・」
シロ「や、やめてよ・・・・!」
スギ「ねえどうしよ、どうすればいい?ドクツルタケ死んじゃったら、スギどうすればいいの?ねえシロフクロタケ、どうすればいいの、スギはどうすればいいのぉっ!?」
シロ「やめてってば!!わかんないよ!やだよそんなのわかんないよ!やだよやだよドクツルタケぇっ!!」
ドク「・・・・・・・・・・シロ」
シロ「!!ど、ドクツルタケ!?気がついたのっ!?」
ドク「・・・・・・・スギヒラタケ・・・逃がせ」
スギ「!」
シロ「えっ?な、なに?」
ドク「このままじゃ・・・・警察に・・・・・そいつ・・・・・」
シロ「ドクツルタケ・・・・」
スギ「・・・・・・」
ドク「・・・・・・・・・あと・・・」
シロ「な、なに!?」
ドク「・・・・・今なら・・・・・聞いてくれそうだ・・・から・・・・・・」
シロ「なに・・・・?」
ドク「俺・・・・・おまえのこと・・・・」

ツマ「シロちゃあああああああああああああああああーーーーーんッッッッ!!!!」

シロ「ツマミタケママ!!こっち、こっちだよぉっ!!!!」
ドク「・・・・・・・・・・」
ツマ「ドクツルちゃんッッ!!今お医者さんに連れてったげるわよーぅッッ!!」
カエ「おい、しっかりしろおい!・・・ダメだ、意識なくしてやがる」
シロ「うそっ!?だって今まで・・・ドクツルタケ!やだよぉドクツルタケ!!」
スギ「・・・・・・・」
カエ「!スギヒラタケ」
スギ「!」
カエ「お前ぇいつまでそんなもんぶら下げてやがる!よこせ!」
スギ「あ・・・っ!」
カエ「こんなもん振り回しやがって・・・・とっとと失せろ!!二度とこの近辺うろつくんじゃねえ!!」
スギ「っ!・・・・・」

・・・・・・・

ツマ「ちょっとーぅッ!いいのッ!?あのコ逃がしちゃってッッ!!」
カエ「未練があんならてめえで追いかけな。それよりドクツルタケ運ぶぜ。俺んちだ」
シロ「あ、ありがとうカエンタケぇっ・・・」
カエ「泣くのは医者に診せてからにしろ。急ぐぞ」
シロ「うんっ!」
ツマ「あッ、待ってッ!アンタたち足速いわよーーーぅッッ!!」
スギ「スギね、お散歩してたのよ。そしたらあなたを見つけたの。どこ行くんだろうって思ったの。あなたのことがとっても気になって気になって・・・・昨日からずっと気になってたのよ」
シロ「そ、そうなの?昨日はごめん、ドクツルタケと話してたのに邪魔して」
スギ「いいの。スギ、気にしてないよ?ねえ一緒に歩いていい?どこに行くの?」
シロ「カエンタケの家だよ。昨日あのあとちょっと色々あってさ、お世話になったからお礼言いに行くんだ」
スギ「そうなんだ。シロフクロタケは偉いね。毒キノコとも仲良くしてくれるんだね」
シロ「そんな、そんな差別・・・・しないよ」
スギ「そうなの?」
シロ「うん。もう絶対しないって決めたんだ」
スギ「ふうん・・・そう。じゃあドクツルタケと仲直りした?」
シロ「え?・・・あ!あれは私が悪いんだ」
スギ「なんで?ドクツルタケがあなたを毒にしようとしたのに」
シロ「それは私が先にあいつに変なこと言ったせいなんだ。今日会ったらちゃんと謝って、仲直りするよ」
スギ「・・・・・ふうん・・・・そう」
シロ「スギヒラタケはドクツルタケと仲が良いんだね。昔から?」
スギ「スギはドクツルタケが好きなの」
シロ「そ、そうなんだ」
スギ「昔はおうちが近くだったの。その時は良かったの。だけどスギのおうちだった木が全部腐って崩れちゃったから、お引越ししたのよ。そしたらね、スギ人間に採られるようになった」
シロ「そうなんだ。スギヒラタケはもともと食用だもんね。私も食用だよ。スギヒラタケはどんな料理にされるのが好きだった?私はやっぱりキノコ鍋・・・」
スギ「スギはいや!」
シロ「!」
スギ「人間に採られるのなんていや!いや!いや!」
シロ「そ、そうなんだ・・・・ごめん」
スギ「・・・・・お引越ししてからわかったの。今までスギのところに人間が来なかったのは、スギの棲んでたところがテングタケの土地だったからなのよ」
シロ「テングタケってあの毒キノコの名門の?」
スギ「そうだよ。ドクツルタケもテングタケ科のキノコでしょ」
シロ「そうなの!?」
スギ「知らなかったの?」
シロ「し、知らなかった・・・ていうか考えたことなかった。そうか・・・ドクツルタケ、テングタケ科の・・・」
スギ「ドクツルタケはテングタケの一族の中でもすごく毒の強いキノコなのよ。すごいのよ」
シロ「あいつエリートだったんだ・・・意外!」
スギ「そうなの、ドクツルタケはすごいのよ。うふふふ・・・・・だけどお父さんとケンカして家を飛び出して・・・・・スギがお引越ししたのはそのあと。それから昨日まで会わなかった」
シロ「そうだったのか」
スギ「噂はいっぱい聞いたよ?ドクツルタケがこっちの方で生えてるってことも、シロフクロタケと誤食されるってこともねえ」
シロ「あー・・・ほんとよく間違われるんだ」
スギ「ドクツルタケがかわいそうだねえ。間違って採られるなんて」
シロ「・・・そう、だね」
スギ「でもシロフクロタケはいいね。ドクツルタケと似てたら採られないよねえ?」
シロ「え?あ、うん。そうかな。やっぱり人間も注意する」
スギ「スギはね、似てる毒キノコってあんまり無かったの。ヒラタケもトキイロヒラタケも食用だから。だからひとりになったら誰も守ってくれなくなった。自分で何とかしなくちゃって・・・だから食べて食べて毒になったの」
シロ「・・・・そう言ってたね」
スギ「食べて食べて食べて食べて・・・毒になったらほっとした。スギもう大丈夫だって。・・・だけどね」
シロ「?」
スギ「泣けなくなったの。泣くのが怖いの。泣いたらせっかく溜めた毒が外に出ちゃうよ。食べてる時スギは泣かなかった。それどころじゃなかった。毒になる為に一番大事なことは泣かないことなんだよ。シロフクロタケも泣いちゃダメ。泣かなければ毒になれるよ」
シロ「わ、私は毒にならないよ?」
スギ「なるよ。ドクツルタケがそうするって言ったの、だからなるよ」
シロ「違うんだ。あれはその・・・・私が先にドクツルタケに毒キノコやめろなんて言っちゃったから」
スギ「・・・毒キノコやめる?」
シロ「うん・・・・」
スギ「それ言ったの?シロフクロタケがそれ言ったの?ドクツルタケに?」
シロ「うん・・・・・・」
スギ「ドクツルタケ、それ聞いたときなんて言った?」
シロ「・・・俺が毒キノコやめたら、お前が人間に乱獲されるだろ、って。そう言ってた」
スギ「・・・・・・・・・」
シロ「あいつ優しいんだ。・・・けど!本気だったのかどうかはわかんないなあ、単に色とか形変えるのがめんどくさかっただけかも!」
スギ「・・・・・・そうなんだ」
シロ「あは、ドクツルタケって時々何考えてるかわかんないんだもん。ね?」
スギ「・・・スギにはわかるよ」
シロ「え?」
スギ「ドクツルタケ、毒キノコやめる方法探しに来たんだよ。それでスギのとこに来たんだよ。毒になる方法がわかったら毒やめる方法もわかるかもってそれでスギのところに来たんだよ。そう言ってたよ」
シロ「・・・・・・え・・・・?」
スギ「かわいそうだよねえドクツルタケ。本当にかわいそう。シロフクロタケと間違われて人間に採られるのに、シロフクロタケに毒キノコやめてなんて言われたんだ。シロフクロタケのためなんだ。シロフクロタケのせいなんだ。あなたのせいなんだ」
シロ「スギヒラタケ・・・・?」
スギ「あなたのせいでドクツルタケは傷ついたんだ。あなたのせいでスギのところに来たんだ。あなたのせいでスギのこと嫌いになったんだ。あなたのせいなんだ、全部あなたのせいなんだそうなんだ」
シロ「え・・・・・・え・・・・?」
スギ「大っ嫌い。あんたなんか大っ嫌い。ドクツルタケ返して?スギに返して?ねえ返して?返して?」
シロ「返してって、そんな・・・・」
スギ「返してよぉっ!!ドクツルタケはスギのものだよ!!あんたなんかにあげない!!」
シロ「!!」
スギ「どうしてスギのもの取るの!?どうしてみんなスギのこと嫌いなの!?スギだって嫌いだよ!!シロフクロタケなんか大っ嫌い!!シロフクロタケなんか死んじゃえばいいっ!!」
シロ「スギヒラタケ・・・・・・!」
スギ「死んじゃばいいんだよおおおおおっっ!!!!」
シロ「!!!」
スギ「うわああああっ!!!!!」
ドク「!!シロ・・・・!!!」

 ザシュッ!!

ドク「っ・・・・・!!!」
シロ「!!?」
スギ「・・・・・・ど、ドクツルタ・・・ケ・・・・?」
シロ「ドクツルタケ・・・・な、なんで・・・・?」
ドク「・・・・シロ、お前ケガ、無い・・・・?」
シロ「わ、私は大丈夫・・・・けど・・・・ドクツルタケが・・・・」
ドク「そっか・・・・・・・よかっ・・・・・・・っ・・・・・」
シロ「・・・・ドクツルタケ?ドクツルタケ?ドクツルタケ!おい、ドクツルタケ!!」
スギ「あ・・・・あ・・・・・」
シロ「うそだドクツルタケ!!しっかりしろ!!ドクツルタケっ!!」
スギ「・・・・す、すぎ、わるくない・・・・」
シロ「スギヒラタケ!救急茸呼んで!早く!」
スギ「スギ悪くない・・・!」
シロ「スギヒラタケ早くっ!!」
スギ「シロフクロタケのせいだ!!全部全部シロフクロタケのせいだっ!!スギ悪くないスギ悪くない!!いやいやいやいやあああああああああっ!!!!」
シロ「スギヒラタケ・・・・!!」
スギ「ああああああああああああああああああああああ!!!!!」
シロ「っ!!誰か!誰かあああっ!!」

ツマ「シロちゃんッッ!!!」

シロ「ツマミタケママぁっ!!」
ツマ「どうしたのッ!?どうなってるのッッ!?!?どういうことコレッ!!?」
シロ「ドクツルタケが・・・・ドクツルタケが死んじゃうよぉっ!」
ツマ「ドクツルちゃん!!?ひぃーーーっっ!!ダメよッ!!そんなの絶対ダメッッ!!今すぐ救急茸呼ぶわ呼んでくるわッッ!!ここから一番近いおうちはどこッ!?」
シロ「こ、ここから一番近い・・・・あ!カエンタケ!」
ツマ「カエンタケ!?そうだわすぐに行って来るわシロちゃん!ここ動いちゃダメよッッ!!」
シロ「う、うんっ・・・」
ツマ「すぐ戻ってくるわーーーーッッ!!!」
      


 チュン チュン チュン・・・・

ツマ「シロちゃん、朝よーぅ。起きなさぁーい」
シロ「んー・・・。・・・・・。・・・・・!はっ!こ、ここは・・・!?あたっ!・・・うう~っ・・・」
ツマ「おっはぁー、シロちゃん。頭痛いでしょーぅ?ダメよぅ、もうあんなに飲んじゃあ」
シロ「ツマミタケママ・・・?ここ、お店・・・?」
ツマ「覚えて無いのーぅ?」
シロ「う・・・カラカサタケと、カエンタケと・・・・鍋」
ツマ「そうよーぅ。その後は?」
シロ「・・・・・覚えて無い・・・・」
ツマ「シロちゃんお酒飲んで酔っ払っちゃって、カエンタケにおんぶして帰ってきたのよーぅ?」
シロ「カエンタケにおんぶ!?あたっ・・・!」
ツマ「そうよーぅ?それでおうちに帰りたくないっていうからアタシのお店に連れて来ちゃったのよーぅ?全然覚えてないのぉ?」
シロ「う・・・・うん・・・・・あ、ドクツルタケに怒られたのはなんとなく思い出した・・・」
ツマ「ドクツルちゃんとっても心配してたわよぅ。カエンタケの家からここまで運んでくれたのもドクツルちゃんよぅ?今日もシロちゃん起きるころに迎えに来るって言ってたわよーぅ」
シロ「い、いいよそんな、一本で帰れるよ。ツマミタケママありがとう。ごめんなさい、迷惑かけて・・・」
ツマ「いいのよーぅ。アタシ、シロちゃんのためならなんっっでもしてあげちゃう!朝ごはん作ったのよぅ、食べていってねーぇ?」
シロ「う・・・ええと・・・」
ツマ「二日酔いで食欲無いのかも知れないけどーぅ、ちょっとは食べて行かないとカラダに悪いわよーぅ。菌糸に優しいものばっかりにしたから、ねぇ?」
シロ「・・・うん。ありがとう、ママ」


シロ「ごちそう様でした」
ツマ「おいしかったぁ?その落ち葉汁、ちょっと味濃くなかったーぁ?」
シロ「ううん!おいしかったよ。全部食べちゃった」
ツマ「うふふ、傘色も良くなってきたみたいよーぅシロちゃん。・・・それにしても、ドクツルちゃん遅いわねぇ」
シロ「あ!そうだ!私、昨日カエンタケに連れて来てもらったんだよね!?お礼言いに行かなきゃ!」
ツマ「そんなの後でいいわよーぅ。ここから近いし、ドクツルちゃん待ってからにしなさいよーぅ」
シロ「だ、だめだめ!先に行って来る!私が悪いんだもん、ドクツルタケ一緒に行かすことない!」
ツマ「そんなの今更よーぅ」
シロ「すぐ戻ってくるって、ドクツルタケ来たら伝えて下さい!それじゃ!」
ツマ「あ、シロちゃん!?ちょっとシロちゃんっ!・・・・・行っちゃったわぁ、ンもーぅほんとにシロちゃんたら慌てんぼさんなんだからぁ・・・」


ドク「っ!!はぁっ、はぁっ、悪ぃ寝坊した!ママ、シロフクロタケは!?」
ツマ「あらドクツルちゃん、おっはぁ~」
ドク「おっは・・・よう。あいつはっ?」
ツマ「それがねーぇ、カエンタケのところにお礼言いに行って来るって飛び出してっちゃったのよーぅ。すぐ戻ってくるって言ってたわよーぅ?ついさっきだけど、外で会わなかったぁ?」
ドク「・・・行き違ったか・・・何で待たねんだよあいつ・・・」
ツマ「まあまあドクツルちゃん、ゆっくりしてって。急いで来たんでしょーぅ?朝ごはんまだじゃないのーぅ?落ち葉汁よそうわねーぇ?」
ドク「いや、俺そういうの・・・」
カニ「おっはぁ~ママぁ~」
ツマ「あら、カニノツメじゃないのーぅ、どぉしたのぅこんな早く!」
カニ「うっふ、たまにはお店の仕込み手伝おうと思ったのよ~。エライでショ?・・・・あら?アラアラアラ?あらやだドクツルちゃんじゃないの~!久しぶり~!イヤーン、朝からイイ男~!」
ツマ「ちょっとだめよぅ!ドクツルちゃんはお手つきよッ!汚い手でさわんじゃないのーぅ!」
カニ「えぇ~そんな~ぁ。誰よう、ずるいワ~。・・・あ!もしかしてスギヒラタケ!?イヤーン、ショック!」
ドク「違ぇよ。なんでだよ」
カニ「だって~外にいたわよぉ~?」
ドク「なに?」
カニ「ここ来る途中で見たわよぉ。なんかこんな長い杉の枝持って、ちょっとアブナイ感じィ?アタシあのコあんまり好きじゃないわぁ、良かった~ドクツルちゃんのイイキノコじゃなくて~」
ドク「・・・それ、どこに居たんだ?」
カニ「んっとぉ、向こうのほう~?あっちに行ったみたいよぉ、何かニヤニヤしてて怖かったけどぉ~・・・・あ、ここからだとカエンタケの家の方ねぇ」
ドク「!!!!っ・・・!」
カニ「きゃあっ!ちょ、ちょっとドクツルちゃんっ!?」
ツマ「ドクツルちゃん!ちょっとカニノツメッ!お店頼むワッ!!」
カニ「え!?マ、ママまで、どうしたのよぉ~!?」
ツマ「シロちゃんが大変なのよッッ!!ドクツルちゃん待ってーぇ!!」

・・・・・・・・・

カニ「な・・・・なんなのよぉ一体・・・・」



シロ「えーと、ここを曲がって、と・・・・」
スギ「おはよ」
シロ「!あ、君は」
スギ「スギだよ。ふふ、やっと追いついたよ、シロフクロタケ」
シロ「?」



・・・・・クライマックス突入。
迷ったけど・・・・迷ったけどもう突き進んで書く!
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