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2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
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キノコにはなぜ、洋物のラブソングが似合うんでしょうね。
カエンタケとベニナギナタタケ描いてた時も思ったんですが、ああ・・・この茸にもあの茸にも似合う。

英語でキノコは mushroom ですが、go mushrooming(キノコ狩りに行く) という言葉があることを知り、欧米人とキノコの距離の近さに若干の嫉妬を覚えました。
mushroomにingつけるかああああ!!貴様らそんなにキノコと親しいかああああ!!
日本語は「キノコ狩り」ですよ!キノコの敵みたいじゃない!?キノコと共に楽しむ感じが負けてない!?

自分もうキノコと聖闘士星矢あったら一生楽しく暮らしていける気がします。

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キノコは恐ろしい。色んなキノコを調べつつ徒然にストーリーを想像していると、本気で惚れてしまいそうな奴が出てくる。

今さっきはあるキノコのために号泣してしまった。

お前・・・お前ちょっと切なすぎるよ生き様が。キノコドラマ対象外キノコだけど、時代遅れと言われても男の強がりって美しいと思った。ありがとう。

キノコは恐ろしい。
十年前にカエンタケとベニナギナタタケの馴れ初めは書いてなかったつもりが、今読み直したらしっかり書いてあったことに衝撃を受けました。マジか十年前の私よ。意外とぬかりないな。

そして、「ベニナギナタの切れた鼻緒を継いでやる」という今回最初に考えてボツにしたまさにそのネタを十年前にやってた事にさらに衝撃を受けたんです。うおおお思考回路変わってない!!十年進歩してないってことか!!駄目だな私!!

なぜ今回鼻緒案をボツったかと言いますと、初めての土地に迷い出てヤバそうな男に声をかけたりかけられたりしてそのままついて行く女性、というのに違和感を覚えたからです。
こうして見ると、十年前とはちょっとその辺りの常識がだいぶ変わったんだなあと思います。
もちろん十年前も十分気をつけなければならない事ではあったはずですが、初対面の人に助けを求めることが今ほど危険視されていなかったかなと。
「知らない人についていくな」というのは昔から言われてきたことですが、「知らない人についていった奴が『悪い』」という風潮は、現代ほどは無かった気がします。

それでも今でも私は思うんですが、悪い、というのは違いますよね。
迂闊であり浅はかであるかもしれませんが、悪ではないですよ。「気をつけない方が『悪い』」という言い方は、気持ちの悪い言葉の使い方だと思います。

とはいえ、自衛はしなければいけない。ベニちゃんも、良いとこのお嬢さんだとしても、そこはしっかり締めて行こう。

そんな感じで、二菌の馴れ初めは変わりました。
素敵な出逢いばかりなら、良いのですけれどね。







カエンタケとベニナギナタタケの馴れ初め。
迷子のベニと通りすがりのカエンタケの目が合ったところから始まった。
目ってどこだ。

「!・・・っう」
「・・・怪我してんのか」
「わ、わたくしに構わないで下さいまし」
「菌糸か。見せてみろ」
「い、いやですっ」
「お前さん、この辺のキノコじゃねえな。どっから来た」
「・・・」
「聞いてんだ。答えろ」
「・・・・・・八神原」
「八神原?また随分西じゃねえか。なんだってこんなところに・・・まあそりゃどうでもいい。掴まれ。知り合いに医者がいるから連れてってやる」
「え・・・?」
「こんなところにいたら変形菌に食われるぜ。イタモジホコリより俺が怖いってんなら余計な世話ぁ焼かねえが。歩けるか」
「は、はい。・・・あ、痛っ!」
「・・・。抱くぜ」
「!?きゃっ!」
「お前さん、名は」
「!ベニ、ベニナギナタタケと、申します」
「俺ぁカエンタケだ。・・・まあ、忘れていい」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


十年前から待っていて下さった方は、この二菌の結末どうなったんだという方々ではないでしょうか。
私もそれが十年気になっていた。ならさっさと書けよ。

イタモジホコリというのは変形菌(粘菌)の一種です。
変形菌はキノコのようでキノコとは違う生き物で、子実体を作って胞子を飛ばすというのはキノコと類似していますが、その前に本当に自分で移動します移動能力を駆使してイグノーベル賞を二度も獲っているほど。
一体彼らは植物なのか動物なのか、長年議論になっていたそうですが、ついに近年「変形菌は、変形菌である!」という衝撃的な発見で決着し、変形菌は変形菌として分類されることになりました。これは直感ですが、菌類の学界って絶対どっかおかしい。

ただ、ハマる魅力はわかります。
あるところに下山咲(しもやまさき)という場所がございまして・・・
そこは小さな町でありながら、間隙を縫うように多種多様なキノコが棲息しているのでございます。

キノコの「多種多様」は、人間などには計り知れぬ多種多様。

なんといっても人間には『毒人間』などという種類はありませんでしょうから・・・






菌曜土曜連続ドラマ
キノコな僕ら
第四話「言いたい事も言えないこんな木の下は」


さて。
シロフクロタケが義憤にかられて走りまわっている一方で、どうにもやるせないまま彷徨っているキノコもおりました。
ドクツルタケでございます。

「っだよあいつ・・・」

言いたい事も言えないまま取り残された彼は、シロフクロタケを追いかけたい気持ちはあるものの、どうせ追いついたところでまともな話などできないことは予想がついておりますので、なんとなく彼女の残した菌跡を辿りつつ、ぐずぐず歩いているのでございました。

「そんなに毒キノコが嫌かよ・・・」

と、彼の呟いた言葉は、意外や苔の陰からの低い笑いに迎えられました。

「クッ、嫌なんだろうさ。よっぽどな」
「!?」

驚いてきっと振りむけば、木の根にもたれて焔のごとく赤いキノコが一本。

「カエンタケ」
「よう」

今更説明するまでもございますまい。ここまで散々キノコ達の口の端に上って来た猛毒菌でございます。
尋常な自然物とも思えぬ色形をした彼は、頑丈な革質の肩を揺すって楽しげに言いました。

「シロフクロタケならあっちぃ行ったぜ」
「・・・何の話だよ」
「探してんじゃねえのかい?そのしょぼくれた傘見りゃあ、痴話喧嘩がすぐわかるぜ」
「そんなんじゃねえよ」
「そうかい」

さらさら信じる気のない相槌です。
ドクツルタケはむきになって何かを言いかけましたが、その前にカエンタケがとぼけるように顔を逸らして、

「あっちぃ行って、ベニナギナタ捕まえて何やら話し込んでたぜ。毒だの食だの。おせっかいなガキだ。ったく」
「別に、訊いてない」
「独り言だよ。聞きたくなきゃとっとと失せな」
「・・・・・」

しかしドクツルタケは、結局、聞きたかったのでした。

「・・・毒って、俺の事なにか言ってた?」
「ああ、ドクツルタケは毒キノコだからイヤ、って」
「っ、そうかよ」
「別にそんなこたぁ言ってなかったが。安心しろよ、女二菌でこきおろしてたのはお前さんじゃねえよ。この俺だ」
「・・・・・」
「猛毒だの残酷だの危険だの、散々言ってくれたぜ。ま、陰から聞いてた俺も下衆だが、仕方ねえだろ。出にくいじゃねえか、なあ?」
「・・・なんか、ごめん。俺が謝ることじゃないけど」
「冗談だ。俺ぁベニを連れ戻しに出ただけなんだがな、白いのの前に俺が顔出してオニフスベみてえに怯えさせるのも気の毒だったんで自重しただけさ。まあ、あのホコリタケ崩れよりは柄のしっかりしたキノコみてぇだが、シロフクロタケは。お前さん、そのうち基部に敷かれるぜ」

人間で言うところの、尻に敷かれる、でございます。

「そんなんじゃないし。俺達」

ドクツルタケは否定しながら、自分で密かに傷つきました。
本当にそんなんでは無かったと、さっき知ったところでした。

「オニフスベって、あのでかい奴?あんたなんかしたのかよ」
「別に。来たから追い返した。それだけよ」
「来ただけで追い返すのかよ・・・」
「来ただけで追い返しゃしねえよ。普通はな」
「じゃ、なんだよ」

カエンタケは返事をせず、煙管をゆっくりと吸って、苦い煙を吐きました。
そして話を変えました。

「なあドクツルタケ。難儀なこったなぁお互い。毒キノコってだけで人殺し扱いだ。人間が勝手に食って死んでるだけなのに、喧しいったらありゃしねえ。俺よりお前さんの方が厄介だろう?俺ぁこの通り奇態な見た目だからな。ベニと間違うにしても素人は手をだしゃしねえよ。だが、お前さんはテングタケ科のいい面構えだ。誤食の数も百や二百じゃねえだろう。何人やった?え?」
「やめろよ。俺は、そんな」
「構うこたぁねえだろう。猛毒菌は猛毒菌よ。それで何が悪い。人間は人間、キノコはキノコ、全く別の生き物だ。慣れ合う必要はねえよ」
「それは・・・俺もそうだと思う、けど」
「ときに。スギヒラタケがお前さんに会いたがってたぜ」
「え?」
「聞いてるだろう。あいつのことは」

ドクツルタケは虚をつかれたようにその場にキノコ立ちになりました。
カエンタケは面白そうに眺めています。

「向こうの林に生えてるぜ。会いに行ってやったらどうだ?いい話が聞けるかも知らんぜ」
「いい話、って・・・」
「シロフクロタケを毒にする方法、とかな」
「!!」
「スギヒラタケは食キノコから毒キノコに変異した。そんな噂をお前さんも聞いた事があるだろう。面白そうな話じゃねえか。食キノコが毒キノコとつき合えないってんなら、向こうを変えてやりゃあいい。そうすりゃ毒キノコ同士、めでたしめでたしってわけだ」
「・・・・・」

ドクツルタケはカエンタケのくゆらす煙管の煙をしばし黙って睨んでおりました。
が、やがて、言いました。

「カエンタケ。あんたは、ベニナギナタタケを毒にしたいのか?」
「あ?ベニを?・・・お前さん、勘違いしてるな。あれを毒にしてまで傍に置く理由が俺にはねえ。町に迷って来たから成り行きで面倒見てやってるだけだ。あれに町の土は合わねえ。俺とも合わねえ。じきに山に帰すさ」
「じきって、いつさ」
「別に今日でも、あれが帰ると言やぁ止めやしねえよ。どうせ俺のせいで毎日泣き通してんだ、近いうちに出て行くだろうさ」

とん、とカエンタケは煙管を叩いて角を起こしました。
カエンタケには傘らしい傘は無く、その代わり角があるのでした。

「つまらねえ話だ。俺ぁ行くぜ。スギヒラタケによろしくな」
「・・・会いに行くって言ってない」
「行くさ。お前さんは」
「カエンタケ。あんたに言いたいんだけど」
「ん?」
「うんと好きな奴がいたら、そいつに傷つけられたくらいで、嫌いになったりできないし。ベニナギナタタケは、あんたに言われなきゃ出て行かないぜ。たぶん」
「は?」
「シロがベニナギナタタケのこと気にしてたから。俺が言う義理じゃないけど、言っとく。じゃ」

カエンタケは黙り、ドクツルタケは去りました。

まこと、キノコの世界も、機微の難しいものでございます・・・
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