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2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
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■あらすじ
 鍋ができました。


 グツグツグツ。

シロ「ふぅーん。じゃあ二人はもうずっと昔から知り合いだったんだね」
カラ「そうだね。僕が高校生の時にショウジョウバエに絡まれてたのを助けてもらって以来のつきあいだから、何年になるかなあ。何年だろ、カエンタケ?」
カエ「数えてるかぃ、そんなもん」
カラ「こいつね、恐そうに見えるけど案外面倒見のいい奴なんだよ。山から来たベニちゃんの面倒見てあげてるのも彼だし、僕が受験中だっていうんで煮つまらないように時々こうして遊びに来てくれるし」
シロ「そうなんだ・・・意外だ」
カエ「俺ぁ別にそんなつもりはないがね。家にいづらくなったら転がり込んでるだけだ」
カラ「またベニちゃんとケンカしたんだろ。帰ったら謝っとけよカエンタケ」
カエ「フン」
シロ「カラカサタケは受験生なの?」
カラ「僕?僕は今院生なんだけどね。博士課程を修了したら、富士山に留学したいと思ってるんだ。だからその勉強中」
シロ「富士山!?凄い!何の勉強するの?」
カラ「菌俗学さ。色んな国のいろんな菌類の生活や歴史を研究するんだ。富士山には全国からたくさんのキノコが集まってるから、異文化に触れる機会も多いし、皆と一緒に勉強するのはとても楽しいことだと思うよ。できれば4合目か5合目を狙いたいんだけど、あの辺りは志望率高いから厳しいかなあ」
シロ「そんな!大丈夫だよ!カラカサタケならきっと受かるよ!」
カラ「そ、そうかい?そうかあ・・・・そうだね。シロちゃんに言われるとそんな気がしてくるね!よし、俺がんばるよ!お皿かして?マツボックリ取ってあげる。俺もがんばるから、シロちゃんもいっぱい食べるんだ!」
シロ「うん!」
カエ「・・・・・なんかめでてぇところが似てるなぁ、お前さんら」
二本『え?』
カエ「クッ・・・なんでもねえよ」

カラ「!そういえばシロちゃん!おうちの人に連絡しないと!」
シロ「へ?」
カラ「ご両親と何があったのかはわからないけど家出はよくない。まずは話し合わなきゃ!」
シロ「え、あ」
カラ「とりあえず電話電話ーっと・・・」
シロ「い、家出じゃないから!」
カラ「え?」
シロ「家出なんてしてない!ただちょっと、たまたまこっちの方に来ちゃっただけで!」
カラ「あれ?家出って言わなかったっけ?」
シロ「言ってない言ってない!」
カエ「どうせまたカラカサ、お前が早とちりして捕まえちまったんだろう。誘拐だねえこりゃ」
カラ「ひ、人聞きの悪いこと言うなよ!・・・けどシロちゃん。それなら何で君、一人であんな泣きそうな顔して歩いてたんだい?」
シロ「!・・・・・・・・」
カラ「シロちゃん?」
シロ「・・・・・・・・」
カラ「あれ?シロちゃん?え、あ、落ち込んじゃった?うそ、僕なんかまたひどい事言った?か、カエンタケ、俺またなんかやった!?俺やっちゃった!?」
カエ「やっちまったかねえ。おいシロいの。お前ぇドクツルタケとケンカでもしたか」
シロ「!!」
カエ「図星か。わかり易いキノコだ」
カラ「え!?シロちゃんも誰かとケンカしたの!?」
シロ「・・・・・だって。ドクツルタケが悪いんだ」
カラ「だめだよ仲良くしなきゃあ」
カエ「黙ってろカラカサ。まあ飲め、シロいの。何があったんだ?ん?」
カラ「カエンタケ!こんな時間に女の子にお酒飲ますなんて・・・!」
カエ「かてぇこと言うな。ちっとだけだ。お前も飲めほら」
カラ「受験中は禁酒!シロちゃんも無理しちゃだめだよ?ほら、ケヤキジュースもあるからこっち飲・・・あ!」
シロ「っ!」
カエ「おー、イケる口じゃねえか。そらもう一杯」
カラ「カエンタケ!」


カエ「・・・・ほぉードクツルタケがねえ」
シロ「それで、それで、スギヒラタケはドクツルタケが私を毒にしようとしてるんだって言って、それで」
カラ「シロちゃんを毒にだなんて・・・・」
シロ「そんなの嘘だって思って・・・だけどドクツルタケは全然慌てたりしてなくて!きっと本当に私のこと毒になればいいと思ってるんだ!ドクツルタケの馬鹿キノコ!」
カエ「なるほどねぇ。まさか本当に行くたぁねえ」
シロ「?」
カエ「面白ぇ野郎だな、奴ぁ」
カラ「・・・どういうことだ?カエンタケ。あ!まさか君!」
カエ「クッ、いやぁあの無表情な野郎が珍しくしかめっ面なんざして歩いてるからちょいとからかってみたんだがな。誤食が嫌ならシロフクロタケを毒に変えちまえって」
シロ「・・・なんだって?」
カエ「方法ならスギヒラタケが知ってるだろうって、まあそんなところさ。本当に行くとは思わなかったがなぁ」
シロ「ひどい・・・!」
カラ「おい、ひどすぎるぞカエンタケ!!食用キノコを毒にしようだなんて、キノコを何だと思ってるんだ!!」
カエ「お前も食用だったなそういえば」
カラ「ああ、俺は幼菌をフリッターにすると美味いらしい・・・・じゃない!可哀想だろシロちゃんが!毒キノコになれなんて言われたら俺だって怒るし傷つく!君だってそうだろ?毒キノコやめろなんて言われたら嫌だと思うだろ!?キノコを否定するなんて最低だぞ!」
シロ「!」
カラ「キノコは毒も食もよくわからないのも色々いるからキノコなんだ!毒キノコには毒キノコの、食キノコには食キノコの尊重すべき菌格ってものがある!それは一つ一つ全部が美しいんだ!是も非も無い!そんなこともわからないなら、君も菌俗学を勉強して富士山5合目を目指せ!」
シロ「・・・・・・」
カラ「まったく!シロちゃん?カエンタケの言ったことなんて気にする必要ないよ。そのドクツルタケくんにだって僕から言ってあげる。ね?シロちゃん」
シロ「・・・・・う、ふぇ・・・」
カラ「ん?どうしたのシロちゃん?」
シロ「うえぇぇぇ・・・っ!」
カラ「!!え!?なに!?どうしたの!?なんで泣くの!?」
シロ「うぇぇぇっ!うわああああんっ!!」
カラ「あ、ちょ、これ『鬼柳』一升空いてない!?いつのまにこんなに飲んだのシロちゃん!」
カエ「おー、どおりで減るのが早ぇと思った」
シロ「うわああああん!うわああああんっ!」
カエ「ど、どうしよう、女の子泣かしちゃった!どう慰めたらいいんだカエンタケ!あ、そうだ飴あるよシロちゃん、クヌギ樹液飴!実家から送ってきたんだけど美味いよー食べる?だめ?じゃあええとええと、そうだキンテンドーDSやる!?今充電するからほら!」
カエ「受験生が何買ってんだ」
カラ「いや『カビ語漬け』やりたかったから・・・・そ、そうだあシロちゃん!DVD見よう!名作あるぞぉ『13日の菌曜日』!!」
カエ「んなもん見せたら余計なくわな。しょうがねえな・・・おい、シロフクロタケ。うるせえから泣き止め」
シロ「う、うえっ、ふえええっ」
カエ「泣いてちゃわかんねえだろうよ、カラカサはアホだ。何で泣いてンのかちゃんと口で言えや。幼菌じゃあるめえしよ」
カラ「カ、カエンタケ・・・」
シロ「・・・・・・いっ、いっちゃった・・・」
カラ「え?なに?シロちゃん、なに?」
シロ「ドク、ツルタケ、に、毒、キノコ、やめろ、て、言っちゃ、た・・・・」
カラ「え!?」
シロ「わた、私のほうが、先に、言ったんだ・・・・だから、ドクツルタケ、きっと、怒って、あんな、こと・・・・うぇ、うえぇぇぇぇんっ!」
カエ「・・・・・・・・・・・」
カラ「そ、そうだったんだ・・・・。でも、でもさ、シロちゃんには全然悪気はなかったんだろ?そうだろ?」
カエ「キノコを否定するなんざあ最低だなあ」
カラ「カエンタケーっ!!」
カエ「お前ぇが言ったんじゃねえか」
カラ「そういう意味で言ったんじゃない!!」
カエ「ならどういう意味だ」
カラ「シロちゃん!ドクツルタケくんだってわかってくれる!きっともう怒ってない!ね?ほら、よく考えてみれば君らおあいこってことじゃん!仲が良いほどケンカする!雨降って地固まってキノコ生えるってことだよ!カエンタケとベニちゃんだってそうだろ!?そうだね!?」
カエ「俺らぁ違う」
カラ「カエンタケーっ!!」
カエ「うるせえなあほんとお前・・・鍋煮詰まるから火ぃ消すぜ」
カラ「鍋なんかどうだっていいだろ!シロちゃん、ごめんねごめんね、俺ほんっっっとデリカシー無くて!」
カエ「お前ぇに無ぇのは落ち着きだよアホカサ。ほっとけほっとけ、酒の涙なんざそのうち乾く」
カラ「カエンタケーっ!!」
カエ「うるせぇー・・・・」



・・・・居心地良さそうだなあカラカサの家・・・・

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