2007年1月8日設置
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あるところに下山咲(しもやまさき)という場所がございまして・・・
人間達が人間らしく住んでおりますその一方で、キノコ達がキノコらしく暮らしておりました。
「キノコらしく」というのがどういうことか、人間はあまり知らないようですが・・・
例えば、キノコらしく走ったり、キノコらしくしゃべったり、
キノコらしく愛したり、キノコらしく報われなかったり。
そんな事でございます。
菌曜連続深夜ドラマ
キノコな僕ら
第七話「もつれる関係」
ドクツルタケとスギヒラタケが軋む会話をかわしていたその杉林に、今また一本のキノコが近付きつつありました。
シロフクロタケでございます。
「ドクツルタケ・・・どこだろ」
手入れの悪い杉林は木も落葉もあらかた腐っております。
シロフクロタケは腐生菌でしたが、木よりも草の枯れたのの方が好きな性質でございましたので、墓標のように立ち枯れた木々の光景はどうにも居心地悪く感じました。
日も沈みかけております。
ここは手っ取り早く、「ドクツルタケ」と声を上げて呼んでみたほうが良いかもしれません。
「どく・・・」
彼女が言いかけた、その時でした。
左手の木の後ろから、キノコの声が聞こえました。
「・・・でも、どうしてそんなこと、知りたかったの?」
初めて聞く高い声でした。
シロフクロタケはそっとそちらへ行ってみました。
「スギのことが知りたかったから?そうなのね?」
木の陰から覗いてみると、ふうわりと白く傘を重ねた可愛らしいキノコがおりました。
そして彼女が笑顔で身を寄せて話しかけているのは、こちらにだいぶ背中を向けてはいますが、確かにドクツルタケなのでした。
彼は何か言ったようでした。可愛いキノコの笑顔が宙ぶらりんのようになりました。
シロフクロタケは柄を固くして息をひそめました。なんとなく、そうしなければいけないような気がしたのです。
「・・・違うの?じゃあなんで?なんで毒になる方法なんて聞くの?聞いてどうするの?」
「別に、どうもしない」
「嘘だよ」
ドクツルタケが少し身じろぎしたのが見えました。相手は、けれどすぐに前以上にくっついたようでした。
「だってそうじゃなきゃこんなとこに来ないでしょう?ね?・・・それとも、本当にスギに会いたかっただけなのかな?そうだったら嬉しいな。スギねえ、ドクツルタケが大好きなの。とってもとっても、だあい好きなのよ」
「・・・それはさっきも聞いた」
「何度だって言うよ。ドクツルタケが嬉しいって笑うまで言うよ。スギはドクツルタケが好き。大好き。大好き。大好き。大好き。好き好き好き好き好き好き・・・」
「やめろ」
「すきすきすきすきすきすき」
「やめろって」
「すきすきすき!!じゃあドクツルタケも言ってよ!嬉しいって笑って、スギのこと好きだって言って!なんでそんな顔してるの?スギに会いに来たんでしょう?スギのこと聞きにきたんでしょう?スギのこと好きだからなんでしょう?そうだよねえっ!?」
「・・・・・・」
「なんで黙るの?スギのこと嫌いなの?スギが毒になったから嫌いなの?じゃあ昔は好きだった?スギのこと好きだった?ねえドクツルタケ、答えて?ねえ、ねえ、ドクツルタケ、ねえっ!」
「・・・・・・」
「ドクツルタケぇっ・・・!」
こんな状況に傘をつっこめるキノコはおりません。比較的基部の図太いシロフクロタケであっても、さすがにそれは無理でした。
しかし、ツバの外れたようにドクツルタケに訴えている声は、甘いようで、なのにとても必死な怖い響きを持っていたのです。シロフクロタケは思わず身震いしました。菌糸の先まで震えました。
それがいけなかったのでしょう。
彼女の足元の落ち葉が、がさりと音を立てました。
「!だあれ?」
可愛いキノコがこちらを向きました。ドクツルタケも振りむきました。
隠れる暇などありません。
シロフクロタケはおずおずと、木の陰から出て行くしかありませんでした。
「あの・・・こん、にちは」
「・・・・・・」
ドクツルタケが何とも言えない顔をしてなにかを言いかけました。
が。
「こんにちは。スギだよ。スギヒラタケっていうの。あなた、だあれ?」
スギヒラタケの方がわずかに早くシロフクロタケとの会話を取ってしまいました。
「私は、シロフクロタケ」
「シロフクロタケ。ふうん?初めまして。どうしたの?スギに会いに来たの?」
「いや、私は、ドクツルタケがこっちに来たって聞いたから・・・いるかなって」
「いるよ。ここに」
「うん、いるね・・・」
「・・・シロ。お前何しに来た」
「えっと、話すと長いんだけど」
「聞くから手短に話せ」
「え!?え、ええと、うん、じゃあええと・・・」
シロフクロタケは話しました。
松の木の下でドクツルタケと別れてから、まずはオニフスベに会った事。
彼の話を聞いてカエンタケに怒り、ベニナギナタタケに会いに行ったこと。
けれどベニナギナタタケの話を聞いて、カエンタケに対する怒りがぐらついてしまったこと。
その後ツマミタケに会ったこと。
そしてツマミタケの話を聞いて、ドクツルタケを止めに来たこと・・・
「俺を止める?なんで」
「え?なんでって・・・それは・・・・・・」
「・・・・スギのせいでしょ」
と、言葉を濁したシロフクロタケをにこにこ眺めながらスギヒラタケが言いました。
「スギに会うのがダメだって言われたんでしょ。わかるよ、今はスギのこと皆そういうから」
「あ、いや・・・」
「でももう遅いよ。ドクツルタケはスギに会っちゃったもん。帰さないよ。ドクツルタケ『が』スギに会いに来てくれたんだよ。スギのことが好きなの。そうね?ドクツルタケ?」
「・・・・・・・」
「また黙るの?・・・・・。あー、そっかぁ。スギ、わかっちゃったあ」
スギヒラタケはわざとらしくクスクス笑って、シロフクロタケを横目で見ました。
シロフクロタケはまた少し震えました。
「な、なに?」
「うふふ、そっかぁ。そうなんだぁ」
「なに?なんなのかな。言いたい事あるなら、はっきり言ってよ」
「シロフクロタケのためね?ドクツルタケ、そうね?」
「え?ドクツルタケ、何が?何の話?」
「・・・・なんでもない」
「なんでもないって・・・」
「スギが教えてあげる!あのねえ、ドクツルタケはスギのところにお話聞きにきたんだよ。スギがどうやって毒キノコになったのかって。毒になる方法が知りたかったんだよねえ?」
「・・・やめろ」
「それってシロフクロタケのためなのね?シロフクロタケ、食キノコでしょう?毒の感じがしないもん。ドクツルタケはもう毒キノコなのに、なんで毒になる方法を知りたいんだろうって、スギちょっと不思議だったの。でも、シロフクロタケのためだったのね。シロフクロタケを毒に変えたいんだよね。そうね?」
「違う」
ドクツルタケは即座に否定しました。しかし。
「・・・・・・え?」
シロフクロタケは既に、杉の枝で傘を殴られたような衝撃を受けてしまっておりました。
「どういうこと・・・?」
「おい、違うぞ。俺はそんなこと思ってない」
「スギねえ、教えてあげたよ。毒になるには悪い物をいっぱいいっぱい食べるの。だからドクツルタケは、これからシロフクロタケに悪い物をい~~~~~っぱい!食べさせるよ。そうねえ?」
「違う!」
「そんな・・・ドクツルタケが私にそんなこと・・・嘘、だよね?ドクツルタケ」
「当たり前だ、嘘に決まってるだろこんな!」
「信じない・・・そんなこと、絶対信じない・・・」
「シロ?おいシロ。ちょっと落ち着いて話聞けよ。俺がここに来たのは」
「絶対絶対信じない!!ドクツルタケの馬鹿キノコーーーーっ!!」
「思いっきり信じてんじゃねえか!!!待てよ!待てって!!お前、他菌の言うこと全部聞いてここまで来たくせに、何で俺の話だけ聞かねえの!?待てってシローーーっ!!」
シロフクロタケは待ちませんでした。
ドクツルタケは追いかけようとしましたが、スギヒラタケがすがりついて離れないので止まるしかありませんでした。
「だめだよドクツルタケ。もう行っちゃったよう。追いかけても無駄だよ。ね?スギと一緒にいよう?」
「っ!離せよ!!」
「シロフクロタケなんてほっとこうよ。シロフクロタケはドクツルタケのこと好きじゃないよ。信じてもいないよ。ね?スギはドクツルタケが好きだし、ドクツルタケのこと信じてる。スギのこと好きだって信じてる。だからそばにいて?好きって言ってそばにいて?」
「言わねえし!そんなに言って欲しきゃツクツクボウシにでも頼め!」
「スギはドクツルタケじゃなきゃ嫌!」
「俺だってあいつじゃなきゃ嫌だ!」
「!・・・・」
「なんだよ。悪いかよ!」
「シロフクロタケが好き?」
「別にっ」
「じゃあ、じゃあね、いいよ、スギ手伝ってあげる。シロフクロタケを毒にするの、手伝ってあげるよ。それでいいでしょ。だから一緒にいて?行かないで?スギ、ドクツルタケのしたいこと全部叶えてあげる!だから一緒にいて!もうひとりにしないでよう!」
「俺がいつあいつを毒キノコにしたいっつった!?するわけないだろ!っつーか無理!あんな菌髄反射で動くキノコが毒とか絶対無理だから!!」
「毒キノコにしたくないの?じゃあ、なんで・・・」
「毒にする方法があるなら、毒やめる方法もあるかもしれないと思ったんだよ!ああもう、離せ!」
ドクツルタケはスギヒラタケを振り切って走り去りました。もうとうに、シロフクロタケの傘は見えなくなっておりましたが、彼は必死に追いかけるのでした。
とりのこされたスギヒラタケは、呆然と立ちすくんでおります。
「毒、やめるって・・・なんで・・・ドクツルタケが毒やめたい、の?そんな・・・嘘だよ。だってそれじゃあスギは・・・スギは・・・・・・・」
まるでややこしい菌糸のように、キノコ達の関係はもつれ絡まるばかり。
まことキノコとは愛憎渦巻く生き物でございます・・・
人間達が人間らしく住んでおりますその一方で、キノコ達がキノコらしく暮らしておりました。
「キノコらしく」というのがどういうことか、人間はあまり知らないようですが・・・
例えば、キノコらしく走ったり、キノコらしくしゃべったり、
キノコらしく愛したり、キノコらしく報われなかったり。
そんな事でございます。
菌曜連続深夜ドラマ
キノコな僕ら
第七話「もつれる関係」
ドクツルタケとスギヒラタケが軋む会話をかわしていたその杉林に、今また一本のキノコが近付きつつありました。
シロフクロタケでございます。
「ドクツルタケ・・・どこだろ」
手入れの悪い杉林は木も落葉もあらかた腐っております。
シロフクロタケは腐生菌でしたが、木よりも草の枯れたのの方が好きな性質でございましたので、墓標のように立ち枯れた木々の光景はどうにも居心地悪く感じました。
日も沈みかけております。
ここは手っ取り早く、「ドクツルタケ」と声を上げて呼んでみたほうが良いかもしれません。
「どく・・・」
彼女が言いかけた、その時でした。
左手の木の後ろから、キノコの声が聞こえました。
「・・・でも、どうしてそんなこと、知りたかったの?」
初めて聞く高い声でした。
シロフクロタケはそっとそちらへ行ってみました。
「スギのことが知りたかったから?そうなのね?」
木の陰から覗いてみると、ふうわりと白く傘を重ねた可愛らしいキノコがおりました。
そして彼女が笑顔で身を寄せて話しかけているのは、こちらにだいぶ背中を向けてはいますが、確かにドクツルタケなのでした。
彼は何か言ったようでした。可愛いキノコの笑顔が宙ぶらりんのようになりました。
シロフクロタケは柄を固くして息をひそめました。なんとなく、そうしなければいけないような気がしたのです。
「・・・違うの?じゃあなんで?なんで毒になる方法なんて聞くの?聞いてどうするの?」
「別に、どうもしない」
「嘘だよ」
ドクツルタケが少し身じろぎしたのが見えました。相手は、けれどすぐに前以上にくっついたようでした。
「だってそうじゃなきゃこんなとこに来ないでしょう?ね?・・・それとも、本当にスギに会いたかっただけなのかな?そうだったら嬉しいな。スギねえ、ドクツルタケが大好きなの。とってもとっても、だあい好きなのよ」
「・・・それはさっきも聞いた」
「何度だって言うよ。ドクツルタケが嬉しいって笑うまで言うよ。スギはドクツルタケが好き。大好き。大好き。大好き。大好き。好き好き好き好き好き好き・・・」
「やめろ」
「すきすきすきすきすきすき」
「やめろって」
「すきすきすき!!じゃあドクツルタケも言ってよ!嬉しいって笑って、スギのこと好きだって言って!なんでそんな顔してるの?スギに会いに来たんでしょう?スギのこと聞きにきたんでしょう?スギのこと好きだからなんでしょう?そうだよねえっ!?」
「・・・・・・」
「なんで黙るの?スギのこと嫌いなの?スギが毒になったから嫌いなの?じゃあ昔は好きだった?スギのこと好きだった?ねえドクツルタケ、答えて?ねえ、ねえ、ドクツルタケ、ねえっ!」
「・・・・・・」
「ドクツルタケぇっ・・・!」
こんな状況に傘をつっこめるキノコはおりません。比較的基部の図太いシロフクロタケであっても、さすがにそれは無理でした。
しかし、ツバの外れたようにドクツルタケに訴えている声は、甘いようで、なのにとても必死な怖い響きを持っていたのです。シロフクロタケは思わず身震いしました。菌糸の先まで震えました。
それがいけなかったのでしょう。
彼女の足元の落ち葉が、がさりと音を立てました。
「!だあれ?」
可愛いキノコがこちらを向きました。ドクツルタケも振りむきました。
隠れる暇などありません。
シロフクロタケはおずおずと、木の陰から出て行くしかありませんでした。
「あの・・・こん、にちは」
「・・・・・・」
ドクツルタケが何とも言えない顔をしてなにかを言いかけました。
が。
「こんにちは。スギだよ。スギヒラタケっていうの。あなた、だあれ?」
スギヒラタケの方がわずかに早くシロフクロタケとの会話を取ってしまいました。
「私は、シロフクロタケ」
「シロフクロタケ。ふうん?初めまして。どうしたの?スギに会いに来たの?」
「いや、私は、ドクツルタケがこっちに来たって聞いたから・・・いるかなって」
「いるよ。ここに」
「うん、いるね・・・」
「・・・シロ。お前何しに来た」
「えっと、話すと長いんだけど」
「聞くから手短に話せ」
「え!?え、ええと、うん、じゃあええと・・・」
シロフクロタケは話しました。
松の木の下でドクツルタケと別れてから、まずはオニフスベに会った事。
彼の話を聞いてカエンタケに怒り、ベニナギナタタケに会いに行ったこと。
けれどベニナギナタタケの話を聞いて、カエンタケに対する怒りがぐらついてしまったこと。
その後ツマミタケに会ったこと。
そしてツマミタケの話を聞いて、ドクツルタケを止めに来たこと・・・
「俺を止める?なんで」
「え?なんでって・・・それは・・・・・・」
「・・・・スギのせいでしょ」
と、言葉を濁したシロフクロタケをにこにこ眺めながらスギヒラタケが言いました。
「スギに会うのがダメだって言われたんでしょ。わかるよ、今はスギのこと皆そういうから」
「あ、いや・・・」
「でももう遅いよ。ドクツルタケはスギに会っちゃったもん。帰さないよ。ドクツルタケ『が』スギに会いに来てくれたんだよ。スギのことが好きなの。そうね?ドクツルタケ?」
「・・・・・・・」
「また黙るの?・・・・・。あー、そっかぁ。スギ、わかっちゃったあ」
スギヒラタケはわざとらしくクスクス笑って、シロフクロタケを横目で見ました。
シロフクロタケはまた少し震えました。
「な、なに?」
「うふふ、そっかぁ。そうなんだぁ」
「なに?なんなのかな。言いたい事あるなら、はっきり言ってよ」
「シロフクロタケのためね?ドクツルタケ、そうね?」
「え?ドクツルタケ、何が?何の話?」
「・・・・なんでもない」
「なんでもないって・・・」
「スギが教えてあげる!あのねえ、ドクツルタケはスギのところにお話聞きにきたんだよ。スギがどうやって毒キノコになったのかって。毒になる方法が知りたかったんだよねえ?」
「・・・やめろ」
「それってシロフクロタケのためなのね?シロフクロタケ、食キノコでしょう?毒の感じがしないもん。ドクツルタケはもう毒キノコなのに、なんで毒になる方法を知りたいんだろうって、スギちょっと不思議だったの。でも、シロフクロタケのためだったのね。シロフクロタケを毒に変えたいんだよね。そうね?」
「違う」
ドクツルタケは即座に否定しました。しかし。
「・・・・・・え?」
シロフクロタケは既に、杉の枝で傘を殴られたような衝撃を受けてしまっておりました。
「どういうこと・・・?」
「おい、違うぞ。俺はそんなこと思ってない」
「スギねえ、教えてあげたよ。毒になるには悪い物をいっぱいいっぱい食べるの。だからドクツルタケは、これからシロフクロタケに悪い物をい~~~~~っぱい!食べさせるよ。そうねえ?」
「違う!」
「そんな・・・ドクツルタケが私にそんなこと・・・嘘、だよね?ドクツルタケ」
「当たり前だ、嘘に決まってるだろこんな!」
「信じない・・・そんなこと、絶対信じない・・・」
「シロ?おいシロ。ちょっと落ち着いて話聞けよ。俺がここに来たのは」
「絶対絶対信じない!!ドクツルタケの馬鹿キノコーーーーっ!!」
「思いっきり信じてんじゃねえか!!!待てよ!待てって!!お前、他菌の言うこと全部聞いてここまで来たくせに、何で俺の話だけ聞かねえの!?待てってシローーーっ!!」
シロフクロタケは待ちませんでした。
ドクツルタケは追いかけようとしましたが、スギヒラタケがすがりついて離れないので止まるしかありませんでした。
「だめだよドクツルタケ。もう行っちゃったよう。追いかけても無駄だよ。ね?スギと一緒にいよう?」
「っ!離せよ!!」
「シロフクロタケなんてほっとこうよ。シロフクロタケはドクツルタケのこと好きじゃないよ。信じてもいないよ。ね?スギはドクツルタケが好きだし、ドクツルタケのこと信じてる。スギのこと好きだって信じてる。だからそばにいて?好きって言ってそばにいて?」
「言わねえし!そんなに言って欲しきゃツクツクボウシにでも頼め!」
「スギはドクツルタケじゃなきゃ嫌!」
「俺だってあいつじゃなきゃ嫌だ!」
「!・・・・」
「なんだよ。悪いかよ!」
「シロフクロタケが好き?」
「別にっ」
「じゃあ、じゃあね、いいよ、スギ手伝ってあげる。シロフクロタケを毒にするの、手伝ってあげるよ。それでいいでしょ。だから一緒にいて?行かないで?スギ、ドクツルタケのしたいこと全部叶えてあげる!だから一緒にいて!もうひとりにしないでよう!」
「俺がいつあいつを毒キノコにしたいっつった!?するわけないだろ!っつーか無理!あんな菌髄反射で動くキノコが毒とか絶対無理だから!!」
「毒キノコにしたくないの?じゃあ、なんで・・・」
「毒にする方法があるなら、毒やめる方法もあるかもしれないと思ったんだよ!ああもう、離せ!」
ドクツルタケはスギヒラタケを振り切って走り去りました。もうとうに、シロフクロタケの傘は見えなくなっておりましたが、彼は必死に追いかけるのでした。
とりのこされたスギヒラタケは、呆然と立ちすくんでおります。
「毒、やめるって・・・なんで・・・ドクツルタケが毒やめたい、の?そんな・・・嘘だよ。だってそれじゃあスギは・・・スギは・・・・・・・」
まるでややこしい菌糸のように、キノコ達の関係はもつれ絡まるばかり。
まことキノコとは愛憎渦巻く生き物でございます・・・
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