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2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
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■前回のあらすじ
ドクツルタケに毒キノコをやめるように言ったのは自分・・・・
キノコとして最低な行為をしてしまったと気づくシロフクロタケ。
押し寄せる後悔と酒の波は大粒の涙となって少女の傘を伝う。
どう慰めればいいのかわからないカラカサタケは部屋中のあらゆるものをかき集めたが、一人暮らしの独キノコの部屋に異性の喜びそうな物など何一つなかった。


カラ「・・・・シロちゃん、寝ちゃったね」
カエ「あれだけ泣きゃぁ疲れもするさ」
カラ「うん・・・遠くから歩いて来たみたいだしね。このまま寝かしといてあげよう」
カエ「やれやれ。もたれかかられちまって、重くないのかいお前さん」
カラ「平気だよ。俺だってそこまでヤワじゃないさ。ふふ、可愛いなあ、ヨダレ垂らしてる。・・・いい子だね、この子」
カエ「ハタ迷惑なガキだ」
カラ「そう言うなよ。ドクツルタケくんとケンカしたのがよっぽどショックだったんだ。カエンタケ、彼と知り合いなら仲直りさせてあげてくれよ?な?」
カエ「何で俺が。ほっといてもまたくっつくだろうよその二人は」
カラ「そうかい?・・・そうだね、シロちゃんの友達だもん、きっと良いキノコだろうな。俺も富士山行く前に会ってみたいけど」
カエ「おうおう、もう受かったつもりかい」
カラ「受かるさ。親に無理行って行かせてもらうんだ、そのくらいはちゃんとするよ」
カエ「立派だねぇ」
カラ「知らないことを知るのが好きなんだねきっと。それがどんなことでも知らないよりは知った方が前に進める気がするのさ。そりゃその分踏み越えなきゃならないことも増えるけど・・・そうする価値があるんじゃないかな、生きるって事には」
カエ「フン・・・」
カラ「スーパーキノコっていただろ昔。どこからともなく生えてきてピンチを救ってくれる奴。幼菌の頃なんかいじめられるたびにスーパーキノコが来てくれないかと思ったもんだけど、成長してわかってきた。シロちゃんみたいな一生懸命なキノコを見たら、誰だって助けてあげたいって思うんだ。本気で助けてって言えたら、誰かはきっと助けてくれるんだ。落とした財布拾ってくれたり、道わからなくて教えてもらったり、ショウジョウバエから助けてくれたり、さ。スーパーキノコなんて俺が思ったよりたくさんいて、ついでに俺も、たぶん誰かのそれになれるのさ。そんなこんなで俺は生きることが気に入ってるんだ」
カエ「シチめんどくせぇ話だ」
カラ「誰だってその気になれば誰かを幸せにすることもできるし、誰かに幸せにしてもらうこともできるってこと。俺の言ってる意味わかる?カエンタケ」
カエ「さあな」
カラ「ベニちゃん。このままじゃだめだろ。一度ちゃんと話し合うんだ。相手のためを思っていても、口に出さなきゃ伝わらないことがある。スーパーキノコだってレンガを叩かなきゃ生えてこない。生えてこないのをキノコのせいにするわけにいかないだろ?伝わらない手段をいつまでも繰り返すのは、本当のアホタケのすることだよ」
カエ「・・・・・・・・」
カラ「頼むよ、カエンタケ。このままじゃ俺、受かっても富士山行けないよ。二本のことが気になって、研究所でもなんかやらかしちゃうって」
カエ「・・・・・フ、違ぇねえ」
カラ「だろ?」
カエ「敵わねえなぁ」
カラ「じゃあ!」
カエ「まあやってみるさ。お前ぇの親に恨まれるのはゴメンだ。だが期待はするなよ?俺ぁこう見えて器用じゃねえんだ」
カラ「よく言うよ。女の子には君のほうがよっぽど長けてるくせに」
カエ「それも違ぇねえ」
カラ「ふふ」
カエ「さて、と。長居したな。そろそろ帰るぜ。シロフクロタケはここに泊めるんだろ?それじゃあな・・・・」
カラ「!!?ちょ、ちょっと待って!!」
カエ「!?」


カエ「このまま寝かせとけっつったのはお前ぇだろうが」
カラ「そういう意味じゃない!泊めるのはさすがにだめだ!女の子を朝帰りさせる気か!?」
カエ「この様子じゃ昼まで寝るだろうよ」
カラ「そういう問題じゃないだろ!!カエンタケ、シロちゃんち近くなんだろ?送ってくんだ!君が!」
カエ「近くかどうかなんか知るかぃ、何で俺がこいつの家を知ってんだ」
カラ「知らなければシロちゃんに聞け!とにかくこの子は家に帰すから!シロちゃん!起きるんだシロちゃん!このまま寝てたら危険だ!」
シロ「・・・・・んー・・・?」
カラ「いいかい、シロちゃん。カエンタケが送ってってくれるから君はおうちに帰るんだ。いいね?」
シロ「カエンタケ・・・・?」
カラ「そう!」
シロ「やだ・・・・カエンタケこわい・・・・」
カエ「だとさ」
カラ「大丈夫だシロちゃん!おんぶしていけば顔は見えないから!」
カエ「おんぶ・・・!?」
カラ「いいだろそのくらい。そもそもシロちゃんがここに来たのもこんなに酔っ払ったのも元をただせば君が原因じゃないか」
カエ「だからってなあ」
カラ「さ、シロちゃん立って。カエンタケは後ろ向いて!しゃがんで!」
カエ「・・・・・へいへい・・・・」


カエ「・・・・意外と重いぜこいつ。中実だ」
カラ「じゃあね、シロちゃん。また今度一緒に遊ぼうね」
シロ「うん・・・・ありがとう、カラカサタケ」
カラ「カエンタケ、頼んだよ。ベニちゃんのこともね」
カエ「しつけえぞ」
カラ「じゃあまたね。二本とも気をつけて」



・・・・・・・・失った絵の一枚は、自分にもたれて眠るシロをカラカサタケがあたたかく見守る図、でした。
カラカサタケはメガネを自分の服の裾で拭く。
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■あらすじ
 鍋ができました。


 グツグツグツ。

シロ「ふぅーん。じゃあ二人はもうずっと昔から知り合いだったんだね」
カラ「そうだね。僕が高校生の時にショウジョウバエに絡まれてたのを助けてもらって以来のつきあいだから、何年になるかなあ。何年だろ、カエンタケ?」
カエ「数えてるかぃ、そんなもん」
カラ「こいつね、恐そうに見えるけど案外面倒見のいい奴なんだよ。山から来たベニちゃんの面倒見てあげてるのも彼だし、僕が受験中だっていうんで煮つまらないように時々こうして遊びに来てくれるし」
シロ「そうなんだ・・・意外だ」
カエ「俺ぁ別にそんなつもりはないがね。家にいづらくなったら転がり込んでるだけだ」
カラ「またベニちゃんとケンカしたんだろ。帰ったら謝っとけよカエンタケ」
カエ「フン」
シロ「カラカサタケは受験生なの?」
カラ「僕?僕は今院生なんだけどね。博士課程を修了したら、富士山に留学したいと思ってるんだ。だからその勉強中」
シロ「富士山!?凄い!何の勉強するの?」
カラ「菌俗学さ。色んな国のいろんな菌類の生活や歴史を研究するんだ。富士山には全国からたくさんのキノコが集まってるから、異文化に触れる機会も多いし、皆と一緒に勉強するのはとても楽しいことだと思うよ。できれば4合目か5合目を狙いたいんだけど、あの辺りは志望率高いから厳しいかなあ」
シロ「そんな!大丈夫だよ!カラカサタケならきっと受かるよ!」
カラ「そ、そうかい?そうかあ・・・・そうだね。シロちゃんに言われるとそんな気がしてくるね!よし、俺がんばるよ!お皿かして?マツボックリ取ってあげる。俺もがんばるから、シロちゃんもいっぱい食べるんだ!」
シロ「うん!」
カエ「・・・・・なんかめでてぇところが似てるなぁ、お前さんら」
二本『え?』
カエ「クッ・・・なんでもねえよ」

カラ「!そういえばシロちゃん!おうちの人に連絡しないと!」
シロ「へ?」
カラ「ご両親と何があったのかはわからないけど家出はよくない。まずは話し合わなきゃ!」
シロ「え、あ」
カラ「とりあえず電話電話ーっと・・・」
シロ「い、家出じゃないから!」
カラ「え?」
シロ「家出なんてしてない!ただちょっと、たまたまこっちの方に来ちゃっただけで!」
カラ「あれ?家出って言わなかったっけ?」
シロ「言ってない言ってない!」
カエ「どうせまたカラカサ、お前が早とちりして捕まえちまったんだろう。誘拐だねえこりゃ」
カラ「ひ、人聞きの悪いこと言うなよ!・・・けどシロちゃん。それなら何で君、一人であんな泣きそうな顔して歩いてたんだい?」
シロ「!・・・・・・・・」
カラ「シロちゃん?」
シロ「・・・・・・・・」
カラ「あれ?シロちゃん?え、あ、落ち込んじゃった?うそ、僕なんかまたひどい事言った?か、カエンタケ、俺またなんかやった!?俺やっちゃった!?」
カエ「やっちまったかねえ。おいシロいの。お前ぇドクツルタケとケンカでもしたか」
シロ「!!」
カエ「図星か。わかり易いキノコだ」
カラ「え!?シロちゃんも誰かとケンカしたの!?」
シロ「・・・・・だって。ドクツルタケが悪いんだ」
カラ「だめだよ仲良くしなきゃあ」
カエ「黙ってろカラカサ。まあ飲め、シロいの。何があったんだ?ん?」
カラ「カエンタケ!こんな時間に女の子にお酒飲ますなんて・・・!」
カエ「かてぇこと言うな。ちっとだけだ。お前も飲めほら」
カラ「受験中は禁酒!シロちゃんも無理しちゃだめだよ?ほら、ケヤキジュースもあるからこっち飲・・・あ!」
シロ「っ!」
カエ「おー、イケる口じゃねえか。そらもう一杯」
カラ「カエンタケ!」


カエ「・・・・ほぉードクツルタケがねえ」
シロ「それで、それで、スギヒラタケはドクツルタケが私を毒にしようとしてるんだって言って、それで」
カラ「シロちゃんを毒にだなんて・・・・」
シロ「そんなの嘘だって思って・・・だけどドクツルタケは全然慌てたりしてなくて!きっと本当に私のこと毒になればいいと思ってるんだ!ドクツルタケの馬鹿キノコ!」
カエ「なるほどねぇ。まさか本当に行くたぁねえ」
シロ「?」
カエ「面白ぇ野郎だな、奴ぁ」
カラ「・・・どういうことだ?カエンタケ。あ!まさか君!」
カエ「クッ、いやぁあの無表情な野郎が珍しくしかめっ面なんざして歩いてるからちょいとからかってみたんだがな。誤食が嫌ならシロフクロタケを毒に変えちまえって」
シロ「・・・なんだって?」
カエ「方法ならスギヒラタケが知ってるだろうって、まあそんなところさ。本当に行くとは思わなかったがなぁ」
シロ「ひどい・・・!」
カラ「おい、ひどすぎるぞカエンタケ!!食用キノコを毒にしようだなんて、キノコを何だと思ってるんだ!!」
カエ「お前も食用だったなそういえば」
カラ「ああ、俺は幼菌をフリッターにすると美味いらしい・・・・じゃない!可哀想だろシロちゃんが!毒キノコになれなんて言われたら俺だって怒るし傷つく!君だってそうだろ?毒キノコやめろなんて言われたら嫌だと思うだろ!?キノコを否定するなんて最低だぞ!」
シロ「!」
カラ「キノコは毒も食もよくわからないのも色々いるからキノコなんだ!毒キノコには毒キノコの、食キノコには食キノコの尊重すべき菌格ってものがある!それは一つ一つ全部が美しいんだ!是も非も無い!そんなこともわからないなら、君も菌俗学を勉強して富士山5合目を目指せ!」
シロ「・・・・・・」
カラ「まったく!シロちゃん?カエンタケの言ったことなんて気にする必要ないよ。そのドクツルタケくんにだって僕から言ってあげる。ね?シロちゃん」
シロ「・・・・・う、ふぇ・・・」
カラ「ん?どうしたのシロちゃん?」
シロ「うえぇぇぇ・・・っ!」
カラ「!!え!?なに!?どうしたの!?なんで泣くの!?」
シロ「うぇぇぇっ!うわああああんっ!!」
カラ「あ、ちょ、これ『鬼柳』一升空いてない!?いつのまにこんなに飲んだのシロちゃん!」
カエ「おー、どおりで減るのが早ぇと思った」
シロ「うわああああん!うわああああんっ!」
カエ「ど、どうしよう、女の子泣かしちゃった!どう慰めたらいいんだカエンタケ!あ、そうだ飴あるよシロちゃん、クヌギ樹液飴!実家から送ってきたんだけど美味いよー食べる?だめ?じゃあええとええと、そうだキンテンドーDSやる!?今充電するからほら!」
カエ「受験生が何買ってんだ」
カラ「いや『カビ語漬け』やりたかったから・・・・そ、そうだあシロちゃん!DVD見よう!名作あるぞぉ『13日の菌曜日』!!」
カエ「んなもん見せたら余計なくわな。しょうがねえな・・・おい、シロフクロタケ。うるせえから泣き止め」
シロ「う、うえっ、ふえええっ」
カエ「泣いてちゃわかんねえだろうよ、カラカサはアホだ。何で泣いてンのかちゃんと口で言えや。幼菌じゃあるめえしよ」
カラ「カ、カエンタケ・・・」
シロ「・・・・・・いっ、いっちゃった・・・」
カラ「え?なに?シロちゃん、なに?」
シロ「ドク、ツルタケ、に、毒、キノコ、やめろ、て、言っちゃ、た・・・・」
カラ「え!?」
シロ「わた、私のほうが、先に、言ったんだ・・・・だから、ドクツルタケ、きっと、怒って、あんな、こと・・・・うぇ、うえぇぇぇぇんっ!」
カエ「・・・・・・・・・・・」
カラ「そ、そうだったんだ・・・・。でも、でもさ、シロちゃんには全然悪気はなかったんだろ?そうだろ?」
カエ「キノコを否定するなんざあ最低だなあ」
カラ「カエンタケーっ!!」
カエ「お前ぇが言ったんじゃねえか」
カラ「そういう意味で言ったんじゃない!!」
カエ「ならどういう意味だ」
カラ「シロちゃん!ドクツルタケくんだってわかってくれる!きっともう怒ってない!ね?ほら、よく考えてみれば君らおあいこってことじゃん!仲が良いほどケンカする!雨降って地固まってキノコ生えるってことだよ!カエンタケとベニちゃんだってそうだろ!?そうだね!?」
カエ「俺らぁ違う」
カラ「カエンタケーっ!!」
カエ「うるせえなあほんとお前・・・鍋煮詰まるから火ぃ消すぜ」
カラ「鍋なんかどうだっていいだろ!シロちゃん、ごめんねごめんね、俺ほんっっっとデリカシー無くて!」
カエ「お前ぇに無ぇのは落ち着きだよアホカサ。ほっとけほっとけ、酒の涙なんざそのうち乾く」
カラ「カエンタケーっ!!」
カエ「うるせぇー・・・・」



・・・・居心地良さそうだなあカラカサの家・・・・

          

■カラカサタケ
長身。髪は暗褐色。目は淡褐色。(大型。傘は暗褐色で傘の裏は淡褐色)
痩せ型で見た目より軽い。(細くて中空)
メガネキャラ。(リング状のツバがある)
食用。


カラ「風邪引くよ?どうしたのこんなところで」
シロ「あなたは・・・」
カラ「僕はカラカサタケ。君、どこの子?ここから家、近いのかい?」
シロ「いや、そんなに近く無いんですけど、ちょっと色々あって・・・」
カラ「あ!もしかして、家出!?」
シロ「えっ?」
カラ「だめだよー、おうちの人心配するよ。お父さんとケンカでもしたの?今頃きっと探してるよ?」
シロ「いや・・・」
カラ「帰ろ。僕送ってくから。大丈夫、色々あっても親子ってのはちゃんと分かり合えるもんだよ。それに君、家出ったって何にも荷物持ってきてないじゃない?」
シロ「え?あ、いや、だから・・・」
カラ「あー、さてはケンカの勢いに任せてそのまま飛び出したな?だめだめそんなの。ほら、帰ろ。家はどっち・・・・」

 ぐぅ~。

シロ「!・・・・・」
カラ「・・・・・もしかして、お腹空いてる?」
シロ「う・・・・」
カラ「財布も持たないで出てきたんだな?なってないなあ、もっかいイチから家出を勉強しなおさないとね!今日はほとんど何にも食べてないんだろ。この雨じゃ菌糸に毒だよ」
シロ「いや、その・・・」
カラ「僕んちに来る?すぐそこの竹林。今ちょうど友達来てて、これから鍋やるんだ。材料買出しに行ってたんだよね、ほら、腐葉土にチップに樫クズ、松もあるよ。どう?」
シロ「・・・・。い、いいの?」
カラ「いいさぁ!大丈夫たくさん買ってあるから。鍋は人数多いほうが楽しいしね!さ、いこ。風邪引いちゃう。あ、ご両親にはうちから連絡しようね。もう暗いから迎えに来てもらおうね」
シロ「・・・えっと・・・家出じゃないんだけどな・・・」


カラ「ただいまー」
シロ「お、おじゃまします」
カエ「遅ぇぞカラカサあ。酒の用意はもうとっくに出来て・・・って、お?」
シロ「!!!!か、か、か、・・・・」
カエ「シロフクロタケじゃねえか」
シロ「カエンタケーーー!!!?」
カラ「あれ?知り合い?」
カエ「親しかねえがな。お前ぇも色気のねえの引っ掛けて来やがったなカラカサ」
カラ「またそういうこと・・・。女の子だったらこんな時間に家に連れて来れるわけないだろ。ねえ?」
シロ「!?」
カラ「君、シロフクロタケっていうんだね。シロくんって呼んでいいかな」
シロ「・・・・・・・」
カエ「・・・・・・あらら」
カラ「ん?どうかした?」


カラ「え、ええええーっ!?し、シロく・・・いや、シロちゃんって女の子だったの!?」
カエ「そこまで驚いちゃあ失礼だろ。なあシロフクロタケ」
カラ「ごっ、ごめ・・・!!」
シロ「・・・いいんです。慣れてますから。・・・知り合いの男ともよく間違われますから」
カラ「ごめんね、俺ね、ほんっっとそういうの気づかなくて、ほんっっと鈍感で、ほんとっ!!ねえ!?カエンタケ!?」
カエ「あー、女には疎いわ、柄の外がついてこれねえくらい成長しまくってひび割れるわ、外皮膜ちゃんと落とさねえで傘の上フケだらけになるわ、お前はよくよく鈍い男だよ」
カラ「そ、そこまで言うなよぉ女の子の前で」
カエ「今さら何言ってんだ」
カラ「参ったな、こんな時間に男の家連れて来ちゃったらほんとご両親心配させちゃうよ。シロちゃん、お家どこ?送ってくからすぐ帰ろう!」
カエ「落ち着けって阿呆が。こいつだって子供じゃねえんだ、自分のことぐらい自分で面倒見れらぁな。なあシロいの」
シロ「・・・シロフクロタケ、だ」
カエ「いつまでも不貞腐れてんじゃねえよ。お前の柄が寸胴なのが悪ぃんだろう」
シロ「!!」
カラ「カエンタケ!!君はなんでそう口が悪いんだ、そんなだからベニちゃんとケンカするんだぞ!」
カエ「そいつとこいつは関係ねえだろ。おい、鍋やるならさっさと作れよ。俺ぁ先に始めてるぜ。酒が茹っちまう」
カラ「あ、ちょ、ちょっと待てよ今材料用意するから・・・!」
シロ「・・・・手伝います」
カラ「え!?あ、そうかい?手伝ってくれる?あは、やっぱり女の子だなあシロちゃん!」
シロ「・・・・・・・・・」
カラ「うんうん、包丁持つ手つきもいいし!慣れてるって感じがするよ、やっぱ女の子・・・」
シロ「あたっ!」
カラ「!!・・・・・・・」
シロ「・・・・いった~・・・・」
カラ「・・・・ほ、包丁、手に合わなかったのかなぁ!・・・なんて・・・その・・・・大丈夫?」
カエ「お前ぇもう黙った方がいいんじゃねえかカラカサ」



・・・・・・・・カラカサタケの髪型は、「都会のキノコ図鑑」に載ってるカラカサタケの幼菌の傘がまさにこういう形をしていたために、上図のような丸い感じなったわけなんですが、これでメガネかけて人の良さそうな顔してると、すまん、私にはもう成長したのび太にしか見えない。
大学院生のお兄さん、みたいな感じです、カラカサ。

ドク「オニフスベ!」
オニ「!な、なんでごわすか?」
ドク「こっちにシロフクロタケのやつが来なかったか!?」
オニ「シロフクロタケ?さ、さあ~、おいどんは知らんでごわす。全然知らんでごわす」
ドク「・・・・本当か?」
オニ「ほ、本当でごわす!おいどんの目を見るでごわす!」
ドク「・・・・・・」
オニ「・・・・う・・・・」
ドク「逸らしたぞ」
オニ「こ、これは違うでごわす!ドクツルタケの目はがっつい恐いで、思わず逸らしただけでごわすど!」
ドク「・・・・・恐いって・・・・まあいい。あいつを見かけたら教えてくれ。ったく、どこ行きやがったんだか・・・!」

・・・・・・・・・・・・

シロ「・・・・・行った?」
オニ「行ったでごわすよ」
シロ「そっか・・・・ふぅ。ありがとう、オニフスベ、かくまってくれて」
オニ「ひやひやしたでごわす!もう少しで胞子を噴出すところだったでごわすよ!」
シロ「あは、ごめんごめん。オニフスベの胞子は私の一万倍あるんだからそんなことになったら大変だよね。大丈夫、もう行くから」
オニ「じゃっどん、本当に良いでごわすか?ドクツルタケとはしち話会った方が・・・」
シロ「嫌だ!」
オニ「シロフクロタケ・・・」
シロ「話しただろう?あいつは私を毒性にしようとしてるんだ!そんな奴だと思わなかった!もうドクツルタケなんか傘も見たくないっ」
オニ「それはどっか誤解があって・・・・」
シロ「とにかく!私はもうドクツルタケに助けてなんかもらわない。毒キノコになるくらいなら、乱獲されるほうがよっぽどマシだ!じゃあね、オニフスベ。ドクツルタケがまた来ても、私のことは言っちゃダメだぞ!」
オニ「あ、ああ」
シロ「あ。それと」
オニ「うん?」
シロ「ベニナギナタタケのこと・・・・ごめん。力になれなくて」
オニ「・・・・・・いいんでごわす。やっぱりベニナギナタタケさんは、おいどんには過ぎたキノコでごわすよ」
シロ「・・・・・・ごめん」
オニ「夜道に気ぃつけて。雨も降りそうだから、早めに家に帰るでごわすど」
シロ「うん。ありがとう、オニフスベ」

・・・・・・・・・・・・・・

シロ「ドクツルタケなんか・・・・ドクツルタケなんか・・・・・」

・・・・・ぽつ。

シロ「どうして、どうして私のことを毒にしようとなんか・・・こっそりスギヒラタケに会いに行くぐらいなら、面と向かってはっきり言えばいいじゃないか。毒になれって。そりゃもちろんその場で張り倒すけど・・・でもあんなこそこそすることないじゃないか!ドクツルタケの馬鹿!馬鹿きのこ!」

 ぽつぽつ。

シロ「そんなに私の代わりに誤食されるのが嫌か!私も嫌だけど!二本揃って毒キノコになればそりゃあ人間達は採らなくなるさ。でもそんなのおかしい!食用なのに毒になるなんて、変だし、第一危険だ!気がつく前に人間達は絶対食べちゃうじゃないか!」

 ぽつぽつぽつぽつ・・・・・サァァァァァ。

シロ「私だって、私だって好きであんな奴に似てるわけじゃないし、守ってくれなんて頼んでないし、それに、それに・・・・ああもう鬱陶しいな雨!・・・・・雨?」
 
 ザァァァァァ。

シロ「わ!雨!わ、わ、どんどん激しくなってきた。ど、どこか雨宿りできるとこ・・・!」

??「・・・君、もしかして迷子?」

シロ「!?」

 いつのまにやらずぶ濡れになっていたシロフクロタケの上に、そっと傘が差しかけられた・・・・



限りないキノコの可能性を、ベッタベタな展開に載せてお送りする、それがキノコドラマ。
・・・・雨降ってきたんで、ドクツルタケはますます必死にシロを探していると思います。




スギ「・・・・・ねえ」
ドク「?」
スギ「どうしてそんなこと知りたかったの?」
ドク「・・・・・・」
スギ「スギのことが知りたかったから?そうなのね?」
ドク「別に。そうじゃない」
スギ「じゃあ何で?毒に変わる方法なんて聞いて、どうするの?」
ドク「どうもしない」
スギ「嘘だよ」
ドク「・・・・・・」
スギ「だってそうじゃなきゃこんなところになんてこないでしょ?ね?・・・それともほんとにスギに会いに来てくれたのかな。そうだったら嬉しいな。スギねえ、ドクツルタケが好きなの。大好きなのよ」
ドク「それはさっき聞いた」
スギ「何度だって言うよ。ドクツルタケが好き、大好き、大好き、大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き・・・・・」
ドク「やめろ」
スギ「すきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすき」
ドク「やめろよ」
スギ「すきすきすきすき!!じゃあドクツルタケも言ってよ!スギのこと好きだって言って!大好きだって言って!スギに会いに来たんでしょう?スギのお話聞きに来たんでしょう?スギのこと好きだからだよね?そうだよねえっ!?」
ドク「・・・・・・・」
スギ「なんで黙るの!?何で答えてくれないの!?スギのこと嫌い!?毒だから嫌いなの!?じゃあ昔は好きだった?スギのことちょっとでも好きだった?ねえ、ねえ、ねえ!」
ドク「・・・・・・・」
スギ「答えてよドクツ・・・・・!」

がささ!

シロ「見つけた!おいドクツルタケ!!」
スギ「!?」
ドク「!」
シロ「君に話が・・・・・っと・・・・あ。」
スギ「・・・・・・」
ドク「・・・・・・」
シロ「・・・ご、めん・・・・・邪魔した・・・かな」
ドク「・・・・・・・・お前なぁ・・・・」
スギ「・・・・・シロフクロタケ?」
シロ「あ、君がスギヒラタケ?」
スギ「そう。スギだよ。こんばんは」
シロ「今晩は。そうか、もう随分暗くなったもんね」
ドク「・・・・何しに来たんだお前」
シロ「何しにって・・・・ええと、話すと長いんだ」
ドク「聞くから手短に話せ」
シロ「え!?え、ええと、ええと、・・・そうだ、君と別れてからな、オニフスベに会ったんだ。それで、ベニナギナタが大変だっていわれて、急いで彼女のところに行ったんだ」
ドク「ああ。その辺はカエンタケに聞いた」
シロ「そう、そのカエンタケが問題で!だけど彼女にカエンタケから離れる気は無いって言われてしまって、仕方なく戻ってきた。で、その途中でツマミタケママに会って、ドクツルタケを止めなきゃダメだって言われて、それでここまで来た。・・・以上」
ドク「俺を止める?なんで」
シロ「それはその・・・・」
スギ「・・・・スギのせいでしょ」
シロ「!」
スギ「スギに会うのがダメだって言ったんでしょ。わかるよ、今はスギのこと皆そういうから」
シロ「あ、いや・・・・」
スギ「ドクツルタケは返さないよ。スギに会いに来てくれたんだもん。スギのこと好きなんだよ。そうだよね?ドクツルタケ、そうだよね?」
ドク「・・・・・・・」
スギ「また黙るの?・・・・・あー、そっかぁ。スギ、わかっちゃった」
ドク「?」
スギ「うふふ、シロフクロタケのためなんだ。そうでしょ」
シロ「え?」
スギ「うふふ、そっかぁ。そうなんだあ」
シロ「なに?なんだよドクツルタケ」
スギ「スギが教えてあげる!あのねえ、ドクツルタケねえ、スギのところにお話聞きにきたんだよ」
シロ「話?」
スギ「そう!スギがどうやって毒キノコになったのか、聞きに来たんだよ。ねえ?」
ドク「・・・・よせ」
スギ「ドクツルタケはね、知りたかったんだよ!どうやったら毒性になれるのか。スギわかっちゃった。それ、シロフクロタケのためなんだね?」
シロ「??どういうこと?」
ドク「やめろ」
スギ「そうでしょ?ドクツルタケ。シロフクロタケを毒性にしたいんだよね?自分とおんなじ、毒性に変えちゃいたいんでしょ?そうだねえ?」
ドク「ちがう」
シロ「・・・・・・・・ドク、ツルタケ・・・?どういうこと?」
ドク「おい、違うぞ」
スギ「スギねえ、教えてあげたよ。悪いものいっぱい食べたら毒になるって。だからね、ドクツルタケはシロフクロタケに、いっぱいいっぱい悪いもの食べさせるんだよね、これからね?そうねえ?」
ドク「何言ってんだ」
シロ「・・・・嘘だろう?ドクツルタケ」
ドク「当たり前だ、嘘に決まってるだろこんな・・・・」
シロ「私を・・・・毒性にだなんて・・・・そんな・・・・・・そんな!」
ドク「おい」
シロ「信じない!そんなの、そんなの絶対信じない!!ドクツルタケの馬鹿キノコーっ!!!」
ドク「思いっきり信じてんじゃねえか!!シロフクロタ・・・!おい待てよ!待てってシロ!!お前、他菌の言うこと全部鵜呑みにしてここまで来たくせに、なんで俺の話だけ聞かねえの!!?待てコラ待てーーーーっ!!」
スギ「もうダメだよドクツルタケ。シロフクロタケはドクツルタケのこと信じて無いもん、もう何言ってもムダだよう」
ドク「っ!!放せ!!」
スギ「だから行かないで?ここにいて?ね?スギと一緒にいよう?スギのこと好きだって言って?」
ドク「うるせえな!そんなに聞きたきゃツクツクホウシにでも言ってもらえ!」
スギ「ドクツルタケじゃなきゃいや!」
ドク「俺だってあいつじゃなきゃやだ!・・・・・あ」
スギ「・・・・・・・・」
ドク「・・・・・・・・・・・・あー・・・」
スギ「・・・・シロフクロタケが好き?」
ドク「・・・・・・別に」
スギ「じゃあね、いいよ、スギね、毒になるためのとっておきの方法教えてあげる!だからね、だから傍にいて?シロフクロタケを毒にするならスギも手伝うよ!だからドクツルタケはスギの傍にいて!シロフクロタケを毒にしたいでしょう?スギ、してあげる!ドクツルタケのしたいことなんでも叶えてあげる!だからっ!」
ドク「いつ俺があいつを毒にしたいっつった!?したいわけねえだろ!っていうか無理!あんな菌髄反射で動くキノコに毒なんかほんと無理!!」
スギ「毒にしたくないの?じゃあ・・・じゃあなんで・・・・!」
ドク「毒になる方法があるなら毒やめる方法もあるかも知れないと思ったんだよ!ああもう放せ!!」
スギ「ド・・・・っ!!」

 振り切って走り去るドクツルタケ。
 呆然と見送るスギヒラタケ。

スギ「・・・・・毒・・・・やめる、方法?ドクツルタケが、毒やめたい、の・・・・?そんな・・・・うそ・・・・だって、だってそれじゃあスギ・・・・スギ・・・・・」



・・・・ようやくシロフクロタケの性格が定まってきたよ。バカだ
頑張れードクツルー。
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