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2007年1月8日設置
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■あの茸は今
カエンとベニの別れ話もスギの事件も何も知らない平和なカラカサ。
シロちゃんは家に帰れたかしら、心配だからカエンタケに聞きに行ってみようかな、そうだせっかくだからベニちゃんにお土産でも買っていこうそうしよう。
何の憂いも無い晴れやかな笑顔で買い物をする彼の頭には、
「女の子→甘いもの→ショートケーキ
というエリンギを割ったようなまっすぐな構図しか無かった。
・・・吉野家と女は同じ世界に存在しないと思っている夢見る男の一人である。



・・・・・

ベニ「・・・そうですか。ドクツルタケさん・・・良かった!」
カラ「こんにちはあ」
ベニ「あ、どなたかいらっしゃったみたい・・・はい、お大事にとお伝え下さい。失礼いたします・・・」

チン。

カラ「カエンタケえ、いるかい?シロちゃんあのあと無事に・・・・あ。」
ベニ「こんにちは。カラカサタケさんでしたか」
カラ「!ベニちゃんごめ・・・!電話中だった!?よね!?」
ベニ「い、いいえ、いいえ。もう終わるところでした。カエンタケからでしたから大丈夫ですよ」
カラ「あれ?カエンタケ留守?どこに行ったの?」
ベニ「今はまだ病院に」
カラ「病院!?」
ベニ「はい・・・」
カラ「な、何があったんだベニちゃん!!カエンタケは昨日はあんなに元気で!!」
ベニ「え?あ、あの、カエンタケは別になんともな・・・・」
カラ「カエンタケはなんともない・・・?じゃあ・・・・シロちゃん!?シロちゃんに何かあったんだねっ!!?」
ベニ「!」
カラ「もしかしてお酒のせいで具合悪くしたんじゃないかい!?俺思ったんだよ昨日、いくらなんでも飲みすぎだって!カエンタケが病院に連れてくなんてそんなよっぽどひどいんじゃないか!?ひどいのかい!?」
ベニ「お、落ち着いて下さい、カラカサタケさん・・・!」
カラ「ベニちゃん話してくれ!一体、俺の知らない間に何があったのか!」
ベニ「は、話します、話しますから落ち着いて・・・・!おねが・・・・!」



ベニ「・・・・・ということがあったのです」
カラ「スギヒラタケにドクツルくんが・・・・なんてことだ・・・」
ベニ「この家に運ばれてきた時には意識がありませんでしたが、ここから病院に運ばれて手術をされて、一命は取り留められたそうです。傷も思ったほど深くなく、菌床をあたたかくして少し湿らせておけばまたお元気に生えられるでしょうとのこと。本当に、不幸中の幸いでございました。ほんとうによかった・・・!」
カラ「そうだね、大事にならなくてほんっっとうに良かったね!シロちゃんもほっとしてるだろうな。いや、心配してるのかな?両方か!とにかくもう大変だったねベニちゃんも!」
ベニ「私は何もできませんでした。カエンタケが・・・カエンタケがいなければどうなっていたことか。ドクツルタケさんを運んだのも、傷口の液止めも、救急茸を呼ばせたのも、全てカエンタケなのです。彼がみんなしてくれたのです。私はただ見ているだけで・・・怖くて動くことすらできずに・・・・」
カラ「普通はそうだよ。カエンタケが怖いもの知らずなんだよ。あいつは昔っから頼りになるキノコだし、かっこつけてるけど何だかんだでキノコの面倒見るの嫌いじゃないし」
ベニ「ええ、ええ」
カラ「俺だってショウジョウバエから助けてもらったし、ベニちゃんだって山から出てきたとこ拾われたし。そういうとこまったく変わってないんだな。きっと変わらないもんなんだろうね、キノコの良いところって」
ベニ「ええ・・・・」
カラ「ああいう奴だからちょっとわかりづらいところもあるけどね。あはは。でもいい奴だよ本当に」
ベニ「・・・・・・・」
カラ「まだ病院かあ。ケーキ3つ買ってきたんだけどどうしよう。あいつ遅くなるって言ってた?ベニちゃん」
ベニ「!あ、いいえ、もうすぐ帰るからと」
カラ「じゃあ待ってようかな。いい?俺ここ居て」
ベニ「もちろんです。すぐにお茶をおいれしますから、どうぞお楽になさってください」

ぽつ。

カラ「ん?」

ぽつ。ぽつ。

カラ「雨だ」
ベニ「!・・・雨・・・・」
カラ「梅雨に入ったからね。よく降るなあ」
ベニ「・・・・・・わたくし」
カラ「ん?」
ベニ「私・・・カエンタケに傘を持っていかなければ」
カラ「あ!俺行ってこようか?」
ベニ「いいえ、いいえ、カラカサタケさんはここに居てください。私が参ります」
カラ「そう?」
ベニ「はい」
カラ「・・・そっか。じゃあひどくならないうちに行ってきたほうがいい。お茶は俺、自分でいれられるからさ」
ベニ「・・・申し訳ありません」
カラ「いいんだよ、そんなの。気をつけて行って来て。カエンタケをよろしく」
ベニ「はい。行ってまいります」

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