今から思えば、サラディの夜のいい雰囲気の一幕・・・・は、明らかに坊ちゃんの思い過ごしでした。
オデッサは大人の女性。人との別れのたびにピヨピヨ泣いているこんなヒヨッコを相手にしてくれるわけもなかったのです。
けどもううちの坊っちゃんの初恋は間違いなくオデッサだったと思う・・・そういう感じでここまで来てしまった。いんだよ。男の年齢とツボにはまるキャッツアイ三姉妹の年齢は反比例するって言うじゃないか。坊ちゃんはまだ泪さんに憧れたい年頃なんだよ。そのうち瞳で地獄を見て愛ちゃんに癒しを求めるようになるんだよ。男って・・・・・いや、ほんとどうでもよかったそんなこと。
オデッサが思い出の人になってしまった、その翌朝。
宿のカウンター前に集合した坊ちゃん、グレミオ、クレオ、ビクトールは当然ながら元気がありません。2Dの画面なのに肩が丸まってるような気がします。眼、全員真っ赤なんだろうな・・・
重苦しい雰囲気の中、最初に言葉を発したのはグレミオでした。
「私達は・・・行かなければならないんでしょうね。セイカへ・・・・・」
あったりまえだろおおおおおおおおおおお!!!!!
この期に及んでなにぐずぐず言ってんだお前!!オデッサの最後の頼みを聞けないとでも言う気か!!もう既に一個聞けなかったけどね自分!!でもだからこそ、もう一つはなんとしても叶えてあげたいんだよ!!!わかってくれよグレミオ!!!!
「セイカに行くにはクワバの城塞を通らなきゃならんな・・・・ま、なんとかなるだろう」
ビクトールが何とかなるというならなんとかなるんでしょう。また賄賂とか渡すんだと思う。それで駄目だったら火をつけるんだと思う。こうして改めて書くとものすげえタチ悪いなこの人。
クワバの城塞はレナンカンプの南にありました。
万里の長城のごとく、大陸の東西を長々と遮っており、城塞を通らなければ一歩も先へ行けません。
ところがこの城塞を守っているアイン・ジードなる人物は、テオ・マクドールとも知己で、息子であるセオの顔をよく知っている人物だとクレオがいうのです。彼に見つかったら手配中の反逆者としてセオはひっとらえられてしまうだろう、と。
できるだけ敵に顔を見られないように通過してください、と無茶な要求をされる坊ちゃん。わずか4人のメンバーで、隠れられるところも隠せる物もありません。ちょっと待って皆。城塞についてからそういうこと言わないで。先走らないでなんかもっと準備してから来るべきだったんじゃないのここ。ビクトール、お前なんか考えあるんだろ?あるんだよね?
「とりあえず、偽名を使うか」
浅ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
底が水面上にあるくらい考えが浅ぇ!!!!!顔が問題だっつってんだろ!!!どこのバカがこの状況で「セオ・マクドールです」って名乗るんだよ!!!お前がポョニール3世、俺がダチョウの体ぐらいじゃないと誤魔化せねんだよこの場所はよ!!!
「じゃあ私はロイ、で」
「私はマリアとしておこうか」
乗ってんじゃねえよ!!反論して誰か!!
「俺はシュトルテハイム・ラインバッハ3世だ」
お。ポョニールと近いとこ来た!意外!そうか、謎のダチョウ売りになる覚悟ができたか!
じゃあ僕はダチョウの体で!
・・・・しかしそんなコマンドは出なかったので、仕方なくシュトルテハイム・ラインバッハ4世を名乗るセオ。
いや・・・・選んじゃうだろ、この選択肢・・・・普通はさ・・・・
かくしてビクトールと仮面親子になった坊ちゃんは城塞に挑みます。
入るなり兵士が出てきました。
「待て!」
はい、なんでしょう?こちとらぺーぺーの旅芸人で決して怪しい者では・・・・
「ん?そこの奴・・・手配中のセオ・マクドールに似ている気が・・・・」
一発でばれたよ。後ろ向いてたのに。
何気に超有名人になってるよ。いつの間にだよほんと。
しかもアイン・ジード出て来た。
「まずいな・・・彼に顔を見られたら・・・・」
ごめん、クレオ。もう見られてる。じいさんすごい勢いでガン見してきてる。内蔵まで透視されそう。
どうする?逃げる?それとも、火?
旅を始めてから続けざまに襲い来るピンチに、坊ちゃんは脱力気味です。
しかし、その時でした。
「この野郎!!!」
いきなりグレミオが殴りかかったのです。坊ちゃんに。
「もう我慢できないぞ!!お前はことあるごとに俺達の足を引っ張りやがって!!!!」
こ、これは・・・・勧進帳!!?
「お尋ね者に間違えられるぐらいなら、いっそこの場でお前を処断してやる!!!」
勧進帳だ!!!弁慶だ!弁慶がいる!!!
彼に殴り飛ばされ、城塞の壁に激突する坊ちゃん。
あまりの勢いにうろたえる兵士。
「ちょ・・・ちょっと待てお前・・・・」
「いいえ!反逆者に間違われるなど不名誉も甚だしい!今すぐこいつの首を斬って汚名を晴らして差し上げます!」
「そ、そこまでしなくても・・・・!」
「・・・・もう良い。いかせてやれ」
と、言ったのは、先ほどから無言で一行を眺めていたアイン・ジードでした。
「しかし!」
「いい。通してやれ」
じいさん・・・あんた・・・・
「・・・・・・父親を大切にな」
富樫左衛門様ーーー!!
あんた、あんた・・・・!!帝国はまだ死んでないよ!!敵にもいい人がいた!
ていうかむしろこっちが親父をよろしく!
僕はこの先どうなるかわかりません!
こうして一行は安宅関・・・もといクワバの城塞を抜けることができました。
無事に抜けられた瞬間、坊ちゃんに詫びるグレミオ。
「坊ちゃん・・・・申し訳ありませんでした。通るためとは言え、坊ちゃんにあんなことを・・・・!」
わかってるさグレミオ。お前が弁慶だってことは。
ほんとは誰より僕のことを考えてくれてるんだ。ずっと昔からそばにいてくれたんだ。なんだかんだいって僕はお前が大好きなんだ。わからないわけ無いじゃないか。
・・・・ただ、あれだな。首斬るっていうのはリアルで怖かったかな。弁慶は杖だけど、お前の武器は斧だから。
パーンのこともあるし、万が一の瞬間がちょっと頭をよぎらなくもなかったな。でもわかってるよグレミオ。世界中の誰が裏切ってもお前だけは裏切らないって、ちゃんと知ってるよ。
セイカはもうすぐ、目の前でした。
日中、あまりの眠さにデータ加工をしながら舟をこぎまくって、100と3つの世界の川を巡り歩いた骨と皮~の男なるところでした。眠い。眠すぎる。こんなに眠いのは普通じゃない。PCの画面から睡眠電波が出てるとしか思えない。たとえドン・ガバチョが出てきても驚く気力すらない。ドン・ガバチョ?出てくんじゃね?Intel入ってんじゃね?もうなんかそんな感じでぐだぐだです。
しかしゲームの中では元気です。
火炎槍の設計図をカゲに渡した坊ちゃん一行は、用事が済んだのでレナンカンプに帰りました。
帰途で再び虎狼山を越えましたところ、今度は誰も休もうって言わなかった。あまりにもスルーすぎる空気に逆に気を使ってルドンに顔見せに行った。奴もノーリアクションだった。普通の宿屋のフリしてた。もういいよ、ちくしょう。さっさと帰ればいいんだろ!帰る帰る!こんなクソ寒い山もう二度と来ない!レナンカンプはいいところだね!けやき亭のご主人、坊が只今帰りましたよー・・・・・・
何で倒れてんですか床に。
宿の入り口をくぐったとたん目の前で昏倒している人イベントでした。これには坊ちゃんもさすがに度肝を抜かれました。
ちょっと!大丈夫!?生きてる!?
「て・・・帝国の奴らが・・・・」
またあいつらかよ!!正直うぜぇよ!!なんなのもう!用があるなら事前に連絡しろよ!連絡してくれたらこっちだって相応におとといきやがれって言ってやるんだよ!!それがプロミス大人のマナーだわかったか!!・・・・あ、オデッサ!馬鹿、一人で行くな!危ない!
アジトを心配したか新入りに付き合いきれなくなったか、奥へと駆け出して行ってしまったオデッサをあわてて追う坊ちゃん。
大時計を蹴倒し、地下へ飛び降ります。
そこには大量の帝国軍兵士がいて、どっからどう見ても現場は占拠されているようでした。
フリックもサンチェスもハンフリーもいません。
飛び込んでいったオデッサも姿が見えません。
オデッサ!どこ!?まさかもう敵にとっつかまったんじゃなかろうな!どうしよう、この辺の兵士どつき倒せば出てくるか!?おらああああオデッサ返せこの野郎!!!・・・ん?クレオがなんか紋章使えるようになってるだと?かたつむりとの戦いでレベルアップしたせいか!よし、クレオ!その炎の紋章で、こいつら全員焼き尽くしてくれ!!
そこはかとなく荒ぶる解放軍としての底力を発揮しはじめる主人公。
帝国のジッパヒトカラゲどもなど物の数ではありません。ばったばったとなぎ倒し、適当に金を巻き上げ、さらにアジトの奥へと進もうとしたその時です。
「きゃあああああああーーーーーっ!!」
オデッサの悲鳴が響き渡ったのでした。
駆けつけた坊ちゃんの目の前で、オデッサは倒れていました。その前に二人の兵士。
全力で葬り去ります。邪魔。
とっとと失せろ!二度と沸いてくるな!
オデッサ!無事か!?
駆け寄ると彼女はよろよろと半身を起こしました。
そして、
「さ、さあ・・・もう大丈夫よ。出てきなさい・・・」
・・・!
彼女の影には小さな子供が隠れていました。
どうやらオデッサは身を挺してその子を庇ったらしいのです。
早く逃げなさいといわれ、頷いてダッシュで逃げていく子供。
その姿が消えるのを見届けて、初めてオデッサは一声呻いてうずくまりました。
「オデッサさん!血が・・・!」
怪我を・・・してるの?オデッサ。
「オデッサ!なんでこんなことをした。おまえがいなくなったら解放軍は・・・・」
う、うるさいビクトール。解放軍なんか知ったこっちゃないよ。そんなもんなくたってオデッサはオデッサだ。早く怪我の治療を・・・!
「ご、ごめんなさい・・・・・私には・・・・あの子を見殺しにすることができなかったの・・・」
わかってるよ。そんなのわかってるよ。オデッサはそういう人だもん。
「リーダーとして失格ね・・・・とっさに一人の女としての判断を選んでしまうなんて・・・・」
「しゃべるんじゃないよオデッサ。傷口が開くだろ!」
クレオ。それじゃまるで彼女がとんでもない大怪我してるみたいじゃないか。やめてくれよ冗談だろそんな・・・・
「セオ・・・・こっちに・・・・来てくれる?」
何!?
「あ・・・・あなたに・・・お願いしたい・・・ことが・・二つあります・・・・」
声が小さくて・・・切れ切れで聞き取れないよオデッサ。
何だよ!二つだろうと三つだろうと何でも聞くよ!何だよ!
「一つは・・・・こ、これを・・・このイヤリングを・・・セイカの村に・・住む、マッシュという男に・・・渡して欲しいの」
わ、渡すけどさ。でも、でも自分で渡したほうがいいんじゃないのか!?できるだろ!?できるよね!?
「やめろオデッサ。最後の願いなんてバカなことを考えるな!」
誰が最後っつったあああああああ!!!!
誰も言ってねえだろおおおおおてめえが今言ったんだろその口でえええええ!!!ビクトォォォォォォォォル!!!!撤回しろおおおおおお!!!!!
「ビクトール・・・ありがとう・・・でも・・・もう・・・・無理なことは・・・自分でもわかるの・・・・」
何がだよ。何がわかるっていうんだよ!
嫌だよ、こんなイヤリング受け取れないよ!!!
『イヤリングを受け取った』 (チャララーン)
画面と心に1億2000万年の距離ぃぃぃぃぃぃ!!
受け取ってねえって!!!受け取れないって!!!!
「も・・・もうひとつの・・・わたしの願いは・・・・・」
なに!?今度こそほんとに何でも聞く!!
「わたしの・・・体を・・・その水の流れに・・・投げ込んで欲しいの・・・」
聞けねえ。
マジで無理です。勘弁してください。っていうか本当に本当にそれだけはやめてください!!!!
オデッサ!大丈夫だよ!自分旅に備えて「おくすり」めちゃくちゃ買いだめしてあるし!!足りなかったら走っていって買ってくる!!こんな怪我なんてすぐに治るよ!治るってば!!
「オデッサさん!なぜです?そんなひどいことを どうしてしなきゃいけないんですか?」
する方向で話進めてんじゃねえよグレミオ!!!!
お前ちょっと黙ってて!!つーか医者呼んできて誰か!!
「おねがいよ・・・・セオ・・・・」
そんなことできません!!!
この暗い水に君を流せってか!?できるわけないだろ!!できるわけないだろっ!!?
「わたしが死んだことがわかれば・・・・芽生えたばかりの・・・解放運動は・・・・・」
消滅!?だからなんだよ!そんなもんまた種撒いて水やって育てりゃ邪魔になるくらい生えるよ!!
君はいなくならない!死んだりなんかしない!!
「かすかに・・・・生まれた希望を、消すわけに・・・いかないのです・・・・」
どうして!?こんなになってまでどうして一人で全部背負うんだよ!!
せめて・・・・せめて自由になって行けよ!!
絶対嫌だ!ゲームが無限ループしても絶対断る!断固断る!!
「わかったオデッサ・・・・俺がやるよ」
びくとおおおおおおおおおる!!!!
やめろってこの馬鹿野郎!!お前戦闘時は一番スローアタッカーのくせになんでこんな時だけ行動早いの!?
「ねぇ・・・どこかでフリックに・・出会えたら・・・伝えてくれる?あなたの・・・やさしさは・・・いつも・・・いつでも・・・わたしを、なぐさめてくれた・・・と・・・・」
だから自分で伝えろって!人から伝えられてあの男が喜ぶわけねえだろ!!!?
「じゃあ・・・そろそろサヨナラみたい・・・セオ・・・・私の見ることのできなかった・・・自由な世界を・・・」
一緒に見ようよ!・・・・一緒に見ようよオデッサ・・・・っ!!
・・・・オデッサ?ねえ!ちょっと!!オデッサ!!嫌だ嫌だ嫌だ!!!!
嫌だ!!!!!!!!!!
・・・・・・・
・・・・・それからのことはあまりよく覚えていません。つか画面が暗転したのと怒涛の涙で何も見えなかった。それがせめてもの救いだった。オデッサが水に沈むところなんて見たらPSPから何もかも抜いてた。
オデッサ・シルバーバーグ。
調べてみたら享年24歳とのことでした。画面ではもっと幼く見えました。
強い、美しい人でした。
セオを見て喜ぶオデッサ。
「帰ってきたのね!良かった、これで問題が解決するわ!」
・・・???毎回話の見えない台詞を飛ばす子だねあんた。
バルカスとシドニアは助けたよ。今度はなんだい?・・・・設計図?
解放軍は帝国軍に対抗するため、「火炎槍」という強力な武器を持ちたいらしいのです。
その設計図を、山一つ越えたサラディの村に届けてほしい、とこういうことでした。
別にいいけどそのブツは大丈夫ですか。ついたとたんにいきなり光って村中を焼き払ったりしませんか。前に騙されたことがあるんですバロンていう国の王様に。
「冗談じゃないですよ!」とは、グレミオの弁。これ以上深く関わっては本格的に坊ちゃんが解放軍化してしまいます。そうなったらグレッグミンスターに二度と戻れなくなるんですよ!
しかしオデッサはセオに語りかけます。
あなたも見たでしょう?帝国の現状を。人々がどんなめにあわされているかを。その現実から眼をそむけることは決してできないわ。そうでしょう?
・・・・そうだ。確かに見てきた。
腐敗した兵士、荒廃したロックランド、虐げられて帝国を憎悪する人々・・・・
僕は帝国将軍テオ・マクドールの息子で、本当なら将来を約束された身の上だ。
だが父は父、僕は僕だ。
オデッサ、行くよ。設計図を届けに。
坊ちゃんは目覚めました。箱入り息子が初めて自らの意思をもって世界に眼を向けた瞬間です。
彼を微笑んで見守るクレオが、「坊ちゃんが行くというならそれに従う。私の役目は坊ちゃんの身を守ることだ」と言ってくれました。グレミオはまだぶくぶく言っていますが、大丈夫、彼は結局ついてきますそれは間違いない。
そしてビクトールと・・・・え?オデッサもついてくるだと!?
「なんだって!?」
こっちより先に抗議の声を上げたのは、解放軍のリーダー格の一人、フリックでした。
彼は若くてハンサムな青年です。が、初めてあったその時から坊ちゃんのことをがん睨みしてきてます。なんつーか、俺のオデッサに触れんじゃねえよオーラを感じます。
なんでえなんでえ惚れてんのかよ~お前さん。いや~熱いねぇ若いねぇ。大丈夫だって、二人の仲を裂くなんてそんな野暮なことこの坊ちゃんはしませんて。育ちがいいですから。ええ。
彼は「オデッサが行ってしまったらこの本拠地がカラになる!」と言い張ります。・・・ふっ、んなもん建前建前、本音は惚れた相手が心配なんだろ?わかるよ。
しかしその惚れた相手に、「だからあなたをここに残して行くんじゃないの。いい加減、リーダーとしての自覚を持ってね」と氷のようにクールな言葉を浴びせかけられ、結果何も言い返せず出立を認めることになりました。
お・・・オデッサ・・・・悪気はなさそうだけどもうちょいこう、オブラートに包んだほうがいいと思うよ。あんた今、恋する男のガラスのハートを木っ端微塵にえぐったよ。
「オデッサに何かあったら承知しないからな!」
・・・坊ちゃんを睨みつけながらも見送るフリックが気の毒でたまらない。若干涙目になってんじゃないかとすら思える。
あ、安心しろ。彼女は惚れられない程度に守ってくるから。
かくして一行は設計図を届けに北西へ。
サラディの村へ行くには虎狼山という山を越えなければなりません。それは険しい道のりでした。かたつむりが襲ってきました。胴体がにゅにゅっ!と伸びてタックルをかけてくるというこいつの攻撃は、見てる分には「あ、くらった」で済みますが、しかし実際くらう方はたまったもんじゃないと思う。だってあんた、人間の2倍くらいあるかたつむりが殻じゃなくてナメクジの部分でタックルかけてくるんですよ、グレミオとか泣くよ普通に。戦闘終わったらその場で坊ちゃんの服を洗濯しはじめたりすると思う。
山の中腹まで来たあたりで日が暮れてきました。
都合の良いことに宿屋があります。
亭主のルドンさんもいます。
休んでいきなさいよと声をかけてくれる彼の顔は、Lを葬った時の夜神月より悪でした。
やばいよ皆!!これ絶対やばいよ!!寝てる間に身ぐるみ剥がされるか大量の兵士を投入されるかどっちかだよ!やめといたほうがいいと思います!泊まっちゃだめだと思います!
「悪いけど、先を急いでいるので・・・・」
そのとおりだオデッサ!さすが解放軍リーダー!ルドンの怪しさ爆発に気づいたか!
「私は疲れたので休むのもいいかと」
「俺も賛成だ」
「野宿はごめんだな」
残り3人気づいてねえええええ!!!多数決で負けたよ!!かなり負けるはずのないところで負けたよ!!ビクトール、お前はオデッサを守る気があるのかと!クレオとグレミオも坊ちゃんを守る気があるのかと!!お前ら人を見る眼も無いのによくここまで来れたもんだ!
オデッサ!こいつら一発ガツンと言ってや・・・・・
「ふふ・・・実はね、私ももう足が疲れて歩けないところだったの」
・・・あ、そうだったんだ、オデッサ。そうだったんだ。そうか・・・・うん、じゃあ、うん、君がそういうなら・・・うん、休もうか。
おそらく出逢って初めて見たと思われるオデッサの微笑みに、坊ちゃんがちょっとどきどきしてしまったんでしょう。一行はそのクソ怪しい宿屋の中へ。
部屋は山小屋らしく素朴なつくりになっていました。
椅子にかけてくつろいでいる客のもとに、ルドンがお茶を運んできます。
オデッサがいいます。
「変わった匂いのお茶ね」
飲むなよお前ら。いいか、絶対に飲むなよ。
宿に入ったことは100歩譲って許すとしよう、しかし出されたものには手をつけるな。お茶はもちろん、夕食も、部屋に備え付けてある冷蔵庫の中身とかも駄目だ。まず間違いなく睡眠薬が混入している。そうでなくてもあれは有料でチェックアウト時に請求される仕組みだ。
いいか、とにかく怪しげなものには絶対手をつけないで、注意に注意を重ねてだな・・・
「ずいぶん苦いお茶ですね」
飲んでんじゃねえよグレミオ!!!!
注意しろって言ったそばからどういうつもりだこの馬鹿男!!!!お前のカウントで注意何枚重ねたらそのザマですか!!山田くんこいつの全部持ってってください!!!
「さ、お客さんもどうぞどうぞ」
アァ!?勧められても飲みません、そんな怪しいお茶!苦いのは嫌だ!
「そんなこと言わないで飲んでくださいよぉ~」
怪しんだよルドン!!大体そのお茶なんて名前!?「ぬすっと茶」?飲むか馬鹿野郎!!苦いのは嫌です!!
しかしどんなに嫌だといってもルドンはしつこく勧めて、ついには台詞の無限ループで対抗してきました。
こうなると先に進めないので坊ちゃんはお茶を飲まざるをえません。
飲みました。
そうして全員が飲み始めると、とたんに効き始めるのがぬすっと茶です。
ろれつが回らなくなり、まともに座ってることもできなくなる一同。
「これは・・・・!」と気づくも時すでに遅し。必死にお互いの名前を呼び合いながら、とうとう全員意識を失ってしまいました。
・・・・数分後。
静まり返った部屋の中ではルドン一人がヒッヒッヒと笑って客の荷物をあさっていました。
せっせと金目の物を抜き出しながら、やっぱりぬすっと茶はよく効く、これでこいつらは二度と眼を覚まさないとか言ってます。どうやら睡眠薬どころか即効性の毒薬だったようです。
ものすごく怖い犯罪だろこれ。
誰かが個人的に命を狙われてたとかいうわけじゃないよ、純粋な無差別強盗殺人だよ。カメラワークによっては完全にホラーの域だよ、だから入るなってあれほど言ったのによ!!
しかしここでルドンに新しい客が来ました。ケスラーという怪人物で、どうやらルドンにとっては目上の人物になるようです。
彼はオデッサを見るなり仰天。てめえこの御方になにしやがった!すぐに解毒剤用意しないと首を飛ばすぞ!!とルドンを怒鳴りつけ、その勢いにびびったルドンがあわてて一行を介抱し、どうやら坊ちゃんたちは一命をとりとめました。
元気になったオデッサに、まさか解放軍のリーダーだったとは露知らず!と平謝りのルドン。お詫びに一夜の宿を提供し、もうこれからはぬすっと茶もやめます、といいました。当たり前だ。最初からするな。
一晩ゆっくり休みました。
そして翌日、虎狼山を下りていよいよサラディへ。
サラディはこれまた小さな村でした。
火炎槍の設計図を受け渡す相手は、ここの宿屋で落ち合うことになっているそうです。
一行は宿に泊まります。
夜。
皆が寝静まった部屋の外のバルコニーに、オデッサが一人で佇んでいました。
どうしたの?眠れないの?
声をかけてみると、「話を聞いてくれる?」と、様子がいつもと違う感じです。
もちろん聞くよ。なんですか?
「私ね・・・・ときどき、何もかも投げ出してしまいたくなることがあるの」
みんなの期待に応えられるか不安で、逃げ出してしまいたくなることがあるの・・・
ロックランドのバルカスやシドニア、それに虎狼山のルドンやケスラーの様子を見ていて、坊ちゃんにもうすうすわかってきていました。人々のオデッサにかける期待の大きさというものが。
たとえフリックたちが傍らにいてくれるにしても、オデッサの肩にかかる解放軍リーダーとしての重圧がやわらぐことはありません。
しかしオデッサだって普通の女の子です。山道を歩けば疲れるし、一人で居るときは心細くだってなるのです。
「あなたはこれから先、どうするの?帝国に戻りたいんでしょう?」
それは・・・・戻りたい、っていうんじゃないんだ。今は。僕が取り戻したいのはそういうことじゃなくて・・・たぶん、グレミオとクレオと、パーンと、そしてテッドがいるあの頃と同じところに戻りたいんだきっと。
物言わぬ主人公の行間を妄想で埋めるプレイヤー。
ついでに胸にくすぶってる鬱憤もこぼしておきます。
・・・あのね、テッドって言う親友がいたんだけどさ、パーンっつう最悪なオヤジの罠にかかって帝国軍に捕まってさ・・・
「あなたならきっと考えて、そこから何かをつかみ取れるはず。選びなさい、あなたの道を」
・・・それ、魔術師の島でレックナート様にも言われたなぁ・・・・
「・・・セオは不思議な人ね」
え?僕?
「私、あなたみたいな目をした人は見たことが無いわ」
そ、そうかな。そんなに特徴のある眼でもないと思うけど・・・単なる眼だけど・・・・
「あなたには人をひきつける何かがあるのね。ねえ、もし私が・・・・」
ってちょっと待ったああああああ!!!なんかすみません、いい雰囲気になってしまってすみません、主にフリックに謝罪します!!オデッサ落ち着け、その先はちょっとまた次の機会にしよう!まだ君の事何も知らないに等しいし旅先では人間開放的になるっていうし夜には魔物も潜んでるしホラそこに人影もいるし!!
・・・その人影こそが設計図を渡すべき使者でした。
そうだ、うっかりしてたけど設計図渡しに来たんだったよ。いい雰囲気になってる場合じゃねえよ。
使者は頭の先から足の先まで忍者ファッションでした。またしても見るからに怪しい奴ですね。TPOをわきまえない姿形をした男の登場で、雰囲気なんかたちまち総崩れです。
代わりに緊迫した空気が漂います。
「あなたは・・・・」
「それがしはカゲと申す」
すごい浮いてるんですけどこの人。
何一つカゲってねえよ。ファッションから台詞までトータルで異彩を放ってるよ。一度見たら忘れられない印象なんですけど大丈夫!?「目立つ」って忍びとして致命的じゃね!?もう緊迫感のかけらもないですこの現場!!
オデッサはしかし、人に対して偏見を持たない性格なんでしょう。
軽くカゲを試す質問をした後、確かに使者だと断定します。
「ごめんなさいね、あなたを試したの」
「それがし、契約中の裏切りはいたさぬ」
そのうち敵にまわりそうな予感をさせる台詞をどうもありがとう。
カゲは火炎槍の設計図を受け取り、夜の闇に消えました。
さ、明日に備えてもう休みましょ!とオデッサはさっさと布団にもぐってしまいます。
その様子にはさきほどまでの弱音をはいていた女の子の面影はありません。
『ねえ、もし私が・・・』
さっきはあまりのいい雰囲気に愛の告白かと勘違いしかけた坊ちゃんでしたが、冷静に考えたらそれは普通に早すぎます。他に何か言いたいことがあったのかもしれません。
いつか聞かせてね、オデッサ。
彼女の眠りを確かめつつ、坊ちゃんもまた自分のベッドにもぐりこむのでした。
情熱(の赴くままプレイレポを書き続ける)大陸横断中。
ブログってこういう使い方するもんだったっけか・・・・
それにしても、あれです。皆様からこのレポに関して寄せられる「私も幻想水滸伝大好きです!」っていうコメントの多さにびっくりします。そして誰か一人ぐらいはPSPを買うのを止めてくれる人がいるんじゃないかと思ってたけど誰も止めてくれなったという現実が、このゲームの人気の高さを知らしめている気がしてなりません。わかるよ。PSPにイヤホンと防護カバープラスで買ってもこのゲームはやる価値があるよ。返品なんてとんでもないよ。
でもイヤホンが品切れでさああああ!!いつになったらポータブれるようになりますかこのPSPは!!
星矢ファンの方(そりゃいらして下さる方の100%がそうだろうよ)、知らないゲームレポでブログつまんねーと思われていたら申し訳ありません。
ですが会社では誰一人ゲーマーがいなくて話にならず、叫ぶところがここしかない孤独な管理人にどうか哀れみを・・・見逃してやってください。。。
そして幻想水滸伝をご存知の方でしたら、私がこの先レナンカンプに入ってから出るまでの間どれだけ大変な状態であったか想像がつくと思います。
まあ聞いてください・・・・
坊ちゃん一行はレナンカンプへやってきました。
そこは小さな町でした。ビクトールの言う「会わせたい人」がどこかにいるらしいのですが、彼はその人と話をしてくると言って一人で行ってしまいました。
仕方がないので、残された3人は町を散策します。店を一通り見て回り、民家に侵入し、
「うちの娘、メグっていうんだけど、どこかで見たらよろしくね」
みたいなことを気軽に言われたりします。聞けばメグさんは「冒険が私を呼んでるの!」と言ったまま家を飛び出し行方をくらませたという不思議っ子。どうしよう、押し付けられたよこれ。
まあメグさんについてはそのうち会ったらその時の感じでみたいに終わらせまして、ビクトールが戻ってこないので宿屋に行きます。
泊まります。
するとやってくる大量の兵士。
ひいいいい!!!ビクトール!!会わせたいやつらってこれか!?全員同じ顔で判別不能なんですけど!!どいつに会えばいいんですか!?生きて帰れますか!?っつーかまたタレコミですか!!こんどはビクトールですか!!オヤジは信用するなっていう、そういうこと!?そういう世界!?
坊ちゃんは大慌てです。
しかしグレミオはもっと焦っています。
「やっぱりあんな奴信用しちゃいけなかったんですよ坊ちゃん!」
・・・いや、そういう考え方はよくないよグレミオ。これはビクトールさんのせいじゃないよ。誰のせいでもなくただピンチなだけさ。彼は悪い人じゃない。
なぜかグレミオが焦ると落ち着きますね、こっちは。うん。
兵士達は部屋のすぐ外まで迫ってきました。
ビクトール!どうすりゃいいんですかこの状況!!
・・・あ、そうだ賄賂!賄賂渡せばいいんじゃん!?門番もあれで騙せたし帝国腐ってるってビクトールも言ってた!グレミオ、財布をよこせ!!
・・・と思いましたが、しかしそんなコマンドは出ません。
切羽詰ったその時・・・・
「こっちよ!」
澄んだ声が部屋に響きました。
誰!?・・・はっ!すごく邪魔な位置に置いてあった不自然な大時計の後ろに人影が!
見ればそれは厳しい眼差しをした一人の少女でした。
亜麻色の長い髪に白磁の肌の・・・・
「急いで!」
そうだな。見とれてる場合じゃねえやな。
彼女が時計を動かすと、その下からはあら不思議、隠し階段が。坊ちゃんとグレミオとクレオは促されるまま中へ飛び込みます。
長い階段を下りてゆくと・・・・
・・・そこは地下の秘密基地のようでした。
下水道か何かの空間を利用しているのでしょうか、闇の中を暗い水が川のように流れていて、横道の部屋に人が集まっていました。
ってビクトール!!てめえこんなところに居やがったか!!
「ビクトールの言ってた新しい仲間というのはあなたたちでしょう?」
はい!?
少女の言葉にうろたえる坊ちゃん一行。
初耳なんすけど!!仲間って何の!?聞いてないよ聞かせてよ!!
・・・・・
・・・・話を聞きますと。
なんとここは解放軍のアジトなのでした。
少女の名はオデッサ・シルバーバーグ。解放軍のリーダーで、ビクトールはその仲間。オデッサの隣に並んでいる、フリック、サンチェス、ハンフリーもやはり解放軍の首脳陣だというのです。
そしていつのまにか坊ちゃんも仲間にされかけているらしいのです。
待てや。
「・・・あなたもビクトールに騙されて連れてこられたのね。彼、気に入った人を見ると無理やり連れてくるのよ」
誘拐それええええええ!!!!
困ります!帝国五大将軍の息子が解放軍と内通って、そんなの知られたら親父の死亡フラグが全開で発動してしまう!!放してください!聞いてないです!
抗議する坊ちゃん達(主にグレミオ)に向かって、しかしオデッサは淡々と言いました。
とりあえず今出て行ったら捕まってしまう、そんなことはできないでしょう、と。
・・・・そりゃそうだけどさ。
ほとぼりが冷めるまではここにいなさい、それから後はあなた達の自由よ、と。
・・・・う・・・・クールな子だなこの子・・・・
仕方ない。しばらくはここで様子を見よう。
オデッサのもっともな言い分にあきらめたセオは、話を終えて基地内をぶらぶらしてみます。
すると入り口の所に人が倒れていました。
「オデッサ様に・・・伝えなければならない・・・ことが・・・・」
ちょ・・・!オデッサ!誰か来てる!あんた宛に!ちょっと!
あわてて助け起こし、奥へ運び込みます。
それはロックランドから逃げてきた盗賊の三下でした。
意識を回復した彼が言うには。
「ロックランドの悪代官グレィディが、俺達の親分のバルカスとシドニアを磔にして飢え死にさせようとしている」・・・・
・・・・・バルカス?シドニア?
それって・・・・
「坊ちゃん!バルカスとシドニアってまさか・・・」
「私達がロックランドで捕まえた盗賊じゃないか!?」
そうだよ!ロックランドで悪代官に騙されて明らかに無罪の人をとっ捕まえた、あれがバルカスとシドニアだった!!って・・・
だから言っただろうが坊ちゃん!!
お前ら全員騙されてると!!眼を覚ませと!!カナンを崖から蹴落としてこの仕事を終わらせろとあれほど画面のこっちから言ったじゃないかあああああ!!!!どうすんの二人が日干しになったら!!これ全部うちらのせいだよこれ!!
はいオデッサ!!これ全部僕らのせいです!!
「どういうこと・・・?」
かくかくしかじかのいきさつでグレィディに騙されました!!
そんなわけですからあの二人は僕らが助けます!助太刀は無用!ん?ビクトールもついてきたい?じゃあ来い!!
・・・こうして。
坊ちゃんはなし崩し的に解放軍の助っ人の第一歩を踏み出したのでした。
ロックランドにやってきますと、町の人は相変わらずグレィディ死ね!!ぐらいの勢いで荒んでいました。こんなにガラの悪い町もなかなか無い。
あと、ここの墓場には気になるお墓が一つあります。行き倒れた女性のもので、
「クライブ。お前の手にかかることなく死んでいく私を許してほしい」
と刻まれています。
クライブとこの女性の間に一体何が・・・・いや今はそんなこと気にしてる場合じゃない。こうしている間にもバルカスとシドニアの水分が抜けていっているんだ。
二人はこれでもか!というほど大々的に貼り付けられていました。磔っていうか、貼り付けでした。
磔刑場の周りは柵で囲まれており、猫でも杓子でも入れそうな感じでしたが、坊ちゃんは育ちが良いので柵を乗り越えたりはできません。でも玄関は警備が厳重で入れません。
なので、ビクトールが屋敷に火をつけることにしました。
犯罪ぃぃぃ!!!!
犯罪に対抗するためにさらに上を行く犯罪したよこいつ!!いくら悪代官が悪でも家に火つけたらこっちがより悪じゃね!?水戸黄門が越後屋に火ぃつけたらファンでも疑問を感じるだろさすがに!!その着火した壁の後ろはグレィディの私室だし家族の写真とか飾ってあったら可哀想です!ビクトール!放火はよくないです!
しかしまあつけてしまったものは仕方ないので、警備が大慌てで消火にあたってる隙に屋敷に忍び込みました。宝箱も漁ります。もういいよ。ここまできたらとことんやるしかねえよ。ビクトール、あんたは俺の心にも火をつけたぜ!(キラーン)
こうして坊ちゃんの良心が炎に飲まれたところで磔刑場に到着です。
てめえら俺を笑いに来たのか!?とまだまだ生きの良いバルカスのおっちゃんを開放し、さて次はシドニアを、と隣で磔になってる青年の方に行きましたら。
シュイン!!
一瞬のうちに青年の姿がかききえて、すぐそこに自由な姿で現れました。テレポーテーション。
こっ・・・・!!!
「てめえシドニア!!そんなことできるんだったらなんでもっと早くやんねえんだ!!」
全員の気持ちを代表して怒鳴ったのはバルカスでした。
そのとおりだおっさん!!バカとかアホとかもっと言ってやれ!!
シドニアはニヒルにふっと笑って言います。
「俺があんたを見殺しにできるわけないだろ・・・?」
「シドニア・・・おめえ・・・・!」
うおおおおい!!!感動してるとこ悪いが実は感動するとこじゃねえよそこちょっと待てよ!!順を追って説明しますよ!まずシドニアが縄から抜ける!それからバルカスを助ける!そして二人で脱出する!!それだけのことがどうしてできない!!見張りの問題ならシドニアが家に火でもつければ問題ないだろついさっき実験済みだ!!
しかしそんな坊ちゃんのイーターなソウルは二人にちっとも届きません。
代わりに空気の読めないグレィディが現れたので八つ当たり気味に脅しつけ、バルカスやシドニアも目玉をくりぬくとか恐ろしいことを吹っかけ、結果、悪代官はほうほうの体で逃げ出していきました。
屋敷から出た後。
「呼ばれたらいつでも飛んでくぜってオデッサに伝えてくれ!」と礼を言う二人に別れを告げ、レナンカンプへ戻ります。
・・・道中、ビクトールはもう少し解放軍につきあってみないか、と誘ってきました。
グレミオは不安そうな顔。このまま坊ちゃんが解放軍に引き込まれれば、二度と帝国には戻れません。
クレオはレナンカンプについたら考えればいい、と余裕です。彼女は解放軍につくのも悪くないと思ってる様子。
うん・・・解放軍につくのも悪くない・・・っていうか帝国軍につきたくないよね。ロクなもんじゃないじゃん。今まで見てきた限り。
複雑な坊ちゃんの旅は続きます。
外は雨。どこの店も家もがっちり閉まっており、城へ殴りこみをかけようにも兵士に見つかればダッシュで逃げざるを得ない状況。街の外にもいけない。どこにもいけない。
そんな中で一軒だけ、ドアをあけてくれたのがマリーさんの宿屋でした。
ふくよかであったかい、いかにもおふくろさん的な匂いのするマリーさんは、どうしたんだい!?と驚きながらも一行を中に入れて2階にかくまってくれました。
セオと、グレミオと、クレオ。
皆で竜にぎゅうぎゅう詰めで乗って落っこちそうになってたのがつい数時間前(プレイヤー時間)だというのに今は3人しかいないなんて・・・・・・いかん、また涙出てきた・・・・
これからどうしよう。途方にくれる3人。とにかく街を出て北方に向かいましょう、とクレオが発案します。
北へ行けば大将軍である父、テオ・マクドールがいます。親父に助けてもらって人権を取り戻そうというのです。
でもどうだろう・・・親父は助けてくれるかな・・・
このあいださ、城内で聞き込み調査してたときにさ、「マクドール将軍が北方の守りに行った」っていうのは建前で、本当は解放軍の討伐に行ったらしいっていう話を耳に挟んだんだよね、実は。
それでさ、子供を殴ったり、馬鹿高い税金を巻き上げたり、無実の人間に罪を着せたり、テッドをボコボコにしたりしてる帝国軍って明らかに悪じゃん?反乱してる解放軍てむしろ正義じゃん?それを討伐に行ってる親父ってかなりやばくね?ぶっちゃけあいつも悪じゃね?
パーンに裏切られ、もはや何も信じられない主人公。2D画面でははっきりしませんが、今の彼の瞳は間違いなく死んでいます。
やさぐれながらも時間ばかりが経過するので階下に下りてみました。グレミオが「坊ちゃん、あんまりうろうろしない方が・・・」と心配してくれました。無視。
宿屋の一階は食堂になっており、兵士や旅人が食事をしていました。
その中の一人が「・・・やべーなぁ・・・どうすっかなぁ・・・」とぶつぶつ言っています。
顔が童虎そっくりな彼の名前はビクトール。どうも次の展開のキーマンのようです。キーマンのようですが何度話しかけてもやべーやべー繰り返すばかりなので、そんなやべー人は置いときまして、マリーさんに話しかけてみますと。
とたんにドアをぶち破って兵士がなだれ込んで来ました。
ひいいい急展開!マリーさん逃げて!俺はもうだめです!今なだれ込まれた拍子に兵士の一人にぶつかっちゃってすごいインネンつけられてます!お前らマクドールの息子を探してるんじゃないのか!?ガキの一人にぶつかったぐらいでグダグダ言ってっから出世できねえんだよこの束売り兵士!!
幸いなことに彼らはセオの顔を知らない様子です。
低姿勢で謝って切り抜ければこれ以上大事には至らないで済む・・・・かと思ったところに上からグレミオとクレオが駆け下りてきました。
「坊ちゃん!!」
「大丈夫ですか坊ちゃん!!」
空気読め貴様ら。
大事な坊ちゃんを守りたいのかピンチに陥れたいのかどっちだコラアアアア!!!!
ほら見ろ!バカ兵士が「坊ちゃん?はっ!もしかしてそいつは!!」って流れになってんじゃねえか!!もう自分大人ですから!!もさもさだって一人で倒せますから!!だからこれ以上坊ちゃんとか言わないでください!!ちゃんとセオって名前で呼んで下さい!!しかし現状ではそれもNG!!!!
混乱する現場。仕事を思い出す兵士。全部バラしたくせに「これは・・・まずいですね」などと不吉な台詞をのたまうグレミオとクレオ。カウンターの向こうから市原悦子ばりに状況を見守っているマリーさん。
あらゆる意味でやばい展開になってきたところに、ようやくキーマンが登場してくれました。
「まあまあ皆さん落ち着きなさいって」
軽いノリで、さっきまで片隅でぶつぶつ言ってたビクトールが割って入ってきたのです。
彼は兵士に言います。考えても見てくださいよ、お尋ね者になってるってのに未だにこの辺うろうろしてるマヌケなんているわけないでしょ?
いるけどね。ここにね。
こいつらは俺がつまみだしといてやりますよ。ほらお前ら!こっち来た来た!!
・・・という流れで無事に修羅場を脱出することができました。
ありがとう、ビクトールさん。しかしあんたほんとに童虎にそっくりだね。
ビクトールさんは金もないのにマリーさんの店で夕飯を食っていて勘定をどうしようか困っていたところだったそうです。で、どさくさにまぎれて食い逃げしたんだそうです。
・・・かくまってくれた恩を仇で返してしまった・・・すみませんマリーさん、いつかきっと、宝払いで返すんで待っててください・・・
セオがマクドールの息子だと見抜き、街から連れ出してくれるというビクトール。
その代わり条件があり、なんでも誰かにセオを会わせたいらしいのです。
まあ・・・うん。仕方ない。乗りかかった船だ、最後まで行くしかないよ。確かにこの人は怪しいけど、悪い人じゃないと思うよ、もう脱皮もしないよ。いいから落ち着けグレミオ。行くったら行くんだよ坊ちゃんの命令だっつーの聞けや。
こうして主人公はグレッグミンスターから脱出します。
門番はビクトールが賄賂で買収してくれました。その賄賂はグレミオの財布から出ました。
目指すはグレッグミンスターの南、レナンカンプの街。
当初の目的・北の親父とは真反対の方向に一行は向かうのでした。