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2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
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・・・・キノコは菌子で繁殖したり、胞子で繁殖したり、色んなやり方で増える。
本体は菌なので、試しにキノコを生やしてみて、土地が合わなかったら菌糸になって撤退、なんてことをするらしい。ってことは、キノコにしてみれば生やしたキノコが傷つけられても「あ、ちっきしょう、ここダメだ」ぐらいにしか思わないのかもしれない。
動物でも植物でもない第三の生物。それが菌物。



「ドクツルタケ!いなくなっちゃうって本当!?」
「ん?ああ。今準備してるとこ。菌糸にしようか胞子にしようか迷ったんだけど、菌糸延ばして移動するのも面倒だから胞子で飛んでくことにした。・・・・どの核持ってくかな・・・・」
「やだ!」
「!」
「やだよ!ドクツルタケ行っちゃうなんてやだ!」
「やだったって、もう決めた」
「やだやだ!スギ知ってるよ、スギのせいでしょ、スギが腐生菌で木枯らしちゃうからテングタケの皆怒ってるんでしょ、生きてる木が無くなっちゃったからドクツルタケここにいられなくなったんだよ!ドクツルタケは外生菌根菌だもん!」
「そんな風に考えるなよ。何でも自分のせいにするな、スギ。ナラタケじゃあるまいし、お前に木枯らす力なんかねえよ。お前は枯れた木か、もしくは枯れかかった木に生えるだけだ」
「同じことだよ!スギがいるってことは枯れるってことだもん!」
「馬鹿だな、お前が分解してやんなきゃなんの役にも立たない枯れ木がずっと転がってるってことなんだぞ。根元で待ってる次の若木が伸びられないだろ。腐生菌は有機物を食べて無機物に還す。植物はその無機物を食べて有機物を生む。そうやって自然は回るんだ。有機物を全部無機物に変えられるのは動物にも植物にもできない、菌物だけの力なんだ、お前は自分のしなきゃいけないことしてるだけだ」
「でも・・・・でも・・・・!」
「それに俺は木が無くなったから出てくわけじゃない。この辺がドクツルタケの群生地で人間が来なくなったからな、生えてるのもつまらなくなったんだ。もっと面白い場所に生えたいだけ」
「・・・・・なら、ならスギも一緒に行く」
「ダメ」
「なんで!」
「お前まだガキだから」
「!」
「人間の近くは厳しいんだよ。踏み潰されたり引っこ抜かれたりする。お前なんか有名な食用キノコなんだからあっという間に根こそぎ採られるぞ。街に行くのはちゃんと負けないだけの増殖力を身につけてから。な?」
「・・・・・・」
「じゃあな、スギ。元気でな」
「ドクツルタケ!いやだよう、行っちゃやだよう!」
「泣くなって。お前ほんとガキだ」


・・・・・・・・・・・・・・・・


ドク「・・・・・・・スギ」
シロ「え?」
ドク「・・・・・・・・・。寝てた?俺」
シロ「うん。ぐっすり」
ドク「・・・・・・・・・何か言ってた?」
シロ「スギって言ったよ今。スギヒラタケのこと?」
ドク「ほんと何でお前そういうとこだけ聞いてるわけ?」
シロ「聞いてちゃダメだった?」
ドク「・・・・・・今何時?」
シロ「もうすぐ夜になる」
ドク「・・・・もう帰れよ。昨日も帰ってないんだから」
シロ「うん・・・・・」
ドク「俺大丈夫だから」
シロ「・・・・・わかった。明日また来るね」
ドク「・・・・ああ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

シロ「じゃあね、ドクツルタケ。おやすみー・・・・っ!?」
ツチ「ドクツルタケ君の病室はここかね」
シロ「あなたは・・・・」
ツチ「私はツチグリという者だ。この子の付き添いでね」
シロ「スギヒラタケ・・・・・!」
スギ「・・・・・・・・・」
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