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2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
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イギリスの紅茶熱を駄目押しする事実。

19世紀末に一人当たり年間1.8キロに増えた紅茶消費料。
それでも満足しない紅茶会社はさらなる売上を目指して抱き合わせ販売戦略に売って出ました。

「奥様にお知らせします!ネルソン社の未亡人保険は御主人を亡くした方に、週5シリングの保険金を差し上げます。毎週110グラムずつ当社の紅茶をお買い求めいただければこの保険がつきます!」


なんでそこと抱き合わせようと思った。
広告うった時点でこの紅茶会社は保険金用に20,000ポンドを政府に供託してたそうで、会社のもうけっぷりが窺えます。


それにしてもこの本、絶版になってるのが惜しい。
今では問題視されかねない記述(例:日本軍ハロハロスパイ伝説)も散見されるので再版は無理でしょうが、図書館に置いて欲しい本だと思います。


※日本軍ハロハロスパイ伝説とは。
太平洋・インドネシア編収録のフィリピンの伝説で、日本軍がハロハロ屋に化けてフィリピン全土をスパイしてたという疑惑。ハロハロとはココナッツミルクかけたかき氷。日本人がこれの喫茶店を始めてフィリピンで大ブレイク。が、直後に太平洋戦争勃発。日本人撤収でハロハロ屋が消え、元ハロハロ屋の親父が憲兵になって戻ってきたの見た!という地元民が現れ、さては巧妙なハロハロスパイ作戦だったのではということになった。たぶん違う。そして日本はスパイ疑惑かけられるときくらい食い物から離れろよ。
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引き続きイギリス料理。
イギリスの料理は不味い説を強烈に裏付けながら突っ走る本書において、第三章「紅茶とケーキ」は読者が著者にシンパシーを感じられる唯一の部分かもしれません。

小エビのペーストのサンドイッチ、薄切りのきゅうり、トマトとおろしたチーズをはさんだ四角な白いパン、ハム入りのロールパン。
ジャムや濃いクリームをかけたスコーン、チョコレートケーキ、モカケーキ、カフェライシードケーキ、ひき肉入りロールパン、ハムのサンドイッチ、薄く切ったポークパイ。

どうですか。すごく美味しそうじゃないですか。4時のお茶がこれで何で夕食がかたまりのハムになるのか。
もっとも、ここまでするのは特別の時だけで、普段は簡単に済ますそうです。いつでもどこでも簡単に済ますことができるよう、携帯用コンロと湯沸かしとティーポットを旅先(国外)に持ち込み、「お茶の時間になると道端で紅茶を入れて飲み始める」。

「土地の人は何事だろうと目を見張り、やっぱりイギリス人は風変わりな人種だという、ヨーロッパで何世紀も前からいわれてる悪口を思い出すのだ」


それは悪口じゃない。
ただの事実だろうが。いきなり道端で湯沸かして茶飲み出す外人見たら誰だって何事かと思うわ。あんたら何世紀もそんなことやってんですか。

ちなみに、「自国では誰も変な目で見ないからみんな気兼ねなくお茶を飲みにでかける」だそうで、だったらお前ら国内でやってろよというのが旅先にされる近隣諸国の心中なのではないでしょうか。そもそもいつお前が気兼ねしてたよみたいな。

このように、イギリス人は紅茶好きという固定観念を、覆すどころか耐震補強してくれる記述はまだまだあります。

例えば、カップに紅茶を先に入れるかミルクを先に入れるかの問題は、「かつてロンドンタイムズの読者寄稿欄で何ヵ月も議論が繰り広げられ、未だ決着がつかない」とあります。現在でも決着ついてないので少なくとも30年と数ヶ月は論争が続いていることになります。日本のきのこたけのこ論争程度は、イギリス様にとっては30年前の通過点に過ぎません。
ただ、両派で分かりあえる部分が無かったわけではないようです。

「ミルクは必ず冷たいものを使うという点だけは両派とも一致している。私はかつてフランスで熱いミルクを入れた紅茶を飲まされたことがあるが、これはひどいものだった」


かなりどうでもいい。
ミルク云々より、あんたどんだけフランス嫌いなんだ。


・・・このように、紅茶に関する部分は色々アレですが、先に述べたようにお茶菓子に関しての記述は本当に美味しそうです。
イギリスの子供にとってはママや近所のおばさんが焼いてくれるケーキがとっても嬉しいのです。
筆者も、小学生のころにラード入りケーキが大好きだったと書いています。
これはラードと小型のぶどうをたっぷり入れた白くて丸くて膨らんだケーキで、お腹をすかせた子供にはもってこいだったようです。
また、子供にとってはクリケットの試合はぜんぜん面白く無かったけど、試合後に出てくるエクレアやメレンゲが楽しみだったともあります。いいなあこういう感じ。

・・・と思ったら。

「しかし気にいらないごちそうもある。たとえばロック・ケーキはごつごつした堅い生地の中に干しぶどうがぱらぱら埋め込んであって、まるで禁欲主義者の食べ物だ。サフラン入りのパンも同じ部類に入る。イギリスの頑固な農民気質そっくりで、頑強な歯と心臓の持ち主でなければ歯が立たない」

・・・。
・・・パン食うのになんで心臓の丈夫さが求められて・・・

「ロック・ケーキはもともと武器として作られたのだと、こどもたちは本気で信じている」

っていうかあんたが言ってそう、子供に。
この人相当なユーモラスじじいなんだろうなあ・・・

第三章は、さらに、干しぶどう入りの砂糖衣をかけた甘いロールパン、アーモンド入りパイ、バス・バン、サリー・ラン・ケーキ等の紹介と、下に行くほど溶けたバターが染み込んでいるクランビットなどを述懐して、シドニー・スミスの言葉でしめています。

「お茶がなかったら、いったい世界はどうなってしまうのだろう」


イギリスすぎるだろこの本・・・
引き続きイギリスの料理です。

私は今までイギリスの料理は不味いと思っていました。むしろイギリスに料理は存在しない説を半ば信じていました。
このたび、その偏見が払拭されることを願って読んでいるこの本。
幸い筆者は世界の偏見をひっくり返す気満々です。っていうか、筆者は微塵もイギリス不味いと思ってない、ありのままイギリスの食卓を語ればみんなイギリス料理食べたくなると思ってる、そんな状態です。
そんな状態でありのまま書かれた本文がこれです。

「ジョーンズ夫人は夫の健啖ぶりに目を細めた。この日の夕食は、かたまりのままゆでたハム、バターミルクであえたマッシュポテト、バターミルクを使ったケーキ、トマト3個、それに一切れか二切れの焼きたてのパンである」

・・・・・・・

「夫はおいしかったとか満足したというそぶりは少しも見せてくれなかった。だいたいイギリス人は感情を外に表さないことが多い。しかしジョーンズ夫人は、夫が自分の料理に満足している事をちゃんとわかっている。もしジョーンズ氏が一週間以上も妻の手料理を食べられないはめになったとしたら、彼はいらいらしだすに違いないのだ」


手料理ってどれだ。


夫婦仲がとても良さそうなところ恐縮です。しかし片付けなきゃいけない問題があるんじゃないのか。特にかたまりのままゆでたハムとやらに。

偏見覆すどころか開始半ページでとてつもなく肯定されてしまった・・・駄目押しのように「ジョーンズ夫人の作る料理はそれこそわが家の味そのもの。ここにイギリス料理の真の姿がある」って、筆者お前だからちょっと引いて物事を見ろっつってんだろがあああああ!!「近所のエヴァンズ夫人の料理も大して違いがあるわけでは無い」とかいいから!書かないでいいから!どんどん取り返しがつかない方向に確定されてってるから今!フランス人から見たらたぶんそれ料理じゃなくてサンドイッチの材料って言われる!

・・・一応ですね。弁護すると、この場合の夫人の手料理は、パンを指すようです。決してかたまりのままゆでたハムではありません。
日本人の感覚だとちょっと違和感ありますが、主婦の手料理や思い出の家庭料理にまっ先にあがるのがどうもパンらしいです。

スコットランド名物を並べたという写真も、15品中10品がパン、2品がオートミール、あとはチーズとバターとニシンという構成になってます。
なのでパンは料理のうちに数えない食文化の国々からすると、イギリスに料理は無いことになりますね。

いや、でもまて、これはまだ第1章じゃないか。タイトルは「主婦の手料理」ってなってるけど、訳が間違ってただけでほんとはパンの章なんだろう。
第2章はほら、いよいよ炭水化物でない料理の話だ。タイトルが「日に3度食べたい朝食」。そう、イギリスでも朝食はおいしいって言いますね。筆者も誇らしげに書いてます。1ページまるまる割いてベーコンエッグを力説し、とどめに、

「慌ただしい現代でも、朝の食事をゆっくり味わう余裕がある人にとっては、3度の食事のうちでいちばんおいしいのは朝食である。作家のサマセット・モームは、イギリスでおいしい食事がしたかったら朝食を一日三回食べるのがいい、とまで言ってる」


それ褒めてるんじゃないよ。


ちがうんだよ。サマセットはたぶん、あと二回の食事何とかしてくれって言いたかったんだと思うよ。

・・・この本、イギリス料理の是非はともかく、筆者が可愛くて仕方ない。
なんかもう、イギリス可愛いよ、うん。

パンレシピは素朴ですが、たぶん作ったら美味しいと思います。 そして何より次章の焼き菓子。これは本気で美味そうだ。
ていうかね、インドネシア編は筆者が元従軍記者のアメリカ人でした。色んなところで色んな物を食べまくってた人だけあって舌が肥えてましたよね。


今回、イギリスで生まれてイギリスで育ってイギリスの物食って育った人がイギリスは美味いって言ってるんだけど大丈夫なのかこれは。

イギリスの味付けが素朴なのは素材がいいからわざとそうしてるんだみたいな主張してるぞ本当に大丈夫か。



それにしても料理本で、釣ってこいならまだしも撃ってこいと言われるとは思わなかった。
前回、三十年前の料理本が面白すぎると書きました。
あれはシリーズ中の太平洋・インドネシアの巻でした。
材料にタロ芋の若葉とか豚一匹、アヒル一羽などと書かれても、なんとなくそれはまあ、南国だしガチガチの近代国家じゃないし、みたいな感じがありました。

今回はガチの近代国家、産業革命、味の砂漠、イギリス編です。

最初にね、シリーズ見た時から興味あったんですよ。なんでイギリスと中国が一冊ずつあるのかと。どうしてこの二国が料理において同レベルの扱いなのかと。
いまや世界において料理のまずさがアイデンティティとして確立されているイギリスですよ。
インドネシアの料理の序文が、欧米人は敬遠するがまず食べてみろ美味いから、みたいなノリだったんです。巻によって筆者はかわりますがきっと、イギリス不味い言われてるけど美味いものもあるわ!的な論調で行くのでしょう。

そう思って読んだ序文。

「イギリス料理独特の味わいと特色は何世紀も前に形作られ、世界中に知られるようになった」

ちょ・・・!!

「イギリス人は肉をよく食べるからローストの技術が最高に発達した」
「蒸したプディングや山形に盛り上がったパイ、豚肉や魚のゼリー寄せや多彩なパンケーキなどの名物料理も作り上げた」
「イギリスの食べ物は素朴で、味に当たり外れということがない」
「イギリス料理は滋養に富んでいる」
「フランスと違っていわゆる高級料理とか豪華なレストランで優雅な料理を食べる習慣は無い。イギリスは盛り付けの差はあるにせよ、国王から庶民までが同じものを食べていた。富める帝国として世界各国と貿易し、お茶やコーヒー、米、香辛料や果物など、世界の最高級品を輸入し、これらはみな家庭料理に使われたのだ」・・・


マジ褒めだよ。どうすんだよ。なんか凄い勢いで俺様臭がするんだが。よーし引いてみよう筆者、ちょっと引いて謙虚な見地から物事を見てみよう。ていうかおたくはどこの人ですか。
「私はカンバーランド州のいかにもイギリスらしい田園で育った」・・・オーケーオーケーそりゃそうだろう、ここまで堂々とイギリス料理を絶賛する奴も序文から忘れる事なくフランスにケンカ売る奴もあんたらだけだ。

さすが栄光ある孤立の国イギリス。
先をちら見する限りレシピの半分以上が料理っつーか菓子類で埋まっている気もするんですが今は触れない方向でいきます。
ローストが発達ですからね。最高に発達いうからには何か絶品肉料理の一つや二つはのってるに違いな・・・

【野鳥のパイ】
材料・・・やまうずら2羽、バター大さじ5杯、卵、牛乳、etc
*やまうずらの代わりに、きじ、やましぎなど、狩りでとってきた野鳥を使っても良い。


・・・イギリス様・・・・

雷鳥を撃つには良い目とすばやい判断力が必要とか書いてある。
これもう誰に向けた何の目的の本なんだ一体・・・
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