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2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
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私は江頭2:50がとても苦手なんですね。
なんか痛々しくてとても笑えないんです。すごく良い人だと言われていることは知っている。実際善人なのだろう。全ての人に笑いを届けたいと言う彼の熱意もわかっている。
しかしむしろ善人であればあるほど彼の芸風が痛々しく見えて気の毒さが先行し、こういう人で笑ってはいけない感じがして全く笑えず、結果的に彼の笑って欲しいと言う要求に応えられないことでさらに心が痛むと言う、負のループに陥るんです。
それが私にとっての江頭2:50です。

しかしこのたびJOKERを見た事によって、私は道徳心と倫理観を便所に叩き捨てれば江頭2:50を笑ってあげられるのかもしれないという手ごたえを掴みました。

JOKERは、ここからいきなりネタバレですが、要するに狂人の妄想に2時間つきあうという映画です。
アーサーというコメディアン志望の中年男がおり、年老いた母と二人揃って精神を病みながらどん底の生活をしています。彼は突発的に笑いが止まらなくなる病を抱えており、そのせいで気味悪がられてやることなすこと上手くいかず、追い詰められた挙句に人を殺してしまいますが、それが世間の下層階級にウケて、本人には何の思想もないまま勝手に悪のカリスマにされていく。最終的にジョーカー誕生・・・
・・・というところで場面が転換。今までアーサーとして登場していた男が精神病院でカウンセリングを受けています。
おそらく今までの経過全てはこの男の考えた「ジョーク」だったのだろうという台詞で、映画は幕を閉じるのです。

ラストシーンの病院は、それまでに出て来た病院とは色も空気も違い、存在する時代がそもそも違うように思えます。ずっと語られてきたのは近代ですが、ラストのみ現代です。
そこにいる男がジョーカーなのか、それとも単なる狂った一人のファンなのか、何もわからないまま終わります。

映画の大半はひたすらアーサーの痛々しい生活と狂っていく経過で占められており、初めて見ると心が痛みますが、これ全て「ジョーク」であると思って二度目を見ると、おそらく全ての痛い要素が過激なブラックコメディに変わっており「やりすぎ(笑)」と笑える気がします。
しかし、初見の何も知らん人が占めるであろう映画館であの内容を笑ってみてたら確実にヤベー奴と気味悪がられるので、期せずして作中のアーサーの立場に身を置く事になる。

そういう風に作られている・・・と思います。

なんつっても「ジョーク」ですから、作中のジョーカーへ同情することも、彼の言葉に感銘を受けることも、全て冗談を真に受ける馬鹿、ということになります。
一見、虐げられた下層階級と踏みつける上流階級の対比のように見えても、アーサーは下層階級からも上流階級からも平等に殴りつけられていますし、下層階級のデモも上流階級の見る映画もどちらも共に楽しんでいる。
彼は何も無い空っぽの狂人で、そんな人間を都合よく解釈して仮想敵にしたりカリスマにしたり、勝手に踊りまくる蒙昧な群集をただただ嘲笑する、そんな映画でした。

そこで江頭です。
痛々しさを全て「ジョーク」だと考えると逆に笑えてくる事実がJOKERによって示されたわけです。
江頭2:50の芸も本人はジョークだと思ってやってるわけで、JOKERは虚像だが江頭は実存だというすげー違いはあるものの、彼から感じる痛々しささえ私が勝手に押し付けた倫理という名の虚像だと考えれば、そして彼がそうした残酷な嘲笑さえ彼の望む「笑い」であると思ってくれる・・・と考えるならば、私は彼で爆笑することもできるはずです。
一言でいえば「笑いのツボから外れてる」というただそれだけのことをここまで考えて克服する必要があるのか。それはこの際置いときます。


まあとにかく、JOKERの解釈は千も万もあるでしょうから、内容はもういいです。
どんなに深い内容でも、ホアキン・フェニックスの魅力以上にこの映画の点数を占める事は無い。
ほんと心持って行かれる。最初っからどん底にダメなところからでもがっちり掴んでくる。ラグビー選手と全てが真逆なのに男の魅力って結局何なんだろう。
アメリカではこの映画に感化されて無差別殺人が発生するのではないかと警戒されているそうですが、日本は日本で急な階段から転げ落ちる事故が起こりそうですよね。
絶対いるよ。踊りながら階段下りる奴。

ホアキンジョーカーでバットマン一作作ってくれないのかな・・・もっとジョーカーなところが見たい。3時間歩き続けるだけでいいから撮ってくれないかな。
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