忍者ブログ
2007年1月8日設置 サイト→http://warakosu.syarasoujyu.com/
[225]  [224]  [223]  [222]  [221]  [220]  [219]  [218]  [217]  [216]  [215
           


『どうしたお嬢さん。泣きそうな面してるぜ、美菌が台無しだ』
『!あの』
『うん?』
『実は、鼻緒が切れてしまって・・・もし何かお手持ちの物があれば』
『ああ、歩けねえのか。見せてみな。ついでやる』
『申し訳ありません』
『いいってことよ。肩つかまってな』
『は、はい。失礼いたします。・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・・。そら、これでいいだろう』
『ありがとうございます。お急ぎのところお手間をとらせまして申し訳ありませんでした』
『別に急ぎの用があるわけじゃねえ。あんた見かけない色だな。この辺のもんかい』
『いいえ、その・・・昨日、山から風に運ばれて参りました』
『迷子じゃねえか。アテはあるのか?・・・無さそうだな』
『・・・・・・・・・・』
『来な。こんなところで生えてたら人間に踏み倒される。俺が面倒見てやれるわけじゃあねぇが、宿くらいは見つけてやるさ』
『あ、ありがとうございます。・・・・あの、私はベニナギナタタケと申します』
『ベニナギナタか。いい名だな。あんたに似合ってる』
『よろしければあなた様のお名前もお聞かせくださいませんか』
『あなた様はよせ。俺ぁカエンタケだ』
『カエンタケ様』
『カエンタケ』
『?カエンタケ、様』
『様をよせっつってんだ。カエンタケでいい』
『カエンタケ・・・・さん』
『・・・・。まあ、そのうち慣れてくれりゃあいいさ。よろしく頼むぜ、ベニナギナタ』
『は、はい。こちらこそよろしくお願いいたします』



カエ「・・・・・あれから随分経ったもんだな」
ベニ「・・・はい」
カエ「なんだかんだで俺と一緒に住むことになっちまったが、よくまあ今日まで堪えてきたもんだ」
ベニ「堪えるだなんて、そんな」
カエ「あのあばら家はそんなに居心地がいいかい」
ベニ「・・・はい。私にとっては、とても」
カエ「そうかい。・・・・・・・・」
ベニ「・・・・・・・・・。今、カラカサタケさんがお留守番をしてくださっているのです」
カエ「カラカサタケ?あいつが来てるのか」
ベニ「はい」
カエ「よく置いてこれたな、お前ぇ」
ベニ「雨が降ってまいりましたから傘を・・・・」
カエ「傘なんざ」
ベニ「それと。私はカエンタケに、話したいことが、あるのです」
カエ「・・・・・・聞こう」
ベニ「はい。・・・・・・・・」
カエ「・・・・・・・・・」
ベニ「・・・・・・カラカサタケさんが仰っていました。カエンタケは昔からずっと変わらないと。面倒見がよくて頼りになって、そういう良いところは何も変わらないと」
カエ「・・・・・・・・・」
ベニ「わ、私もそう思いました。ドクツルタケさんが怪我をされたと聞いたとき、色を変えて飛び出して行ったあなたを見てそう思いました。気づいたのです。あなたは、私が初めて逢った時からずっと、何も変わっていなかったのだと・・・・・ただ私が、人間の動揺に惑わされ、勝手にあなたを見損なってしまっていただけなのだと・・・・」
カエ「・・・・街の人間はキノコにゃ不慣れだ。毒が一本ありゃ大騒ぎする。別にお前ぇのせいでもないだろうさ」
ベニ「いいえ、いいえ、私が至らなかったのです。私はあなたのために悩むようなフリをして・・・・その実、私のそんな振る舞いこそがずっとあなたを苦しめていたのです。そのことが今ようやくわかりました。・・・・本当に、私は馬鹿なキノコ・・・・」
カエ「泣くな。お前ぇを悪いと思ったことは一度もねえよ」
ベニ「・・・・カエンタケ・・・・」
カエ「むしろ感謝してるくれえさ。そうまで悩みながらよく俺と居てくれた。馬鹿というよりゃ酔狂なキノコだお前ぇは」
ベニ「・・・・・・・・・」
カエ「・・・・・・・・・」
ベニ「・・・・・ふふ」
カエ「・・・・ん?」
ベニ「やっぱり、あなたは優しいのですね、カエンタケ」
カエ「どうだかな」
ベニ「そうですよ。あなたは優しいキノコです」
カエ「そうかい」
ベニ「そうです。だから・・・・・だから私、その優しさに甘えているようではいけないと」
カエ「・・・・・・・・・」
ベニ「いつまでもあなたの温もりの上に菌糸を張るような真似をしていてはいけないと・・・・そう思いました」
カエ「・・・・そうか」
ベニ「はい。私は、心を決めました。・・・・・カエンタケ」
カエ「ああ」
ベニ「長い間、お世話になりました。私は山へ帰ります」


カエ「・・・・・決めたのか」
ベニ「はい」
カエ「そうだな。いい面になった、お前ぇ」
ベニ「・・・・・はい」
カエ「山じゃさぞかし綺麗に咲くだろう。どんな花もかなわねえぐらいに咲くさ。一時でも街で暮らした女はいい艶が出るもんだ」
ベニ「・・・・・・・・はい」
カエ「泣くなよ。手前ぇで決めといて手前ぇで泣いてりゃ世話ねえぞ」
ベニ「・・・・・はい・・・っ・・・・」
カエ「・・・・・・・・・・・・」
ベニ「・・・・・・・・・・・・」
カエ「・・・・・・ベニナギナタよ」
ベニ「・・・・はい」
カエ「もう少しこのまま歩かねえかい」
ベニ「・・・・・・・!」
カエ「明日になりゃ身支度だなんだで忙しくなるだろう。このまま日のあるうちに昔語りも悪くねえ。・・・・カラカサの奴ぁほっといてもいいさ」
ベニ「い、いいのでしょうか」
カエ「いいさ。お前ぇは歩きたくねえかい」
ベニ「あ、歩きたいです!」
カエ「だろう。決まりだ。来な。・・・・鼻緒が切れたらついでやる」
ベニ「!はい・・・!」



・・・・・主役カップルより気になる脇役カップルがドラマには必ずいる。こいつらがまさにそれだ。
上の絵はカエンタケがベニナギナタの方に傘を差しかけているんだが傘描くとベニが見えなくなるので適当にきりました。そして右上に傘のてっぺんのとこを描いて傘の存在を出そうとしたんですが、和傘のてっぺんのところってそれだけ描いたらどうしても、どうあがいても乳首に見えてな。本当にそのまんま乳首にしか見えなくてな。そうするともう傘っていうか乳なわけよ。
それで結局、カエンタケが変な棒持ってるみたいになりました。合掌。
PR
[225]  [224]  [223]  [222]  [221]  [220]  [219]  [218]  [217]  [216]  [215

Copyright © 『日記』 All Rights Reserved

Template by ゆうじ

忍者ブログ [PR]