2007年1月8日設置
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法正の女性向け親愛台詞を聞くべく、月英プレイで隠れ処に呼ぶ。
不倫だよ。明らかに。
でもね、仕方ないんですよ。無双8はキャラの組み合わせ制限厳しくてね、女キャラは少ない上に登場期間も短いんです。鮑三娘も銀屏も星彩も法正が退場してからしか使えないし、他勢力の女を使うと法正を探して知り合うのに一苦労だし、月英しかいないんですよ。
野郎相手の親愛台詞は聞き放題なんですけどね。ええ。この親愛システムは何か違う目的のシステムになりつつある気がしますよ。
手紙を送ったら例によって速攻で平服姿の法正が来てくれました。
衣装お披露目時はどうした法正と思った平服ですが、実際歩いてるの見るとそんなに悪くないですね。首に巻いた紐が限りなく趣味悪いだけです。
・・・この人はドリームキャッチャーと言い紐と言い、首に何か巻かなきゃ死ぬ呪いでもかかってるんだろうか。
法正「帰りを待っていましたよ。首を長くして・・・ね」
お待たせして申し訳ありませんでした。
もしかして私、待たせただけで恨まれましたかね。
法正「この悪党をもてなすとは、貴方も度量が広い。それとも・・・返礼を期待しての投資ですか?その心中はさておき、売られた恩は必ず返しますよ」
ごめんね、恨むどころか恩を感じてくれていたのね。
ただ友人として招いただけでこんなに感じ入ってくれるって、友達どんだけいないんだよ。
関係無いですが、法正は聞き上手そうですよね。人の本音とか弱みとか聞きだすだけ聞きだして何かの足しにしてそう。
月英もうっかり「声が小さすぎて聞き取りづらいのです」くらいは亭主の愚痴を言ってしまいそう。
そんな感じで1回目の訪問は終了しました。
続いて2回目の御招待です。例によって、次の隠れ処に移動するだけで即来ます。
法正「帰りを待っていましたよ。首を長くして・・・ね」
なんか借金取りみたいですね法正殿。
まあ、二度目の訪問からは女性向けの会話をしてくれるはずなんで、少しは照れるか褒めるか戸惑うかしてくれるんだと思いますけども・・・
法正「あなたは悪党を囲っている・・・。そんな噂が流れているかもしれませんね。なんなら、事実にしてしまいましょうか?」
二度目で抱きに来るか貴様。
照れも褒めも戸惑いもないね。凄いよね何だか知らないけどこの人の思考。こんなに嫌われ者の俺を招いてくれるんなら逆に好きなんでしょう?みたいなネガティブの追い風を受けて前に超来る。
人は後ろ向きでも前に走れる。見習いたい、この姿勢。
いや、しかし、大切な人に噂が立ったら迷惑かけるかもしれない、とかは考えないんですかね。こっちのことはそこまで大切には思ってないってことか。
そう思うとちょっと悲しくはありますね・・・
でもまあ月英も本命は別にいるしな。
噂立てられるのはガチで困るけど、孔明様も荊州がどうたらでそんなこと構ってられなさそうだし、遊びの関係と割り切ってGOということか。だってもうこの隠れ処システム自体、不倫およびホモ専用機能に近いしね今作。
法正なら多少乱れようと少なくとも国の不利になるような腐敗はさせまい。最低だけどもういいや。やっちまえ。
・・・ということで、一線を超えたであろう二人。
考えてみれば無双7でも2回目の逢瀬で、しかももっと際どい台詞で推定一線越えしてました。
あの時は3回目の逢瀬であなたの全てを知りつくしましたからもう逃げられませんよ感出してこられてインテリヤクザかくあらんと思ったものでしたが、さて、無双8では最終的にどこに行きつくのか。
三回目の御招待、GO!
法正「あなたの側は不思議と心地がいい・・・。そちらも同じ気持ちなら、これ以上ない幸福ですよ」
・・・・。
趙雲とかが言ったのならきっと爽やか極まりないであろう台詞が、なぜこんなにも裏がありそうに聞こえるのか。
今作、この台詞は文字だけで声が無いので、別にイントネーションで嫌みに聞こえるとか、そういうわけでも無いんですよ。
人は顔だけで勝手な印象をもたれるということをどこまでも掘り下げていく男法正。何のために。
法正「こちらを差し上げましょう。・・・俺への返礼?あなたが喜んで下されば、それだけで十分ですよ」
あ、傷ついた虎の牙くれた。
嬉しい!ありがとうございます!
喜ばなければあなたもこうなりますよっていう意味じゃ無いといいな!
いや、ほんとに、爽やかな台詞しか言ってないのに何でそんなに疑わしいのか法正よ。
まあ普段の行いですよね、要するに。普段の行いも無双8内に限ってはお前何一つ外道な事してないけどな。
むしろ悪そうな顔してるのに言ってる事が妙に視野が広くて温和なせいで物凄く格好良く見えてるところがあるよ今作。
もっと自分に自信を持とうよ。肩がぶつかった人が悲鳴をあげて逃げたり、訳も無く道で遠巻きにされたりしたくらいでそんなくよくよ?ぎすぎす?ギトギトしなくていい。
ことあるごとに自分を悪党とか卑下するから爽やかな台詞もなんかギトギトして聞こえるんだよ。
あなたは普通に素敵な人です。自信を持ちましょう法正殿!
法正「俺が入り浸って、あなたに近づく者が減ったかと。・・・寂しいとは言わせませんよ。この悪党が、何人分でも相手をしますから」
凄い自信だなおい。
3回目にしてどういう関係!?何人分ってナニを何人分!?もしかして暗に諸葛亮殿のこと念頭に置いてますかね、そういう意味でそういう感じなら刺激強すぎるんで自重してください!蜀はお前が参戦するまでそういう国ではありませんでした!
そもそもあれか、2回目で噂ばら撒いてたの法正本人の可能性あるのかもしかして。
こちらを孤立無援にして逃げられなくするための策か。さすがだなヤクザよ。
ていうか、エロい意味でも凄いけれども、エロくない意味だったらもっと凄くないですかこの台詞。よっぽど出来る奴か詐欺師じゃなきゃこんなこと女性相手に言えないですよ。いくら月英ったって女は言われただけで永遠の約束だと捉えますよ。大丈夫か法正!
でも確かに法正、諸葛亮とほぼ並ぶ国家の頭脳な上に、地位も金もありますからね。無双法正の場合はそれに加えて容姿と武力もありますしね。
大体、「受けた恨みも恩も必ず返す」って言い方変えればクソほどマメってことですからね。確かに何人分でも相手出来るんでしょうね。
さらに深読みすると、割と正史通りの台詞なのかも・・・
法正は地位についてから私怨で人を処刑したので性格クソだったと書き残された人物ですが、彼を処罰するべきだと進言する人がいても、諸葛亮はその功績を上げて訴えを退けています。
人材不足に喘いでいた蜀において、諸葛亮としては「じゃあ貴方が法正以上の仕事できるんですか」ぐらいは思ってたのではないでしょうか。
割と仕事を抱え込むタイプの諸葛亮がそんな対応をするほど法正には任せていたわけで、事実、何人にも代えがたい人物だったのでしょう。
また、私怨で処刑した、というのも、少なくとも処刑された人は法正にそこまで恨まれる何かをしたわけで、その何かが蜀にとっても害であると諸葛亮や劉備は思っていたかもしれません。
例えば、職場できっちり仕事をしつつも人の悪口を言いまくる社員がいたとして、それ自体はそんな大した犯罪ではありませんが、その悪口が広がって職場の雰囲気も悪化すれば、小さい会社であれば十分に傾く素因になるものです。
そういう人物を法正が「悪口を言われたから」という理由でぶっ殺したら、それは確かに暴虐ではありますが、蜀的には大変助かる暴虐ではあったでしょう。
なまじ左遷して他国に流れてそこでこっちの愚痴垂れ流されても最悪ですし。小人の害を除くのに法正は最良の人物だったのかもしれません。
など、色々考えてしまう深い台詞でありました。
いや、別にそんな意図もなく、ただのドエロい台詞なのかもしれませんが。
うーむ。やっぱり法正かっこいいですね。
今、無双界一大嘘なキャラ紹介をされている男・法正。
ナレーション
「法正、字は孝直。冷酷無比かつ謀略に長けた人物である。彼は日々、劉璋の配下として益州の統治に苦心していた」
いや、それただの偉い人なんじゃない?
いきなり冷酷無比から始まってるけどいきなりもう冷酷無比じゃなくない?
統治に苦心しながら冷酷無比できる?
「だが、劉璋の器はどうしようもなく小さかった。そこへ、劉備との同盟の話が持ち上がる。使者となった法正は、益州を救うため一計を案じた」
いや、だからそれ、ただの英雄じゃない?
めちゃくちゃいい奴じゃん!どの辺が冷酷無比なんだよ!
そして毎度思うけどコーエーのシナリオライターの脳はどういう構造してるんだ。なんで冒頭に出した設定を当たり前のように10秒で破壊できるんだ。
法正「問題は劉備殿が仁君ということ。果たしてこの悪党の言う事を素直に聞いてくれるかどうか・・・」
問題はお前が何か間違った自意識持ってることだよ。
どうしてこの人は自分を悪党だと思い込んでいるのだろう。
ただ周りに嫌われ続けて自信喪失してるだけなんじゃないのかな。実は。
このあと劉備に会ってからも悪党どころかただの物凄く正義感強い人ですし、負けた劉璋には益州のために怒りを爆発させてましたし、さらにゲーム進めると外征を急ごうとする諸葛亮を諫めて上図のような台詞を言ってましたし、ただひたすらに誰よりまともで良い人なんですけど法正。
ていうか無双8のイベント法正、すっごい格好良い。今人気投票したら法正一番人気なんじゃないかしら(錯覚)。
早世するだけに、「俺も貴方もいつか死にます」ってあっさり言ってのけた時はぐっと来た。
あと、今作、割と月英との絡みがあるので、もしかしてお二人は不倫ですかみたいな感じも違う意味でぐっと来た。
法正が月英にはちょっと優しく見えるのは気のせいだろうか。仕事仲間の奥様には法正も一応気を使うのだろうか。気になる。
やっぱ法正いいですねー。
あるところに下山咲(しもやまさき)という場所がございまして・・・
人間の生きる傍ら、キノコ達がにぎやかに生きておりました。
が。
今、死にかけております。
菌曜連続に戻ったドラマ
キノコな僕ら
第十七話 菌急車
狂騒の後に落ちた静けさは、菌糸の先まで凍るような、冷たく張り詰めたものでした。
白いキノコが一本、立っております。
その下に、もう一本白いキノコが、倒れております。
「・・・シロ」
と、ドクツルタケが言いました。
土の上から、必死にかすれた声を絞り出すようにして。
「お前、けが・・・ないか?」
「・・・ドクツルタケ?」
シロフクロタケは呆然と立ったまま彼を見下ろしていました。
何が起きたのか、すぐにはわからなかったのです。
彼女を我に返らせたのは、目の前から上がった甲高い悲鳴でありました。
「あ、あ、あああああああ!!」
スギヒラタケです。
「ああああああ!!!ああああああああーーっ!!!」
彼女は鋭い杉の枝を握りしめたまま、絶望的に叫んでいるのでした。
シロフクロタケはそれを見て、またもう一度ドクツルタケに目をやりました。
シロツメクサの花の下、ほのかに薄紅の差していた傘が、そこで一気に青ざめたのでした。
「ドクツルタケっ!やだ・・・やだよっ!!」
スギヒラタケが振りかぶったあの一瞬に、ドクツルタケはシロフクロタケの前へと飛び込んだのです。杉の枝は彼の傘をかすめ、真っ白の柄に突き刺さりました。
深く、深く。
「なんで、ドクツルタケ、なんでっ!!」
「・・・だって・・・お前が、危なかったから・・・」
「!杉の葉がまだ刺さって・・・!痛い!?痛いよねドクツルタケ、抜く!?」
「いや、ちょ・・・痛い!お前、ちょっと、あんま触るなっ・・・うっ」
「ドクツルタケっ!?ねえスギヒラタケ、お医者様呼んで!?スギヒラタケっ!」
「あああああああ!!」
「スギヒラタケぇっ!」
「シロちゃんっ!!!!」
「!ママぁっ!!」
新たに駆けこんで来たツマミタケママの姿を見るや、ついにシロフクロタケは泣きだしました。
ツマミタケはその場のただならぬ様子に、雷でも走ったかのごとく托枝を尖らせ、誰よりも轟きわたる悲鳴をあげました。
傷に障ったのでしょう、ドクツルタケが心なしかよりぐったりしたようです。
「どういうコトなのッ!!!なんなのッ!!何があったのぉぉぉぉぉぅ!!?」
「ママ、ママ、ドクツルタケが死んじゃうようっ!」
「ドクツルちゃんっ!?!?ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!大怪我じゃないのっ!!死んじゃう!?死んじゃうのッ!?嘘よダメよそんなの絶対ダメよぉッ!!菌急車よッ!!菌急車を呼ぶのよッ!!」
「き、菌急車?ど、どうやって、よぶのっ?」
「どっか近くで電話貸してもらうのよッ!!ここから一番近いおうちはどこッ!!?」
「おうち・・・ちかく・・・あ、カエンタケっ!」
「カエンタケちゃん!?ベニちゃんちねっ!?アタシ行ってくるわ!!シロちゃん、ドクツルちゃんを頼んだわよぉぉぉーッ!!」
「う、うんっ」
「すぐ戻ってくるわーーーーーッ!!!」
・・・その頃。ベニナギナタタケではなくカエンタケの家では、良く眠れもしなかったという顔をした主が居間に出て来たところでした。
ベニナギナタタケはとっくに起きて支度をして、慎ましく座っておりました。
「・・・早ぇなベニ」
「!・・・おはようございます」
「眠れたかい」
「は、はい・・・」
「やめな。嘘が下手だお前ぇは」
「・・・・。あ、あの、お食事ができております。どうぞ、座って」
「ん?ああ・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・やめだ。俺ぁどっか余所で食ってくる」
「えっ?あ、あの、待ってカエンタケ!待って下さ・・・!」
「カエンタケちゃああああああああああああああん!!!!!大変よぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「・・・余所行くのもやめだ。俺ぁもう一回寝る。つうかなんで俺まで気色悪い呼び方してやがるんだオイ・・・」
「カエンタケちゃんッッ!!いたわねッッ!!」
「いねえよ」
「大変なのよッ!!激ヤバなのよぅッ!!あらっ!?何なのアンタたちッ!?なんでベニちゃんにご飯作らせてるのカエンタケちゃんッ!?もしかしてもう夫婦なのッッ!?」
「喰い殺されてぇか腐れキノコ。これぁベニが好きでやってんだ」
「あ、あの、私は置いていただいている身ですから、お食事の支度くらいはせめて・・・」
「お掃除はッ!?」
「えっ?あ、お掃除もいたしますけれど・・・」
「お洗濯はッ!?」
「お洗濯も、いたします」
「結婚はッ!?」
「けっこん・・・・結婚!?そ、それは、いたしてませんっ!」
「んまぁーーーーーーーッッッ!!!最低だわッ!!乙女の純情をなんだと思ってるのカエンタケちゃんッッ!!!」
「おいうるせえの。十数える間に失せろ。その汚ぇ托枝、叩き潰されたくなかったらな。一、二ィ、三・・・」
「ちょ、ちょっと、違うのよッ!!それどころじゃないのよッ!!本当に大変なのよドクツルちゃんがッッ!!」
「六、あいつらの茶番見ンのはもうごめんだ。七、八・・・」
「茶番じゃないわッ!刺されたのよぅッ!!」
「九・・・・・なんだと?」
「あっちで倒れてるのよッッ!なんかよくわからないけど色々あって、たぶんスギヒラタケにやられたのよぅ!!アタシがここに来たのは菌急車を呼んでもらうためなのよ、わかるッッ!?」
「わかるわけねぇだろそれをさっさと言え!!!おいベニ、ここに呼んどきな。俺ぁドクツルを連れてくる」
「は、はいっ!」
「場所どこだうるせえの!」
「あっちよ!あっちとそっちの間のあっちよ!」
「クソっ、全然要領得ねぇ・・・!」
というわけで、カエンタケは家を飛び出しました。
一方、ドクツルタケはシロフクロタケの膝に傘を抱かれて、痛みに耐えておりました。
彼が痛かったのは傷よりも、
「ドクツルタケ・・・ドクツルタケ、しっかりしてっ」
シロフクロタケの泣き顔でございました。
「シロ・・・ごめん、俺・・・お前泣かせてばっか・・・」
「今、いま菌急車呼んだから・・・すぐに来るよ、ドクツルタケっ」
「・・・シロ。スギヒラタケは・・・?」
「え?」
「スギヒラタケ・・・いるか?」
スギヒラタケはおりました。
とうに叫ぶのをやめて、ただただ震えている小さなキノコが。
彼女はシロフクロタケと目が合うと、必死にかぶりをふりました。
「スギ・・・スギ、わるくないよ・・・っ」
「スギヒラタケ、ドクツルタケが」
「スギはわるくないよっ!シロフクロタケが・・・シロフクロタケがわるいんだもん!スギはわるくない!」
「ねえ聞いてよ。ドクツルタケがスギヒラタケに何か言いた・・・」
「ドクツルタケ、死んじゃうの・・・?」
「!や、やめてよっ」
「死んじゃったらどうしよ・・・どうしよう?スギ、のせいなの?スギわるくないよ?でも、でもドクツルタケ死んじゃったらどうしよう。どうしようっ。どうしたらいいのっ!?」
「やめてよっ!そういうこと言わないでよ、死んじゃうなんて、そんなの、ないよっ!!」
「・・・・シロ・・・スギヒラタケ、逃がせ」
「ドクツルタケ!嘘だよねっ!?死んじゃったりしないよねっ!?」
「しない。しないから・・・・早く、スギヒラタケ・・・このままじゃそいつ、菌察につかまって・・・」
「ドクツルタケぇっ!」
「・・・いや、だから・・・」
「ドクツルタケ、死んじゃうの?死んじゃうんだ?スギのせいなの?ねえシロフクロタケ、ドクツルタケ死んじゃうのっ!?どうすればいいのっ!?死んじゃうんだよね!?死んじゃうんだよねえっ!?」
「やめてってばあっ!!死んじゃうなんて嫌だよっ!!そういうこと言わないで!!言わないでよぉっ!!」
「・・・・・・・・」
スギヒラタケは黙りました。そしてドクツルタケも黙りました。パニックになった少女二人に言っても聞いてもらえないことがよくわかったからでした。
「・・・・シロ」
しかし、しばらくして、またそっと声を出したのです。
「なに?どうしたのドクツルタケ?痛い?」
心配そうにのぞきこむシロフクロタケを、彼は眩しげに見上げました。
「その花・・・」
「これ?ドクツルタケがくれたやつだよ?そうだよね?」
「・・・似合ってる」
「ドクツルタケ?」
「・・・お前・・・今なら、聞いてくれる・・・かな・・・」
「え?なに?ドクツルタケ?」
「俺・・・お前のこと・・・・」
「シロっっちゃあああああああーーーーーーんっっ!!!!」
「!ツマミタケママぁっ!!こっち!こっちだよぉっ!」
「!!カエンタケちゃんッ、あっち、あっちよぉッ!!」
「うるせえな、わかってる!おいドクツルタケ!しっかりしろっ!!くそっ、駄目だ、意識なくしてやがる」
「!?嘘っ!今までずっと起きてたんだよっ!?ドクツルタケ、ドクツルタケ、なんでっ!?やだよなんでぇっ!?」
よほど心を砕かれぐったりするような何かがあったのでしょう。今。
「スギヒラタケ!」
カエンタケが、傍で震えているキノコを見つけました。
「てめえがやったのか。いつまでそんなもん持ち歩いてやがる!寄越せ!」
「!」
「こんな得物振り回しやがって・・・・とっとと失せろ!!。二度とこの辺うろつくんじゃねえ!!」
怒鳴りつけられたスギヒラタケは、ほとんど透き通るほど色を失くして、林の向こうに駆け去って行きました。
カエンタケはとりあげた杉の枝を地面に叩き捨てました。
ツマミタケが不満げに言います。
「ちょっとッ、いいのぅ?あの子、逃がしちゃってッ」
「未練があんならてめえで追いかけな。それよりドクツルタケ運ぶぜ。手ぇ貸せ白いの」
「あ、ありがとう、カエンタケぇっ」
「泣くのは医者に診せてからにしろ。急ぐぞ。もうクモが来てる頃合いだ」
「クモ?」
それがつまり菌急車の俗称であることを、シロフクロタケはカエンタケの家について初めて知ったのでした。
「どうも、カエンタケの旦那」
と軽い挨拶をした淡い灰紫色のキノコは、ぎょっとするような蜘蛛蜘蛛しいクモを家の前に乗りつけて、ベニナギナタタケの出したお茶をすすりながら患者を待っておりました。
ボタンタケ目オフィオコルジケプス科、その名もクモタケ。蜘蛛に寄生し生える昆虫寄生菌でございます。
所謂、「冬虫夏草」の一種と言えば、人間にも通りが良いでしょうか。
「驚きましたよ、あんたが俺を呼ぶなんて。てっきり無茶のしすぎでどうにかなっちまったのかと思いましたが、見る限りはぴんぴんしてるじゃないですか。イタズラは困ります」
「お前ぇの目には俺しか入らねえのかい。患者はこいつに決まってるだろ、さっさと連れてってくれ」
カエンタケがドクツルタケを托枝の先で示すと、クモタケは長く丸い頭を揺らして分生子を舞わせ、いぶかしそうに見やりました。
「生きてます?」
「あたりめえだ。死んでるならお前は呼ばねえ」
「どういう筋の患者で?」
「事故で怪我して意識がねえ。治せるか」
「診立て間違えて後で恨まれても困るんで、そういうのは先生に任せる事にしてます。が、そうですね、俺が診る限りでは、事故の怪我じゃあなさそうですね」
「診立てねえのは正解だな。お前ぇはヤブだ。余計な事はいい。治るかどうかだ」
「運は良いんじゃないですか、丁度いい蜘蛛がいたんですから。ほらこいつ。寄生が浅けりゃここにつくのにまだ時間食ってますし、これ以上寄生が進んでたら、まあ、先生のとこに着く前に蜘蛛が死ぬんでね。やっぱり時間食いますよ」
クモタケに寄生されたトタテグモは、土に掘った巣の中に潜り込んで死ぬのでございます。増殖した菌糸が死骸を真っ白に覆うと、そこからにょきにょきとキノコが生え、伸びてゆきます。
なぜ、トタテグモが死ぬ前にキノコに都合のよいところへと行くのか、その謎はまだ解明されておりません。人間には。
もちろんキノコにとっては、キノコが操ってそうさせていることなど常識なのでございますが。
「じゃ、乗っけて下さい。そこの、蜘蛛の頭の上でいいです。大丈夫ですよ、脳までバッチリ寄生キメてるんで、噛みついたりしませんから」
「・・・縁起悪ぃなあ相変わらず」
カエンタケはぼやきながらドクツルタケを蜘蛛の菌急車に乗せました。
「はい出発しまーす」
まこと、実に色々なキノコがいるものでございます・・・
人間の生きる傍ら、キノコ達がにぎやかに生きておりました。
が。
今、死にかけております。
菌曜連続に戻ったドラマ
キノコな僕ら
第十七話 菌急車
狂騒の後に落ちた静けさは、菌糸の先まで凍るような、冷たく張り詰めたものでした。
白いキノコが一本、立っております。
その下に、もう一本白いキノコが、倒れております。
「・・・シロ」
と、ドクツルタケが言いました。
土の上から、必死にかすれた声を絞り出すようにして。
「お前、けが・・・ないか?」
「・・・ドクツルタケ?」
シロフクロタケは呆然と立ったまま彼を見下ろしていました。
何が起きたのか、すぐにはわからなかったのです。
彼女を我に返らせたのは、目の前から上がった甲高い悲鳴でありました。
「あ、あ、あああああああ!!」
スギヒラタケです。
「ああああああ!!!ああああああああーーっ!!!」
彼女は鋭い杉の枝を握りしめたまま、絶望的に叫んでいるのでした。
シロフクロタケはそれを見て、またもう一度ドクツルタケに目をやりました。
シロツメクサの花の下、ほのかに薄紅の差していた傘が、そこで一気に青ざめたのでした。
「ドクツルタケっ!やだ・・・やだよっ!!」
スギヒラタケが振りかぶったあの一瞬に、ドクツルタケはシロフクロタケの前へと飛び込んだのです。杉の枝は彼の傘をかすめ、真っ白の柄に突き刺さりました。
深く、深く。
「なんで、ドクツルタケ、なんでっ!!」
「・・・だって・・・お前が、危なかったから・・・」
「!杉の葉がまだ刺さって・・・!痛い!?痛いよねドクツルタケ、抜く!?」
「いや、ちょ・・・痛い!お前、ちょっと、あんま触るなっ・・・うっ」
「ドクツルタケっ!?ねえスギヒラタケ、お医者様呼んで!?スギヒラタケっ!」
「あああああああ!!」
「スギヒラタケぇっ!」
「シロちゃんっ!!!!」
「!ママぁっ!!」
新たに駆けこんで来たツマミタケママの姿を見るや、ついにシロフクロタケは泣きだしました。
ツマミタケはその場のただならぬ様子に、雷でも走ったかのごとく托枝を尖らせ、誰よりも轟きわたる悲鳴をあげました。
傷に障ったのでしょう、ドクツルタケが心なしかよりぐったりしたようです。
「どういうコトなのッ!!!なんなのッ!!何があったのぉぉぉぉぉぅ!!?」
「ママ、ママ、ドクツルタケが死んじゃうようっ!」
「ドクツルちゃんっ!?!?ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!大怪我じゃないのっ!!死んじゃう!?死んじゃうのッ!?嘘よダメよそんなの絶対ダメよぉッ!!菌急車よッ!!菌急車を呼ぶのよッ!!」
「き、菌急車?ど、どうやって、よぶのっ?」
「どっか近くで電話貸してもらうのよッ!!ここから一番近いおうちはどこッ!!?」
「おうち・・・ちかく・・・あ、カエンタケっ!」
「カエンタケちゃん!?ベニちゃんちねっ!?アタシ行ってくるわ!!シロちゃん、ドクツルちゃんを頼んだわよぉぉぉーッ!!」
「う、うんっ」
「すぐ戻ってくるわーーーーーッ!!!」
・・・その頃。ベニナギナタタケではなくカエンタケの家では、良く眠れもしなかったという顔をした主が居間に出て来たところでした。
ベニナギナタタケはとっくに起きて支度をして、慎ましく座っておりました。
「・・・早ぇなベニ」
「!・・・おはようございます」
「眠れたかい」
「は、はい・・・」
「やめな。嘘が下手だお前ぇは」
「・・・・。あ、あの、お食事ができております。どうぞ、座って」
「ん?ああ・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・やめだ。俺ぁどっか余所で食ってくる」
「えっ?あ、あの、待ってカエンタケ!待って下さ・・・!」
「カエンタケちゃああああああああああああああん!!!!!大変よぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「・・・余所行くのもやめだ。俺ぁもう一回寝る。つうかなんで俺まで気色悪い呼び方してやがるんだオイ・・・」
「カエンタケちゃんッッ!!いたわねッッ!!」
「いねえよ」
「大変なのよッ!!激ヤバなのよぅッ!!あらっ!?何なのアンタたちッ!?なんでベニちゃんにご飯作らせてるのカエンタケちゃんッ!?もしかしてもう夫婦なのッッ!?」
「喰い殺されてぇか腐れキノコ。これぁベニが好きでやってんだ」
「あ、あの、私は置いていただいている身ですから、お食事の支度くらいはせめて・・・」
「お掃除はッ!?」
「えっ?あ、お掃除もいたしますけれど・・・」
「お洗濯はッ!?」
「お洗濯も、いたします」
「結婚はッ!?」
「けっこん・・・・結婚!?そ、それは、いたしてませんっ!」
「んまぁーーーーーーーッッッ!!!最低だわッ!!乙女の純情をなんだと思ってるのカエンタケちゃんッッ!!!」
「おいうるせえの。十数える間に失せろ。その汚ぇ托枝、叩き潰されたくなかったらな。一、二ィ、三・・・」
「ちょ、ちょっと、違うのよッ!!それどころじゃないのよッ!!本当に大変なのよドクツルちゃんがッッ!!」
「六、あいつらの茶番見ンのはもうごめんだ。七、八・・・」
「茶番じゃないわッ!刺されたのよぅッ!!」
「九・・・・・なんだと?」
「あっちで倒れてるのよッッ!なんかよくわからないけど色々あって、たぶんスギヒラタケにやられたのよぅ!!アタシがここに来たのは菌急車を呼んでもらうためなのよ、わかるッッ!?」
「わかるわけねぇだろそれをさっさと言え!!!おいベニ、ここに呼んどきな。俺ぁドクツルを連れてくる」
「は、はいっ!」
「場所どこだうるせえの!」
「あっちよ!あっちとそっちの間のあっちよ!」
「クソっ、全然要領得ねぇ・・・!」
というわけで、カエンタケは家を飛び出しました。
一方、ドクツルタケはシロフクロタケの膝に傘を抱かれて、痛みに耐えておりました。
彼が痛かったのは傷よりも、
「ドクツルタケ・・・ドクツルタケ、しっかりしてっ」
シロフクロタケの泣き顔でございました。
「シロ・・・ごめん、俺・・・お前泣かせてばっか・・・」
「今、いま菌急車呼んだから・・・すぐに来るよ、ドクツルタケっ」
「・・・シロ。スギヒラタケは・・・?」
「え?」
「スギヒラタケ・・・いるか?」
スギヒラタケはおりました。
とうに叫ぶのをやめて、ただただ震えている小さなキノコが。
彼女はシロフクロタケと目が合うと、必死にかぶりをふりました。
「スギ・・・スギ、わるくないよ・・・っ」
「スギヒラタケ、ドクツルタケが」
「スギはわるくないよっ!シロフクロタケが・・・シロフクロタケがわるいんだもん!スギはわるくない!」
「ねえ聞いてよ。ドクツルタケがスギヒラタケに何か言いた・・・」
「ドクツルタケ、死んじゃうの・・・?」
「!や、やめてよっ」
「死んじゃったらどうしよ・・・どうしよう?スギ、のせいなの?スギわるくないよ?でも、でもドクツルタケ死んじゃったらどうしよう。どうしようっ。どうしたらいいのっ!?」
「やめてよっ!そういうこと言わないでよ、死んじゃうなんて、そんなの、ないよっ!!」
「・・・・シロ・・・スギヒラタケ、逃がせ」
「ドクツルタケ!嘘だよねっ!?死んじゃったりしないよねっ!?」
「しない。しないから・・・・早く、スギヒラタケ・・・このままじゃそいつ、菌察につかまって・・・」
「ドクツルタケぇっ!」
「・・・いや、だから・・・」
「ドクツルタケ、死んじゃうの?死んじゃうんだ?スギのせいなの?ねえシロフクロタケ、ドクツルタケ死んじゃうのっ!?どうすればいいのっ!?死んじゃうんだよね!?死んじゃうんだよねえっ!?」
「やめてってばあっ!!死んじゃうなんて嫌だよっ!!そういうこと言わないで!!言わないでよぉっ!!」
「・・・・・・・・」
スギヒラタケは黙りました。そしてドクツルタケも黙りました。パニックになった少女二人に言っても聞いてもらえないことがよくわかったからでした。
「・・・・シロ」
しかし、しばらくして、またそっと声を出したのです。
「なに?どうしたのドクツルタケ?痛い?」
心配そうにのぞきこむシロフクロタケを、彼は眩しげに見上げました。
「その花・・・」
「これ?ドクツルタケがくれたやつだよ?そうだよね?」
「・・・似合ってる」
「ドクツルタケ?」
「・・・お前・・・今なら、聞いてくれる・・・かな・・・」
「え?なに?ドクツルタケ?」
「俺・・・お前のこと・・・・」
「シロっっちゃあああああああーーーーーーんっっ!!!!」
「!ツマミタケママぁっ!!こっち!こっちだよぉっ!」
「!!カエンタケちゃんッ、あっち、あっちよぉッ!!」
「うるせえな、わかってる!おいドクツルタケ!しっかりしろっ!!くそっ、駄目だ、意識なくしてやがる」
「!?嘘っ!今までずっと起きてたんだよっ!?ドクツルタケ、ドクツルタケ、なんでっ!?やだよなんでぇっ!?」
よほど心を砕かれぐったりするような何かがあったのでしょう。今。
「スギヒラタケ!」
カエンタケが、傍で震えているキノコを見つけました。
「てめえがやったのか。いつまでそんなもん持ち歩いてやがる!寄越せ!」
「!」
「こんな得物振り回しやがって・・・・とっとと失せろ!!。二度とこの辺うろつくんじゃねえ!!」
怒鳴りつけられたスギヒラタケは、ほとんど透き通るほど色を失くして、林の向こうに駆け去って行きました。
カエンタケはとりあげた杉の枝を地面に叩き捨てました。
ツマミタケが不満げに言います。
「ちょっとッ、いいのぅ?あの子、逃がしちゃってッ」
「未練があんならてめえで追いかけな。それよりドクツルタケ運ぶぜ。手ぇ貸せ白いの」
「あ、ありがとう、カエンタケぇっ」
「泣くのは医者に診せてからにしろ。急ぐぞ。もうクモが来てる頃合いだ」
「クモ?」
それがつまり菌急車の俗称であることを、シロフクロタケはカエンタケの家について初めて知ったのでした。
「どうも、カエンタケの旦那」
と軽い挨拶をした淡い灰紫色のキノコは、ぎょっとするような蜘蛛蜘蛛しいクモを家の前に乗りつけて、ベニナギナタタケの出したお茶をすすりながら患者を待っておりました。
ボタンタケ目オフィオコルジケプス科、その名もクモタケ。蜘蛛に寄生し生える昆虫寄生菌でございます。
所謂、「冬虫夏草」の一種と言えば、人間にも通りが良いでしょうか。
「驚きましたよ、あんたが俺を呼ぶなんて。てっきり無茶のしすぎでどうにかなっちまったのかと思いましたが、見る限りはぴんぴんしてるじゃないですか。イタズラは困ります」
「お前ぇの目には俺しか入らねえのかい。患者はこいつに決まってるだろ、さっさと連れてってくれ」
カエンタケがドクツルタケを托枝の先で示すと、クモタケは長く丸い頭を揺らして分生子を舞わせ、いぶかしそうに見やりました。
「生きてます?」
「あたりめえだ。死んでるならお前は呼ばねえ」
「どういう筋の患者で?」
「事故で怪我して意識がねえ。治せるか」
「診立て間違えて後で恨まれても困るんで、そういうのは先生に任せる事にしてます。が、そうですね、俺が診る限りでは、事故の怪我じゃあなさそうですね」
「診立てねえのは正解だな。お前ぇはヤブだ。余計な事はいい。治るかどうかだ」
「運は良いんじゃないですか、丁度いい蜘蛛がいたんですから。ほらこいつ。寄生が浅けりゃここにつくのにまだ時間食ってますし、これ以上寄生が進んでたら、まあ、先生のとこに着く前に蜘蛛が死ぬんでね。やっぱり時間食いますよ」
クモタケに寄生されたトタテグモは、土に掘った巣の中に潜り込んで死ぬのでございます。増殖した菌糸が死骸を真っ白に覆うと、そこからにょきにょきとキノコが生え、伸びてゆきます。
なぜ、トタテグモが死ぬ前にキノコに都合のよいところへと行くのか、その謎はまだ解明されておりません。人間には。
もちろんキノコにとっては、キノコが操ってそうさせていることなど常識なのでございますが。
「じゃ、乗っけて下さい。そこの、蜘蛛の頭の上でいいです。大丈夫ですよ、脳までバッチリ寄生キメてるんで、噛みついたりしませんから」
「・・・縁起悪ぃなあ相変わらず」
カエンタケはぼやきながらドクツルタケを蜘蛛の菌急車に乗せました。
「はい出発しまーす」
まこと、実に色々なキノコがいるものでございます・・・